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愛という果実
花川戸菖蒲著 / 水貴はすのイラスト
ワンツーマガジン社
アルルノベルス(2007.3)


「俺が一流の男に育ててやる」
全てが入一流なのに、恋愛に対してピュアで不器用な大志を、いい男に育てるのが趣味と憚らない倉科朔は超美形のエンジニア。その恋人・自動車ディーラー・大志の“完璧な男”の仕上がりはまだ遠い。
幸せに見守ってきた朔だったが、大志の裏切りにショックを受ける。仕事は計算してもいいけど、生き方を計算するのは腹が立つのだ。
一方、朔が離れることなんて想像もしなかった大志は、後悔を募らせ、一つの決意をするけど…
門脇大志(かどわきたいし・26歳)×倉科朔(くらしなさく・25歳)
自動車メーカーのディーラー×サービスエンジニア。

これ、あんまり評判よくなかったりします。
たぶん、一番嫌われるのが、攻めが受け以外にも2人の女とつきあっている、つまり三股状態だということかな、と思います。
不誠実な男だからあっちこっちとつきあってるのかというとそうではなくて、3人とも同じように好きなんです。誰かを選ぶことなんてできないんです。
そんな御託を堂々と述べたりするので、「何言っちゃってんの?」と思わせられるわけです。

これはあれですよ、幼稚園くらいの子供に「好きな人はいる?」と聞くと「○○ちゃんと、△△ちゃんと、※※ちゃん!」というやつ。
仕事にも真面目で前向きで優秀で、ディーラーになった理由も、とっても誠実な理由がありながら、大志という人は、恋愛という点において、たいへん幼稚なのです。その辺があらすじの“ピュアで不器用”という言葉になるんでしょうが、ピュアはピュアでもお子様のピュアさであります。

それに対して、受けは、ウブだったり未熟だったり成長してなかったり青かったり、そういうタイプが好みで、そういう子を自分でいい女にしたいという願望があります。別にゲイではないんですね。
しかし大志の恋愛に関して自分勝手で成長していないところが、朔のツボに入ってしまったんでしょう。この点を除いても、大志はちょっと子供っぽく純粋な部分を残したところがあるので、見れば見るほど、知れば知るほど、朔の好みなんだろうと思います。
大志を好きになってしまった朔は、大志を酔わせて、押し倒してしまいます(笑)。そして、彼女が二人いるという大志の、3人目として、彼女らと同じ位置にまんまと収まってしまう。

大志が彼女らとデートをしたり旅行に行ったりするのも、もちろんHをすることも、平気な顔をして受け流し、文句を言ったりしません。
朔は、そうやって大志の3人めの本気の相手としてつきあいながら、大志を大人にしてやろう…と考えているんです。

よく考えると攻めも受けも、かなり変わった人たちだと思います。
しかし、私も、攻めが受け以外にも…というのは正直好きじゃないんだけど、これはそんなに嫌な感じはしなかったというか、結構楽しく読んでしまったんですよね。
多分、女性と一緒のシーンがないことと、攻め側の視点からも書かれているのでその思考がよくわかること、というのが、理由かなと思います。

この攻めは、悪気は全然なくて、恋愛面においてはただの子供なんですよね。ただのおバカさんだな、と思う。
いい男だけどダメな部分がある大志を、完璧に仕上げて、いずれは自分のものにしてやるという願望って、わからなくもない。ただよっぽど懐深いか、変わり者でないと、現実には朔のようにできないと思いますが。

それと同時に、こういうおバカさんにはお灸が据えられることを期待するんですが、その点もちゃんと満たされていたので、満足感が得られたというのもあります。朔に啖呵切られてオロオロしてる大志のシーンは、「待ってました!」(笑)。
受けが攻めなど軽く持ち上げられるくらい力持ちで、酒豪の大食い、性格もサバサバしていて、とっても男前で、しかし外見は美人という設定も好きでした。このかたは見事な『襲い受け』ですね。

二人の仕事に対する姿勢も好感の持てるものでした。
朔が車の整備にかける情熱と、大志を一人前にしたいという気持ちは、同じ所から発してるのかもしれないです
。自分の手で完璧に仕上げたい…てね。

これを書いてて気づいたんですけど、私は「“なんだコイツ”、という攻めが、最終的には受けにしっぺ返しをくらい、追い縋る立場に回る」というパターンが好きらしいです。気づいてみれば、今までも、そういうの楽しく読んでましたっけ。
大志は万人に好かれる攻めではないですね。でも、私みたいな人なら、面白く読めると思います(笑)
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