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緋(あか)い月
池戸 裕子著 / 有馬 かつみイラスト
ワンツーマガジン社
アルルノベルス(2007.3)


女形も凌ぐ美貌の武居一家三代目・七弥は、鬼の刺青を負う渡世人・政一と出会う。いつか去っていく男と知りながら、政一の男気に惹きつけられていく七弥。
ある日、七弥は対立する和田組の罠にかかり囚われるが、政一の体を張った策で助け出される。けれど媚薬で火照った体は、浅ましく昂ぶり続け七弥を蝕み―「帰れねぇ。このままじゃ…」震える七弥の懇願に、政一は一夜限りと強く抱きしめ…!?
赤い月の下、熱く一途に求め合う二人の恋。
桐生政一(きりゅうまさいち・31~2くらい)×武居七弥(たけいしちや・22歳)
渡世人×親分

ヤクザものは嫌いではないけれど、特に「ヤクザ」だからって別に萌えない私ですが、今回のヤクザには萌えました。
『任侠』ですよ。
時代はおそらく明治の頃の、やくざもの同士のお話です。
「姓名の儀は、桐生政一。通り名を百鬼の政と申します。しがなき者にござんす。」なんて、口上だけで“コロリ”でございました。

父亡き後、武居一家を継いだ七弥は、一家の賭場でイカサマを見抜いた政一と出会います。
イカサマをした札元は、現在敵対する和田組が、武居の評判を落し、このあたりで行われる一番大きな神社の祭の一切合財をまとめあげる胴締めの役目を自分の組のものにするために潜り込ませた回し者でした。
武居一家の危機を救ってくれた、流れ者だという政一に、七弥は礼をするため「しばらくの間、うちに草履を脱いでくれ」と頼み、政一は七弥の元、武居一家に逗留することになります。

賭場での揉め事を皮切りに、今度は和田組と直接の諍いが起きますが、そこでも政一の気転と鬼のような強さで、再び七弥は助けられます。
七弥は、祭が無事に終わるまで、そばにいて力になって欲しいと政一に頼みます。

客人であるというのに、政一は「なんでもします」と言って、武居家のために働いてくれます。盃を交わしたわけでもないのに、子分以上によく仕え、組を守り立ててくれる。
組を継いだとはいえ、まだまだ未熟な七弥は、政一の男気溢れる頼れる姿に、憧憬や信頼以上の気持ちを抱くようになっていきます。政一のような男にそばにいてほしい、自分を支えてほしいという頼る気持ちが、だんだん恋心になっていくのが自然に受け止められました。

そして、そんな時、七弥は和田組の罠に罹り、組長に媚薬を盛られてしまうんですね。
またしても政一の気転によって、七弥の身体を救っただけでなく和田組との諍いまで根絶することができるのですが、七弥を助けるために、政一は左手の小指を詰めたと知り、自分のためにそこまでしてくれた政一に、七弥の恋情は募ります。「小指を詰めた」というのに、普段オシャレ(?)な現代的経済ヤクザを読みなれている者としてはビックリ。仁義です。任侠です。

盛られた薬のせいか、政一への抑えきれない恋慕のせいか自分でもわからなくなりながら、七弥は政一に助けを求め、一夜限りの約束で政一に抱かれます。そしてどうしても政一を放したくないと思った七弥は、盃を受けてくれと頼むのですが、「やるべきことをやったら、帰りたい人のところへ帰る」と政一には想い人がいることを告げられてしまいます。
傷心の七弥に追い討ちをかけるように、七弥が和田組の組長に手篭めにされたという噂が広まり、子分たちはからかわれることに次第に苛立ちを見せ始めます。やがて、一人、また一人と、若く頼りない、男にヤられたなどと噂される七弥に愛想を尽かし、盃を返すものが出始め、武居一家は祭を前に半分の数に減ってしまう。
先代に仕え、幼い頃から自分を見守ってくれていた子分の一人、千蔵(せんぞう)までもが七弥の元を離れ、祭を控えた日、再び政一に残ってくれと頼むのですが、政一は、人が変わったような恐ろしい姿を七弥に見せ、「七弥親分には、俺を使いこなすだけの器量はねぇ」と冷たく拒絶します。
さらにさらに、七弥は先代から武居に恨みを抱いていた子分に、匕首で刺されてしまうんですね。

それをきっかけに自分が親分として子分たちの気持ちを全くつかめていなかったと気づいた七弥は、親分としてやり直すことを決意します。
武居一家の新たな旅立ちなのですが、その出鼻を挫くように、さらにさらにさらに、神社から祭の胴締めを任された書付を盗まれてしまい、それが、先代と反目していた堂島組の組長の仕業で、その手先として動いていたのが政一だったという信じられない事実が判明します。


先日、榎田さんの新刊のあとがきで、担当さんが「BLでかっこいいヤクザは経済ヤクザ」と仰ったというのを拝見して「そぉお~?」と腑に落ちませんでした。義理とか人情とか仁義とか、「自分、不器用ですから」な方がかっこいい、と個人的には思ってたもんですから。
そして今回、まさに任侠!といった感じのこちらを読んで、自分が萌えまくっている事実に、やっぱりヤクザはこれだと思った次第です(あくまで個人的に)。

いやいや、政さんがカッコいいです。久しぶりに登場キャラに惚れました。
愛する人を守るためなら、指を詰めることも刀疵を負うことも厭わず身を挺す。愛する人の憂いを取り除くためなら、手段も選ばない。まさに「命を懸けて」というのは、政の愛情のことですよね。ただ愛する人のだめにだけ自分の命はあって、それでいて、表面にはそれを一切出さず、全てが終わった暁には、命を落として魂になって、愛する人のところに帰りたい。
これで萌えなくてなんで萌える・・・ってくらい、もう読みながら身悶えしっぱなし。絶対、普段被ってるオバサン着ぐるみの背中ファスナーが開いて、8○○ちゃんと同じものが顔出してたと思います。
ただただ「素敵~素敵~」と脳で花が咲いていた感じです。
七弥の気持ちに同調して切なくなって、途中涙がウルウルしてしまいましたしね。
面白かったです。深い愛を押し隠して任侠の世界に生きる男のカッコ良さに、ただただ惚れ惚れしました。

深手を負った政一の療養のために二人で過ごした呉服屋の寮で、政一が、白打ち掛けを七弥に羽織らせ「一生あなたについていきます」と言うのもたまりません。
親子血縁盃の儀は披露宴みたいでした。
普段は「親分」「政」って呼び合うのかしら。きゃ~。
読み終わったあとも、任侠の世界の男気の余韻がどっぷり残ってました。

有馬さんのイラストも、現代モノだとちょっと地味な感じがしていたんですが、今回はとっても合っていて素敵でした。百匹の鬼の刺青はさすがに難しいのか、ちゃんと見られなかったのが残念。
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