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4592875877桜霞の神隠し
凛 紫水/佐々木久美子
白泉社
花丸文庫 2009-05-20

by G-Tools

「おにーっ、どこだぁ、出てこいッ」
春絶頂の桜海国。鬼が棲むという噂のある仙石谷に、一人の少年が訪れた。彼の名は桜蘭。領主の嫡子として、民のため、単独鬼退治にやってきたのだ。
しかしついに出遭ったその鬼は、ド派手な着物に腰までの長髪、花のごとき艶冶な美貌と、すべてが規格外の青年で、勢いを削がれた桜蘭は敢えなく返り討ち!
無様に気絶したところを塒に連れ帰られ、なぜか契りを交わし、同棲する羽目になり……!?
阿修羅(あしゅら・見た目は20代半ば)×桜蘭(おうらん・13~14歳くらい)
鬼×領主の妾腹の子

「桜霞の神隠し」
「鬼の霍乱」の二編。

「鬼退治」という言葉だけに食いついたら新人さんでした。
特に桃太郎好きということはないですけども。
昔々、架空の時代のファンタジーです。

領主の妾腹の子として生まれた桜蘭は、父に命じられ仙石谷(せんごくだに)に棲むという鬼退治に出かける。しかし敢えなく気絶して塒(ねぐら)にお持ち帰りされ、美味しくいただかれて(抱かれて)しまいます。
元気でやんちゃな桜蘭と、派手な着物を着た美しい青年の姿の鬼は、やがて愛し合うようになり…と簡単にいうとそういうお話ですが、ロリ風桜蘭の子供っぽい無邪気さが可愛らしさを醸し出すものの、実はかなりヒドい哀しい話でした。

妾腹の子として母一人子一人で暮らしていた桜蘭は、母が亡くなると突然父に跡継ぎのない領主家の嫡子として引き取られる。ところが直後本妻に男子が産まれ、桜蘭の存在が邪魔になった父は「鬼退治」と称して桜蘭を山にやり、屈強の男たちに跡を追わせて殺してしまおうと画策していたのだ。
そんなことも知らず、父に認めてもらいたいばかりに、勇気を振り絞って鬼退治にきた桜蘭。

「鬼の仕業」として、邪魔な老人や女子供を始末する者たちを見慣れていた阿修羅はすぐにそのカラクリに気づき、桜蘭を守ろうと塒で一緒に暮らすのだが、彼が鬼になった経緯も、200年ほど前、愛する少年を村人に生きながら焼かれて失った悲しみと怒りのために、鬼に変わってしまったという悲惨さ。

愛し合うようになっても、鬼と人とでは相容れないことを知っている阿修羅は桜蘭に気持ちを言葉にして告げられず、父を未だに信じている桜蘭に真実も打ち明けられない。
父の愛を求め、阿修羅にも愛されたいと願う桜蘭は、どちらも得られず。
しかも、ついに真実を知り都へ黙って降りてしまった桜蘭に更なる悲劇が降りかかる。

阿修羅と桜蘭二人きりのシーンは仲むつまじく、桜蘭にはショタの香りもするんで、一見可愛らしいんですが、背景やその運命はかなり悲惨。
一応ハッピーエンドですが、救いのない中で「それしかない」道なんで、よく考えると結構可哀想です。
クライマックスは、凄惨な血の現場。

人の心にこそ鬼が棲むというお話ですね。
可愛らしさと子供のような桜蘭の喘ぎ声と、展開の可哀想さ凄惨さにギャップがあり、どう受け止めたらいいか迷います。
しかし全体的に二人っきりのシーンはどれもとても楽しそうではあります。
二人のラブラブっぷりで暗い部分を吹き飛ばす、と。
一作めなので、まだどうとはわかりませんが、文章はわりと読みやすかった。
「鬼の霍乱」は、風をうつしたりうつされちゃったりしてる鬼さんたち(笑)。
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