![]() | 深海魚は愛を歌う 久万谷淳/鵺 白泉社 花丸文庫 BLACK 2009-05-20 by G-Tools |
東京は神楽坂にある老舗料亭『さがわ』の跡継ぎ息子、狭川領一郎は、地方出張の折にバー『深海魚』で艶やかに歌う千種と出会った。ドレスを着てウイッグも付けた姿はまるで「歌姫」だが、千種は間違いなく男だった。
その歌声はどんな酔客の心をもとろけさせてしまい、領一郎もそんな客の1人となった。千種もどうやら領一郎を憎からず想ってくれているようだ。
とはいえ領一郎は東京へ戻らねばならず、しかも千種はストーカーに付きまとわれていて……!?
その歌声はどんな酔客の心をもとろけさせてしまい、領一郎もそんな客の1人となった。千種もどうやら領一郎を憎からず想ってくれているようだ。
とはいえ領一郎は東京へ戻らねばならず、しかも千種はストーカーに付きまとわれていて……!?
狭川領一郎(さがわりょういちろう・28歳)×千種晴斗(ちぐさはると・25歳位)
老舗料亭若旦那×バーの女装歌姫
久万谷淳さんは前作の『便利屋には愛がある』が面白かったので注目していたのですが、この表紙はちょっと引きました。
もちろんお好きなかたもいるでしょうが・・・「女装か~」。
しかし「料亭若旦那」という言葉にもそそられたので思い切って。
そして読んだ結論から言うと「女装」にコンセプトを置いてるわけではない。
受けの千種はバーの歌手ですが、彼の声と歌を効果的に演出するためと「身体を縛り付けないのでドレスは歌いやすい」という理由でのステージ衣装でしかなく、そしてドラグクイーン的な売りということは一切ないし、趣味でももちろんない。キレイなので、ある種の妄想は掻き立てることはあるようですが。
歌ってる時しか女装しないし、歌ってるシーンがそもそも出会いの場の他はそれほどないので、「女装」に引くような心配はなかった。
なぜか初Hで、領一郎が風呂から出たら千種が新しいドレスを着ていてそのままなだれ込む・・・という不自然な「女装H」サービスはありましたが、でもそれさえ「女姿」であることにはあんまり言及してない。
ひょっとするとどうしても女装である必要もあんまりないんじゃないかとさえ思う。
そうすると、この表紙は誤解を生むんじゃないでしょうかね。
東京の老舗料亭の跡継ぎ(現社長は母、父は板前の親方)、領一郎は新店舗開店のため地方で奔走している。
開店を控えた晩、領一郎は内装を請け負ってくれた鎌田に誘われ、鎌田行きつけのバーを訪れた。
そこで「女装した歌手」として歌っていた千種と出会い、その歌の素晴らしさ、容姿の美しさに我知らず惹かれ、帰るときに名を名乗らずこっそりバーの店員の女性に千種への花束を託して逃げ帰る。
「逃げ帰る」・・・領一郎はボンボンで、イマイチ押しが弱いのです(笑)。
しかし常連の鎌田の連れだったことから素性はすぐにバレ、次に来店すると嬉しそうに御礼を言われる。そしてまた花屋の売り物半分ほどの大量の花を買いに走る。
唐突で、不器用なのです(笑)。
そんなこんなで実は千種も領一郎をひと目みて憎からず想っていていい感じなのだが、領一郎はすぐに東京に呼び戻され、「遠距離のメル友」関係が続く。
その後、千種に執着するストーカーを撃退(話をして諭す)したことから気持ちが通じ合い、また領一郎の素行を母が興信所を使って調べたことに怒った領一郎が家を飛び出し、千種の元に転がりこみ、二人の距離は近づいていく。
領一郎は老舗料亭のひとり息子ということもあり、なんとなく「自分が跡を継ぐ」ことは決まったこととしてそのように動いているが、本当は板前だった祖父に習った料理が好きで、「経営」よりも「料理」に携わりたいと思っています。
実際料理学校にも通っていたし、腕前は確かなもので、新規店舗の開店に奔走するよりも料理の方が自分には向いていると思っている。
28歳とはいえ、実質的には母が実権を握り未だ勉強の身で半人前。
祖父の代からの従業員・岩永(いわなが)や母につき従う秘書のような自分より10歳年上の男・一聖(いっせい)・・・と周囲は年長のデキる者ばかりで、本当にやりたいことも口に出せないジレンマがあるまだ悩める青年なのですが、千種と一緒にいるためにそういうものを突破していくわけです。
しかしこの周囲の面々がけっこう個性的な人々(笑)なので、領一郎が思うよりずっと事は簡単に解決するんですがね。
岩永の、祖父へのまさかの○、母と一聖の関係、そして母と千種の繋がり・・・など、裏エピソードやタネがいろいろ盛り込まれています。
千種は10代の頃イヤな体験をしてそれを乗り越えてきた。
そのせいか素直で可愛らしさもあるけれど、肝の据わったところがいいと思います。
今はまだ過去から完全に離れられないでいるけれど、将来大スターになったりして。
前作は住宅街の便利屋さんで、住人の年配者などが暖かくほのぼのしていましたが、今回はまた違った雰囲気・・・と思いきや、実はやはり年長者が若い二人を暖かく見守ったりいじったり(笑)、そういう味は共通のもののように感じました。
この表紙はどう考えても別方向に煽り過ぎだと思います。
それを期待する読者はがっかりするんじゃないでしょうか。
老舗料亭若旦那×バーの女装歌姫
久万谷淳さんは前作の『便利屋には愛がある』が面白かったので注目していたのですが、この表紙はちょっと引きました。
もちろんお好きなかたもいるでしょうが・・・「女装か~」。
しかし「料亭若旦那」という言葉にもそそられたので思い切って。
そして読んだ結論から言うと「女装」にコンセプトを置いてるわけではない。
受けの千種はバーの歌手ですが、彼の声と歌を効果的に演出するためと「身体を縛り付けないのでドレスは歌いやすい」という理由でのステージ衣装でしかなく、そしてドラグクイーン的な売りということは一切ないし、趣味でももちろんない。キレイなので、ある種の妄想は掻き立てることはあるようですが。
歌ってる時しか女装しないし、歌ってるシーンがそもそも出会いの場の他はそれほどないので、「女装」に引くような心配はなかった。
なぜか初Hで、領一郎が風呂から出たら千種が新しいドレスを着ていてそのままなだれ込む・・・という不自然な「女装H」サービスはありましたが、でもそれさえ「女姿」であることにはあんまり言及してない。
ひょっとするとどうしても女装である必要もあんまりないんじゃないかとさえ思う。
そうすると、この表紙は誤解を生むんじゃないでしょうかね。
東京の老舗料亭の跡継ぎ(現社長は母、父は板前の親方)、領一郎は新店舗開店のため地方で奔走している。
開店を控えた晩、領一郎は内装を請け負ってくれた鎌田に誘われ、鎌田行きつけのバーを訪れた。
そこで「女装した歌手」として歌っていた千種と出会い、その歌の素晴らしさ、容姿の美しさに我知らず惹かれ、帰るときに名を名乗らずこっそりバーの店員の女性に千種への花束を託して逃げ帰る。
「逃げ帰る」・・・領一郎はボンボンで、イマイチ押しが弱いのです(笑)。
しかし常連の鎌田の連れだったことから素性はすぐにバレ、次に来店すると嬉しそうに御礼を言われる。そしてまた花屋の売り物半分ほどの大量の花を買いに走る。
唐突で、不器用なのです(笑)。
そんなこんなで実は千種も領一郎をひと目みて憎からず想っていていい感じなのだが、領一郎はすぐに東京に呼び戻され、「遠距離のメル友」関係が続く。
その後、千種に執着するストーカーを撃退(話をして諭す)したことから気持ちが通じ合い、また領一郎の素行を母が興信所を使って調べたことに怒った領一郎が家を飛び出し、千種の元に転がりこみ、二人の距離は近づいていく。
領一郎は老舗料亭のひとり息子ということもあり、なんとなく「自分が跡を継ぐ」ことは決まったこととしてそのように動いているが、本当は板前だった祖父に習った料理が好きで、「経営」よりも「料理」に携わりたいと思っています。
実際料理学校にも通っていたし、腕前は確かなもので、新規店舗の開店に奔走するよりも料理の方が自分には向いていると思っている。
28歳とはいえ、実質的には母が実権を握り未だ勉強の身で半人前。
祖父の代からの従業員・岩永(いわなが)や母につき従う秘書のような自分より10歳年上の男・一聖(いっせい)・・・と周囲は年長のデキる者ばかりで、本当にやりたいことも口に出せないジレンマがあるまだ悩める青年なのですが、千種と一緒にいるためにそういうものを突破していくわけです。
しかしこの周囲の面々がけっこう個性的な人々(笑)なので、領一郎が思うよりずっと事は簡単に解決するんですがね。
岩永の、祖父へのまさかの○、母と一聖の関係、そして母と千種の繋がり・・・など、裏エピソードやタネがいろいろ盛り込まれています。
千種は10代の頃イヤな体験をしてそれを乗り越えてきた。
そのせいか素直で可愛らしさもあるけれど、肝の据わったところがいいと思います。
今はまだ過去から完全に離れられないでいるけれど、将来大スターになったりして。
前作は住宅街の便利屋さんで、住人の年配者などが暖かくほのぼのしていましたが、今回はまた違った雰囲気・・・と思いきや、実はやはり年長者が若い二人を暖かく見守ったりいじったり(笑)、そういう味は共通のもののように感じました。
この表紙はどう考えても別方向に煽り過ぎだと思います。
それを期待する読者はがっかりするんじゃないでしょうか。