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ずっと君が好きだった。
夜光 花著 / 文月あつよイラスト
海王社
ガッシュ文庫(2007.3)


「五年間好きでいてくれたら、お前のこと好きになるよ」
高校時代に八木に告白されて裕紀はそう答えた。これをきっかけに二人の友人付き合いが始まる。
役者の道を志したバイト生活の裕紀に、八木はご飯を作り励ましてくれた。いつしか実直で優しいその男は裕紀にとって、かけがえのない親友になっていた。
そして五年後。
ずっと裕紀を想い支え続けてきた八木から二度目の告白をされる。
恋人は嫌だが八木と離れたくなかった裕紀は、キスや愛撫を受け入れてしまい…。
八木弘道(やぎひろみち)×原田裕紀(はらだゆうき)
23歳、同い年。
「ずっと君が好きだった。」
「やっぱり君が好きだった。」の二編。
暗くない、誰も死なない、トラウマもない夜光花さんです。

劇団員の裕紀と、市役所務めの八木は5年来の親友です。
しかし、5年前高校卒業間際に、裕紀は八木から告白をされていました。
男とつきあう気はなかったものの、それまで毎日ダラダラと覇気のない生活を送っていた裕紀は、真面目で真っ直ぐで凛とした態度の八木を見て、こんな男と友人になれたら、自分も変われるかもしれないと思い、友人つきあいを提案します。
裕紀と友人になりたいわけではないと八木は固辞しますが、「5年俺だけを好きだったら、俺も根負けしてお前を好きになるよ」という裕紀に八木も折れ、そこから『友人』としてのつきあいが始まったのです。

無気力だった裕紀は、八木に演劇を進められ、大学進学後は演劇サークルに入り、それをきっかけに劇団に入団します。水が合っていたのか、演劇にのめり込み大学も中退。そのせいで家からは勘当され、演劇では食べていけない裕紀を支えて応援してくれたのも八木でした。
そんな八木との友人関係は、裕紀にとって大切なものとなっていきます。

しかし、初めての八木の告白から五年後、裕紀は再び八木に告白されます。ところが裕紀は自分の言ったことなどすっかり忘れてしまっていたんですね。
口籠もる裕紀に、八木は「もう限界だから二度と会わない」と告げてきます。
八木の存在を失いたくない裕紀は、勢いで「つきあう」と言ってしまい、二人の関係は友人から恋人へと変わることになります。
しかし、裕紀に受け入れられたと喜ぶ八木に対して、裕紀の方はまだ温度が低いんですね。キスや愛撫は気持ちいいけれど、最後までするのは痛そうだし怖いから嫌。

そんな時、裕紀は始めての主役に抜擢され、舞台に夢中になります。八木も喜んでくれ、それがまた嬉しくて、ますます頑張る。舞台が終わるまでは、Hは最後まではダメ…と逃げながらも、裕紀の気持ちは八木でいっぱいになっていきます。
ところが舞台を見に来てくれた八木が、芝居にキスシーンがあることを知り激怒。

しかし、それはあくまで芝居の上でのこと。演じることに関しては譲れない裕紀と、たとえ演技でも裕紀と他人のそういうシーンは見たくないという八木は、大喧嘩になってしまいます。

八木以外の人間に関しては、ずっと無気力で執着もなかった裕紀ですが、八木とだけは、意見が違うならとことん話し合って解決したいと願います。
しかし、八木にお見合い話があることを知り、どうしてもラブシーンを許せないという八木からは「友達の戻ろう」と言われてしまう――。

裕紀は登場時無気力な青年として書かれていて、八木との約束も簡単に忘れてしまうなど、ちょっと負のイメージでした。が、この子は、ちょっとアホの子で(笑)、天然であるというのはすぐにわかりました。
その天然さ故に、周りを振り回しておきながら自分ではそれに気づいていないようなところがありますが、そんな裕紀でも八木にだけは感情が揺り動かされます。やがて「八木だけは」という気持ちが「好き」であることに気づいていくんですね。
裕紀の舞台を中心に話は進みますが、演劇に注ぐ情熱や一生懸命さは好感が持てますし、八木への気持ちも、一度はっきりしたら真っ直ぐで結構甘え上手。意外と素直な性質で、なかなか魅力的なキャラクターでした。

八木の方は、市役所勤めらしく実直で誠実で、恋愛にはちょっと奥手気味の、見た目は男らしいいい男ですが、ごく平凡な男です。話の中心が裕紀の舞台なため、ちょっと影が薄い感じはしますが、この地味さが“普通”っぽくて、私は好きでした。グルグル悩んで引き返したり、青くなったり赤くなったり、暗くなったり浮上したり、そういうところが等身大の23歳という感じがしました。
ヘタレ好き、普通好きなので、応援してあげたくなります。

一方的に裕紀に振り回されてきたような八木ですが、お話では結構裕紀を振り回してますよね。
好きなものとそうでないものへの熱が、裕紀は結構はっきりしてるので、このあとはあんまり心配いらないと思う。
ただ、八木は裕紀に操られてしまいそうかな?
天然故に言葉もストレートなので、八木はドキドキさせられそう。裕紀はそういうところが可愛いんだけどね。
八木の顔色が暗くならないように、いろいろ画策してる裕紀も可愛らしいと思います。

夜光花さんといえば「暗い」というイメージでしたが、こういうのも面白いですね。
あの暗さは夜光花さんの味なので保ってほしいとは思いますが、たまにはこういうのも読ませていただけると、息がつけます(笑)
面白かったです。
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