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4344818660高潔であるということ (幻冬舎ルチル文庫)
砂原糖子/九號
幻冬舎コミックス
ルチル文庫 2010-02-16

by G-Tools

真岸悟は、ある事件を起こした志田智明への復讐を誓っていた。約束の日である五年後、復讐を促すメールが真岸に届く。
志田の税理士事務所で働き始めた真岸は、最初は冷たい男だと思っていた志田が不器用なだけの優しい人間だと気づき、惹かれ始める。
そんな真岸の元には、復讐を忘れるなと念を押すようメールが届き……。


真岸悟(まぎしさとる・25歳)×志田智明(しだともあき・32歳)
アルバイト×税理士

砂原さんのシリアスです。
表紙が不穏です(笑)
あらすじを読むとますます穏やかでない。

家の裏にあったゴミ屋敷に住んでいた「ジジイ」に懐いていた子供の頃の真岸とその弟。
しかしジジイはある日車に轢き逃げされて死亡する。
三日後犯人は出頭し、兄弟は裁判を傍聴に行くが、男は有罪でも執行猶予つきの判決となる。
エリートで、情を感じさせない冷たい被告の男・志田に憤った兄弟は、自分たちの手での復讐を決意する。
5年後、仕事を辞め一時的にフリーとなっていた真岸は、志田の税理士事務所のアルバイトとなり、志田に近づく。

しかし真岸が想像していたのとは違い、志田は古いビルの一室に狭い事務所を持ち、仕事もうまくいっているとは言えず、エリートの面影もない。
確かに口数も少なく冷たく事務的に見え、周囲にも理解されずにいるが、人の知らないところできちんと誠実な仕事をしており、報われないことに愚痴や文句を言うこともない。
そんな志田に真岸は戸惑うが、孤独で幸せでないなら、自分が幸せにしてやり、そしてそれを取り上げて傷つけてやろうと考える。

志田は砂原さんのお話ではよくいるタイプで、不器用で誤解されやすい口の上手くない男。
誰も知らないところで、感謝されるわけでもないのに、食べたいものを人に譲ったり、他人が落としてつぶれたおにぎりを購入したり、身も知らない人の墓に花を供えたりする。
真岸の元には定期的に復讐を促すメールが届くが、真岸はいつの間にか志田に本気になってしまう。
そして、志田も真岸に惹かれ始めるが・・・・まあ、ホントのことがバレるわけですわね。

なんというか、モヤモヤモヤモヤするお話でしたわ。
最初は真岸が真っ直ぐで正義感の強い好青年のように受け止めて読んでいたのですよ。
でも・・・・真岸って実はすごく変。(笑)。
5年もの間「復讐心」を持ち続けるって信じられないわ。特にこの場合は。
「ジジイ(文中でこう称されている)」がもし血の繋がったホントの家族だったら、あるかもしれないと思うんですよ。
相手がどんなにいい人でも故意にしたことでなくても、家族の死の前では簡単に納得できなくてもおかしくないけど。
ジジイと真岸の関係では、怒りは感じても継続的な復讐心を持つというのはかえって怖い人だと思う(笑)

ただ、真岸は裁判後コンビニで志田を見かけて、無意識のうちに志田の本質を見抜き、気にかけていたのかもしれない。
真岸は「忘れていた」と言っているけれど、もしかするとこれは「復讐」の名を借りた「再会」だったのかも・・・と思えば、ちょっと違った見方ができる気がする。
5年後再会できることを、真岸はもしかすると待っていたのかもしれないね。


しかしどんな事情があったとしても被告がどんなに誠実でも、もしジジイに暖かい家庭があったら、車に轢かれて家族を亡くすというのはその家庭にとっては奇麗事にはならないですよ。
じゃあ「ジジイが孤独で良かったね」と言えるかというと、そんな問題じゃないので、やはりちょっとモヤモヤします。
死亡事故というのは、双方がどんなにいい人であっても巻き込まれてしまえば不幸になります。
志田も優しいだけに一生心の中に背負っていかなければなりません。いい人であるほど、その荷は重くなります。
そう思うと、この話はとても悲しい。
(一応記しておきますが、物語の中では「ジジイが車に轢かれて亡くなった」ということ事実そのものに疑問を残してあります。)
コメント
この記事へのコメント
こんにちは、mimuさん。

>「復讐」の名を借りた「再会」だったのかも・・・

なるほど!
そう思えば、訳の分からない真岸の執念深さも理解できるような気がします。

真岸は5年という時間をおいて、志田と再会したかったのかもしれませんね。そして、そのことを忘れたくなかったと。

ジジイの死亡に関しては、どちらにしても死が近かったという言い回しになっていますが、寿命を全うするのと事故死するのでは大きく違います。

はやり、ここは事故死で、志田はずっとその重荷を背負い、真岸はそれを支えるという形がいいと思うんですが・・・。

読後、色々と考えてしまうお話でした。それでも、こういう題材に挑戦される砂原さんは好きですけど(笑)
2010/03/11(木) 17:13 | URL | 桃 #-[ 編集]
>桃さん
こんにちは、桃さん。

真岸の執念は、いくら親しいジジイだったとは言え、普通ちょっと理解できないですよね。
でもコンビニのエピソード、「あの瞬間に信じた」という言葉を読んで、その時点で真岸の志田への思いは怒りとは別のもの・・・例えば「志田という男をもっと知りたい」というようなものへ変わっていたのかなと思ったんです。
弟の感情に引き摺られて「復讐」を名目にはしていたけど、本当は気づかないところで、また会うことを待っていたのかな~と。
仕事をタイミングよく辞めていることも、メールを送っていたのも、それだけ強い再会を求める気持ちがさせたのかなと考えたらBLらしく納得できるかな、と思いました。

ジジイの死の真相はわからないままですが、「轢く前に死んでたから良かった」という気持ちにはなれないし、じゃあ轢かれたことによって死んでいて、一生、その死を背負って生きていくのかというと、私には重過ぎてそれも抵抗があって。
そんなところが悲しいと思った原因だと思います。

TB&コメントありがとうございました~v
2010/03/12(金) 08:26 | URL | mimu #-[ 編集]
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高潔であるということ (幻冬舎ルチル文庫)著者:砂原 糖子販売元:幻冬舎コミックス発売日:2010-02-16おすすめ度:クチコミを見る砂原糖子/著  九號/画表紙イラストを見ただけで、気軽な気持ちで踏み込んでは痛い思いをするお話だなと思えます。本屋さんで平積み
2010/03/11(木) 17:14:46 | 桃の楽園