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恋の行方は天気図で
うえだ 真由著 / 橋本あおいイラスト
新書館
ディアプラス文庫(2007.2)


お天気キャスターの柚生は、帰省中に倒れ運ばれた先の病院で、高校の頃の親友・知明と再会する。それは卒業以来連絡を絶ち、忘れようと努めた片思いの相手でもあった。
ストレスで胃を壊し、そのまま実家で療養することになった柚生は、早く東京に戻らなくてはと焦る一方で、再び近づいた知明との距離を心地よく感じ、恋心を再燃させていく。
そしてどうやら、想いは一方通行ではないようで…?
能見知明(のうみともあき)×吉沢柚生(よしざわゆい)
元高校同級生、再会もの。二人とも25歳くらいだと思います。

「恋の行方は天気図で」
「注意報~急な雨にご注意ください~」の二編。


高校生のとき、柚生が親友・知明に密かに抱いてしまった恋心。
その恋を断ち切るために、高校卒業と同時に連絡を一切絶って7年後、帰省して再会し、再び想いが再燃する・・・。
よくあるパターンではありますが、一見昔の関係に戻ったようでありながら、口に出さない想いが二人の間にホワホワと漂ってるようなじれったさとモジモジ感(笑)が、妙に気恥ずかしいというか微笑ましいというか、とってもツボでした。

高校2年生のとき気象予報士の資格を取った柚生は、大学生の時に地元のお天気キャスターとして活躍したのをきっかけに、卒業後は東京で全国ネットのお天気キャスターとなります。
しかし、地元のアットホームさとは違い、東京でのお天気キャスターの座を巡る争いは激しく、
嫉妬や悪意ある悪戯に悩まされ、プレッシャーのため自分の良さを発揮することができず、たった三ヶ月で降板させられてしまいます。

そしてたまたま実家に帰省し、友人たちと酒を飲んだ帰り、突然倒れ、運ばれた病院で胃潰瘍と診断され入院療養を余儀なくされてしまいます。
そんな柚生の元に、知明が駆けつけてくれ、7年ぶりの再会となるんですね。知明は、毎日仕事の合間を縫って、病院にお見舞いにきてくれるようになります。

7年前、知明からの連絡に一切返事をせず、一方的につきあいを絶ってしまった柚生ですが、知明はそのことについて問いただすことも責めることもしませんでした。
高校時代野球に打ち込んでいた知明が、大学2年のとき、父が倒れたことで大学でも続けていた部活を辞め、それ以来野球を断念して税理士の道を進み、現在は父の事務所で仕事ししていることを知ります。会わなかった間に、自分が出演したTVも欠かさず見てくれたことも知る。
昔の朴訥さを失わず、それでいて大人へと変わった知明に、柚生は、7年封じ込めた想いが全く薄れていなかったことに気づきます。

再び再燃した恋心を隠しながら、退院して東京に帰るまで・・・と、昔と変わらない態度で接してくれる知明と、7年前の親友の頃のようなおだやかな時間を過ごす柚生。
しかし、何も言わず優しく接してくれる知明の方も、どう見ても高校時代から柚生のことが好きじゃん?と思えるのです。
7年間二人が心にしまい続けたお互いへの想いが、空気になって周りに漂ってます。高校時代、自分の想いだけで手一杯だった二人も、大人になって、多少は経験もしたから、相手の好意が口に出されなくても感じられるようになっています。「もしかして・・・」と思いながら、友人としての距離を保ってる二人の、恋の一歩手前の空気がたまらないですね(笑)
二人が自分の想いを告げあうまで、じれったくてしょうがなかったですけど、片思いじゃないけど両想いじゃないみたいな、微妙な感じが、オバサンは好きだなぁ(笑) こういう嬉し恥ずかしい空気って一瞬なんだよね。

そんな二人の恋に、柚生の仕事の話が絡みます。
退院して東京に連絡しても、会社からは「早く帰ってこい」と言われるでなく、完治するまでゆっくりしろと言われ、自分が必要とされていないことを痛感させられます。また、東京に帰り、再びあの棘だらけの空気の中に戻っていくのも怖いという気持ちもある。
しかし、知明と心が通じ合い、東京には帰らないと告げる柚生に、知明は、「東京で頑張れ」と言うんですよねぇ。

遠距離でも大丈夫、みたいな知明に、随分冷静だなとは思いましたが、こういう風に言えるのって凄いなと思いました。
好きなものを辞める辛さは野球を辞めた知明が一番良くわかっています。柚生がどんなに「お天気」が好きなのか、知明は本人のようにわかってるんですよね。一生懸命頑張ってきたのも知っているし、そういう姿を応援してきたし好きでもあった。
「負け」を理由に逃げ帰ってきたら、天気が大好きで頑張ってきた柚生は、きっと傷ついてしまうと思ったんじゃないでしょうか。
別に離れていても平気だから、そう言ったわけではなくて、柚生のことを考えての言葉だと思う。
だって、柚生が自分できちんと決めて、地元に戻ったときは、何も言わなかったみたいですからね(笑) 自分で選ぶのと逃げて帰るのでは全然違う。
7年も離れてたんだし、恋人は傍にいてほしいだろうに、そんな風に相手のことを考えてあげられるのって凄いですよね。
どんなに好きでも一生懸命やってもダメなときはある。それは現実で、知明は諦めなければならず、柚生は曲がりくねってるけどまだその道を歩いている。そんな対比は結構シビアだなとか思ったりもしました。知明なりの決心とか、柚生への想いとか、そちらの方も読んでみたかったですね。

「注意報~急な雨にご注意ください~」は、柚生の同僚のカメラマンに二人の関係がばれそうになり、「知明に迷惑がかかる」と柚生が知明を避けようとしてしまうお話。
気持ちはわかるけれど、「不安なことは伝え合って、二人で乗り越えるようにしようね」。
カメラマンの野次馬根性にはちょっとムカつきましたが、知明がキッパリと決めてくれてます。カッコよくて頼りになる~。

実は私の一番好きなTV番組は「天気予報」で(笑)、息子の関係で野球も大変身近なので、そういう素材だけでもど真ん中を突いた作品でした。
大変お気に入りです。
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