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アイノコトノハ
かのえ なぎさ著 / 祭河 ななを〔画〕
リーフ
リーフノベルズ(2007.2)


子供の頃、住み込みで働く母とともに大和が暮らした屋敷には、一つ年上の少年、明樹がいた。でも彼に憧れ、呼びかけても、美しく冷たい明樹が応えてくれることはなかった。
やがてサックスプレイヤーとなった大和はライブの客席で明樹を見つける。相変わらず高飛車で勝手な彼に振り回されながらも、どこか危なっかしい明樹に強く惹かれていく大和。
けれど明樹が病に冒され、聴覚を失いつつあると知り――。
野島大和(のじまやまと・24歳)×櫻田明樹(さくらだあき・25歳)

あらすじを見るとおわかりのように『病もの』ですが、攻めは年下忠犬ワンコ、受けはツンデレ女王様で、シリアスの落ち込みそうなところを、可愛らしくほのぼのとした恋愛が救っていて、暗い話にならずに済んでいます。そのバランスがいいと思う。

サックスプレイヤーになった大和は、観客席の中に懐かしい顔を発見します。10年ぶりに再会した彼は、母子家庭だった大和が家政婦だった母と共に住み込んでいたお屋敷の長男・櫻田明樹。櫻田家には大和と同じ年の次男・佳樹もいて、明るく気さくな佳樹とは大和も仲良くしていたんですが、一つ年上の明樹は、大和が声をかけても無視するだけで、ほとんど話をしたことはありませんでした。
しかし、その頃から綺麗な容貌の明樹に、大和は密かに憧れを抱いていたんですね。

再会したものの相変わらず高飛車な明樹ですが、大和はそのまま別れてしまうことができず、次のコンサートにも明樹を誘います。
すると明樹はまた演奏を聞きにきてくれる。
そして邪険な態度の明樹に大和が必死に喰いついて(笑)、二人は親交を深めていきます。
と言っても、女王様と犬と言う力関係の親交ですけど。
子供の頃の『使用人の息子と雇い主の息子』という立場が今でも大和の中に沁みついていて、同時にその当時の「近寄り難い綺麗な少年と仲良くなりたい」という気持ちもそのまま残ってるので、大和は明樹にすっかり頭が上がらないんですね。
こういう二人の『ワンコと女王』なやりとりは、楽しくて微笑ましかったです。

やがて、大和は自分が子供の頃から明樹に恋をしていたことに気づきます。再会して、昔とは違って話をしてくれるようになった明樹に、大和の恋心はますます募ります。

しかし、再会当時、明樹はひどい眩暈で倒れ掛かったことがあり、その後もそういうことがあると知って大和が不安に思う中、実は明樹の右耳は、子供の頃から全く聞こえなかったのだということを知ります。
大和に話しかけられても応えなかったのは、大和がその当時身体が小さく、声も小さくて聞き取りにくかったこと、そして明樹が耳が聞こえないという事実を隠していたかったせいだというのがわかります。
そして現在、明樹は、左耳も病のため少しずつ聞こえなくなってきていて、いずれは全く聞こえなくなってしまうと言うのです。

明樹が音を失うという事実に、大和は衝撃を受けます。
明樹は、少しずつ階段を下りるように聞こえなくなっていく現実を抱えているわけですが、恐怖と諦めの狭間にいて必死で平常を装っているという状態です。
医師から飲むように言われた薬は、効き目がないからと飲まないのに、それでいて成功率20%という手術を受けて、それが失敗して全ての希望が絶たれてしまうことも怖れています。

明樹を支えたいと思いながら、一時的に明樹の左耳が聞こえなくなってしまうと、恐くて逃げ出したくなってしまう大和の気持ちもわかります。
けれど、やはり明樹を大切に思っているし、明樹も大和が心の支えなんですね。
普段はワンコという可愛らしさを持ちながら、明樹を受け止めようとする大和は、かなりかっこいいです。明樹も大和のそういうところをわかっているんだと思う。
けれど、何事にも動じないというんではなくて、自分も悩んでいるところが、“等身大”という感じがして、お話にリアリティを感じさせているように思います。

最後には明樹の可愛い秘密が聞けて、二人の会話に思わず微笑んでしまうようなラストでした。
甘い、ワンコ×女王様のお話でした。
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