0Hｚ－ゼロヘルツ-

鴉屋宗二（からすやそうじ・34歳）×白尾蓮（しらおれん・年齢不明）

「秘書の条件、社長の特権」
「秘書の本音」の二編収録されています。

もともとホテル経営から始まった鴉屋グループは、ホテル、ブライダル、レストランと事業を拡大していき、四年前、レストラン事業が独立して作ったのが『鴉屋ダイニング』です。総帥の息子・鴉屋宗二が社長、そして秘書の白尾蓮、『社長×秘書』の王道カップルですね。
中原さんなのでオヤジを期待したいところですが、確かに鴉屋は酒好き女好き、飄々としていつもふざけばかり…とそれらしい面もあるんですが、「オヤジ」というのとはちょっと違うような気がします。不真面目なのは表面的な言動だけで、実際はかなりやり手で、また人の気持ちがわかって気配りもできる、包容力たっぷりのいい男なんですよね。ふざけた態度も、大人の余裕からきているようにも思えます。
そして秘書の白尾は、沈着冷静で生真面目な堅物秘書。
ふざけた社長にクールな秘書とくれば聞いただけで楽しそう（笑）　

フラフラした社長を叱咤しながら、仕事を円滑に進める有能な白尾ですが、仕事の合間には鴉屋のセクハラにも耐えています。と言っても、鴉屋の本音は早々に読者には明かされてしまうので、白尾が気づいてないだけで、鴉屋は本気、という図です。
しかし、確かに不真面目な鴉屋ですが、いつも一緒にいる白尾には、鴉屋が社員の誰からも慕われていて、平の社員の意見にもきちんと耳を傾けるし、仕事に意欲が出るような言葉をかけることもできるし、人を使うだけでなく、自分で足を運んでレストランの様子を把握したりと、尊敬できる社長であることは良くわかるわけです。
そんなですから、いくら「いい加減なひとだ」と眉間にシワを寄せて見ても、本質はそうではないのは白尾もよく知っています。そして鴉屋は、白尾が何も言わなくても、白尾の悩みや不安を察して、優しく励ましてくれるんですからね。

クール秘書の定番として、素直に口にはできなくても、白尾も鴉屋を好きになってしまうのは当然。


｢秘書の条件、社長の特権」では、専務を務める鴉屋の叔父が、グループ総帥の座を狙い、鴉屋を陥れようとします。その隙を作ってしまったのが、白尾が手帳を専務に持ち出されてしまったせいなのですが、責任を感じた白尾は、一人で専務の企みの証拠を掴もうとして、専務と結託した暴力団に捉えられてしまいます。
「秘書の本音」では、白尾と母を捨てて失踪した父との再会のお話。父の失踪後、白尾親子は父の親友だった鴉屋の父（現総帥）の援助で生活し、現在鴉屋の秘書になるまでになったんですね。父が今更現れても、白尾が喜んで迎え入れられるわけがありません。

どちらのお話も、鴉屋がカッコ良すぎますね（笑）
『オヤジ』といえば、ちょっとダメな所があってもそれがまた愛らしいと思うんですが、鴉屋はぜんぜんダメじゃないですもんね。
朝起きないのもだらしないのも、白尾に構ってもらうための計算らしいし。食えないオヤジというには、思いやりもあるし気配りもある人なので、ちょっと違う感じ。
白尾が手綱を取ってるようでいて、実は鴉屋が余裕で甘えてるような気もします。

中原さんらしいオヤジらしさは、今回はわりと表面的なことだけで、薄めだと思います。
その代わりにホームレスのおっさんでオヤジ度を上げているのか（笑）　こういう人たちが出てきて、ポイントで活躍するところは、中原さんらしいと言える。