![]() | 優しい檻 椎崎 夕著/ 佐々木 久美子イラスト 大洋図書 SHYノベルズ2007-01-29 by G-Tools |
ある寒い日、橋本樹は彫刻家・常盤正嗣の工房を訪ねる。樹が秘書を務める山辺泰之のもとへ常盤をつれていくために。だが、山辺の愛人として知られる樹への態度は冷たかった。まっすぐな瞳で樹を好きだと言ってくれたのはもう遠い過去のことなのだ。常盤は病床の山辺が自分を後継者に選んだことを知ると、山辺のものは好きにしていいはずだと無理やり樹の身体を奪い、そのまま閉じ込めるように樹を工房に留める。
まるで意思のない人形のように扱われながらも、常盤への気持ちがあの頃から少しも色褪せていないことに気づいた樹は・・・・!?
まるで意思のない人形のように扱われながらも、常盤への気持ちがあの頃から少しも色褪せていないことに気づいた樹は・・・・!?
常盤正嗣(ときわまさつぐ)×橋本樹(はしもといつき)
常盤は30代、樹は20代後半と思われます。
「優しい檻」
「優しい色」の二編収録。
樹が第二秘書と勤める彫刻家・山辺の依頼で、若手彫刻家・常盤の山奥の家を訪ねた樹。
樹と常盤は8年前、ふとしたことがきっかけで知り合い、友人としてつきあっていました。やがて、樹は常盤から「好きだ」告白されます。
しかしある事情で常盤に返事をする前に、樹は常盤の前から姿を消し、次に再会したとき、樹は常盤の師でもある山辺の秘書となっていて、周囲は樹を『山辺の愛人』と噂していました。
樹が常盤の家を訪ねたのは、病によって余命僅かと言われた山辺が全てを常盤に譲ることにしたため、山辺の元へ常盤を連れていくためでした。
しかし、常盤には邪険に追い返され、しかも樹は常盤の庭先で足を骨折してしまいます。常盤に発見され病院へと連れて行かれますが、左足はひどい捻挫、右足は骨折と身動きできない状態になり、その上その土地では珍しいほどの大雪に見舞われて、樹は常盤の家に留まらざるを得ない状況になってしまいます。
そして「工房も含めてなにもかも相続できるなら、先生個人の所有物も好きにしてかまわないわけだ」と言う常盤に、樹は無理矢理抱かれてしまいます。
樹の拒絶も無視し無理矢理に樹を抱いた常盤でしたが、その手は優しく、樹を傷つけるようなことはしませんでした。日中は、蔑むような視線や言葉で樹に切ない想いをさせますが、そのくせ夜は優しく樹を抱き、熱が出たときには、ずっと付き添って薬を飲ませたり額を冷やしたりと尽くしています。
樹には、常盤が自分を嫌っているようにしか思えないのですが、読んでいる方には、常盤が山辺に嫉妬していて、だからこそ冷たくしたり苛立ったりしているのはとてもよくわかります。常盤は今もまだ樹が好きなんですね。
それが伝わってくるし、なんだかんだ言っても常盤は優しいので、相手の気持ちがわからない切なさよりも、二人の想いを擦れ違わせてしまった不幸な運命が哀しいなぁと思いました。
山辺は樹を愛人として傍においているわけではなく、身体の関係はありません。しかし、外見的に山辺の好みになるように、立ち居振る舞いや着る物、言葉使いを直され、髪はずっと切ることを許されず腰近くまで伸びています。
山辺の思うとおりに作り変えられた樹を見て常盤が苛立つのも無理はないですね。樹と山辺には身体の関係があるという噂を常盤も信じていますから。
樹の髪を元のようにバッサリと切ってしまったあと、愛撫するように髪を梳く描写が度々出てきましたが、そんなところからも、常盤の思いが感じられるようでした。
山辺は樹に触れることはしませんでしたが、樹を気に入りの人形のように飾り、いつも傍に置いておきました。樹は自分をガラスケースに入れられた人形だと言っています。山辺のところにやってきてから、全ての感情を殺すようにしてきた樹は、常盤の家に閉じ込められながら、少しずつその優しさの中で自分自身を思い出していきます。常盤の作り出す『優しい檻』は、樹を縛るものではなかったんですね。
やがて常盤と二人の静かな時間に終わりがやってきます。山辺が危篤となり常盤と樹はその檻を出なければならなくなりました。
そして山辺の死後、樹は黙って常盤の前から姿を消してしまいます。読んでいる方は、ここで話し合っておけば…!とじれったいんですが、あとから語られる、この時の山辺の第一秘書・笠岡(かさおか)の言葉は、樹のことをホントに考えているんだなぁと思えて、いいなぁと思いました。
でも、早くちゃんと結ばれてほしい~と最後は焦れてましたね(笑)
全体的に静かで淡々とした印象です。文章や比喩で、あえてそういう雰囲気を作ろうとしているようにも見受けられます。
樹も控えめなタイプだということもありますが、抑えた感情が、声高に語られるよりも却って沁みてくるような感じでした。
個人的にはアタリ。
常盤は30代、樹は20代後半と思われます。
「優しい檻」
「優しい色」の二編収録。
樹が第二秘書と勤める彫刻家・山辺の依頼で、若手彫刻家・常盤の山奥の家を訪ねた樹。
樹と常盤は8年前、ふとしたことがきっかけで知り合い、友人としてつきあっていました。やがて、樹は常盤から「好きだ」告白されます。
しかしある事情で常盤に返事をする前に、樹は常盤の前から姿を消し、次に再会したとき、樹は常盤の師でもある山辺の秘書となっていて、周囲は樹を『山辺の愛人』と噂していました。
樹が常盤の家を訪ねたのは、病によって余命僅かと言われた山辺が全てを常盤に譲ることにしたため、山辺の元へ常盤を連れていくためでした。
しかし、常盤には邪険に追い返され、しかも樹は常盤の庭先で足を骨折してしまいます。常盤に発見され病院へと連れて行かれますが、左足はひどい捻挫、右足は骨折と身動きできない状態になり、その上その土地では珍しいほどの大雪に見舞われて、樹は常盤の家に留まらざるを得ない状況になってしまいます。
そして「工房も含めてなにもかも相続できるなら、先生個人の所有物も好きにしてかまわないわけだ」と言う常盤に、樹は無理矢理抱かれてしまいます。
樹の拒絶も無視し無理矢理に樹を抱いた常盤でしたが、その手は優しく、樹を傷つけるようなことはしませんでした。日中は、蔑むような視線や言葉で樹に切ない想いをさせますが、そのくせ夜は優しく樹を抱き、熱が出たときには、ずっと付き添って薬を飲ませたり額を冷やしたりと尽くしています。
樹には、常盤が自分を嫌っているようにしか思えないのですが、読んでいる方には、常盤が山辺に嫉妬していて、だからこそ冷たくしたり苛立ったりしているのはとてもよくわかります。常盤は今もまだ樹が好きなんですね。
それが伝わってくるし、なんだかんだ言っても常盤は優しいので、相手の気持ちがわからない切なさよりも、二人の想いを擦れ違わせてしまった不幸な運命が哀しいなぁと思いました。
山辺は樹を愛人として傍においているわけではなく、身体の関係はありません。しかし、外見的に山辺の好みになるように、立ち居振る舞いや着る物、言葉使いを直され、髪はずっと切ることを許されず腰近くまで伸びています。
山辺の思うとおりに作り変えられた樹を見て常盤が苛立つのも無理はないですね。樹と山辺には身体の関係があるという噂を常盤も信じていますから。
樹の髪を元のようにバッサリと切ってしまったあと、愛撫するように髪を梳く描写が度々出てきましたが、そんなところからも、常盤の思いが感じられるようでした。
山辺は樹に触れることはしませんでしたが、樹を気に入りの人形のように飾り、いつも傍に置いておきました。樹は自分をガラスケースに入れられた人形だと言っています。山辺のところにやってきてから、全ての感情を殺すようにしてきた樹は、常盤の家に閉じ込められながら、少しずつその優しさの中で自分自身を思い出していきます。常盤の作り出す『優しい檻』は、樹を縛るものではなかったんですね。
やがて常盤と二人の静かな時間に終わりがやってきます。山辺が危篤となり常盤と樹はその檻を出なければならなくなりました。
そして山辺の死後、樹は黙って常盤の前から姿を消してしまいます。読んでいる方は、ここで話し合っておけば…!とじれったいんですが、あとから語られる、この時の山辺の第一秘書・笠岡(かさおか)の言葉は、樹のことをホントに考えているんだなぁと思えて、いいなぁと思いました。
でも、早くちゃんと結ばれてほしい~と最後は焦れてましたね(笑)
全体的に静かで淡々とした印象です。文章や比喩で、あえてそういう雰囲気を作ろうとしているようにも見受けられます。
樹も控えめなタイプだということもありますが、抑えた感情が、声高に語られるよりも却って沁みてくるような感じでした。
個人的にはアタリ。
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