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松風の虜
鳩村 衣杏著 / 水名瀬雅良イラスト
海王社
ガッシュ文庫(2007.1)


「堪能されましたか?」
恋焦がれていた男に抱かれ、狂うほど泣かされた後、そんな台詞が冷たく落とされた。
茶道宗主・佐生家に生まれながら、その家を出た睦月。彼を次期宗家にと、当代家元の秘書である伊藤征親が迎えにきた。征親を立ち切りたいがため家を出た睦月は宗家継承を拒むが、征親はそんな睦月を快楽で縛りつけて言うがままにしようとする。
愛とは遠い、望まぬ関係。睦月の絶望は、狂おしい渇愛へと変わっていくが……。
伊藤征親(いとうまさちか・39歳)×佐生睦月(さしょうむつき・25歳)

年の差14歳、下克上、クール眼鏡、和に着物、とお好きなかたにはたまらない要素が揃ってました。

睦月は茶道宗家・佐生家の次男。現在十二代目となる兄・一明(かずあき)が跡を継ぎ宗家となり、睦月は単身アメリカで暮らしています。
佐生家は一子相伝のため、父は跡継ぎである兄ばかりを目にかけ、睦月は幼いころから疎外感を感じていました。父に愛されず、必要とされないという思いに耐え切れず、半ば勘当のようにして家を出た睦月は、NYの本格的なお茶を提供するカフェで働きながら、自分なりの夢のために、身体を売るような真似までしていたのです。

そんなある日、睦月の働くカフェに、伊藤征親という男が訪ねてきます。征親は、睦月が幼いころから十一代目の父、そして現在は十二代目の兄、と宗家の秘書を勤めている男です。そして、実は睦月の想い人でもありました。決して実ることのない恋心を忘れるため、征親から離れることも、アメリカへ渡った理由のひとつでした。

しかし征親は、兄が病に倒れ余命幾ばくもなく、十三代目として睦月が宗家を継ぐことを望んでいると告げ、睦月に日本に帰るようにと促します。承諾できない睦月は、征親が断るだろうと、お前を抱かせろと条件を出しますが、征親はアッサリそれを受け入れ、しかし、逆に睦月を抱いてビデオにまで撮り、それによって睦月を操ろうとしてきます。
弱みを握られた睦月は、征親とともに帰国の途につかねばなりませんでした。

そして睦月の征親への恋心は再燃します。
征親をそばにおくためには、自分が宗家になればいいと揺れる睦月ですが、元々才能のあった睦月は、生家に帰り茶道に触れることで、やはり自分の中にある茶道の心に目覚めていくんですね。

しかし、睦月には、そして征親にも、隠された出生の秘密があり、それが宗家の跡継ぎ問題と二人の恋を複雑にしていきます。
そうそう、『復讐』の要素も入ってますね。
ある理由のために、佐生流の宗家に付き、宗家を傀儡として裏で実権を握ろうとする征親。それが初めは睦月の父であり、父が不慮の事故で急死したあとは、長男の一明、そして一明が病に倒れたあとはターゲットを睦月に変え、そこまでして佐生家に復讐果たそうとする憎悪が、征親にはあったんですね。
けれど征親もやがて睦月に本気で惹かれていってしまう…という、この辺りはわりとよくある展開になってます。
かなり捻れた過去を二人とも持っていて、また、復讐とか愛されない子供とか、題材は暗めなんですが、お話自体は前向きで、ドロドロした感じはありませんでした。
茶道を扱っているということで、“和”の雰囲気が漂っていますが、“和”が持つ暗さとか湿気は感じられなくて、むしろそういうところが良くて、読みやすかったですね。
茶道の世界についても詳しく、私個人は茶道に触れたことはありませんが、わかりにくいこともなく、雰囲気が伝わってきました。鳩村さんご自身もお茶を習っていらっしゃるようで、知識が生きていましたね。

色っぽい素材がたくさん詰まってて、征親の『敬語攻め』がまたエロさに拍車をかけてましたね。『丁寧語』程度ならなんということもなく、寧ろ好きですが、より丁寧な『敬語攻め』となると、Hのときなんか妙に恥ずかしかったです。 敬語で辱められるのって、なんかモゾモゾしますね(笑)

ラストは哀しいはずなのに、凛とした睦月が清々しく、征親と一明がどんな会話を交わしたのかもちょっと気になりました。
『敬語、眼鏡、和装、下克上』このあたりの単語にピンと来たら、とってもツボに嵌まると思います。
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