高校入学と同時に一人暮らしをすることになった夏希。お隣のかっこいいお兄さん・圭介に一目惚れをするが、彼には千晶という美人の同居人(男)がいた。
料理も上手で仕事のパートナーでもある千晶に敵うはずがない。圭介と千晶の二人に可愛がられながらこっそりと胸の痛みを堪えていた夏希だが、ある日圭介にいたずらでキスをされ…?
プールのあるアパート、オゾン荘を舞台に夏希の恋と成長を描く、夏色青春物語。
料理も上手で仕事のパートナーでもある千晶に敵うはずがない。圭介と千晶の二人に可愛がられながらこっそりと胸の痛みを堪えていた夏希だが、ある日圭介にいたずらでキスをされ…?
プールのあるアパート、オゾン荘を舞台に夏希の恋と成長を描く、夏色青春物語。
中江圭介(なかえけいすけ・27歳)×藍田夏希(あいだなつき・15歳)
イラストレーター×高校1年生
「プールいっぱいのブルー」
「Cherish」の二編。
家族の中で居場所をなくし、存在価値を見失ってしまった高校1年生の少年が、恋をして成長するお話です。
夏希は二人兄弟でしたが、明るくて優秀だった大好きな兄は交通事故で死亡。自分も悲しいながら、落胆する両親のため、兄の代わりにと頑張りますが、夫婦仲は悪化して結局離婚してしまいます。
母と二人暮しになった夏希は、それでも母のためにと、優秀な兄が受験するはずだった学校に入学するため、友人も作らずに勉強に没頭します。少しでも母を喜ばせ、自分が母の支えになりたいと思っていたのですが、そんな母も再婚し、自分の他に頼れる人を見つけてしまいます。
高校入学時、海外赴任する義父に母はついていくことになり、「一緒に」と望まれた夏希でしたが、それまでの目標を失ってしまった夏希は、日本に残り、今度は自分のために生きようとします。
そんな気持で入居したのが庭にプールのあるオゾン荘。
夏希の部屋のお隣が、絵本作家の千晶(ちあき)と、挿絵をつけている圭介です。引っ越した日に、ベランダ越しに圭介に声をかけられた夏希ですが、すぐにお隣に招かれ、圭介と同居している千晶を含め、三人の擬似家族のような生活が始まります。
圭介に心惹かれる夏希ですが、仕事上のパートナーでもあり、ゲイ同士である圭介と千晶が同居しているということは、二人は恋人同士と思われ、夏希は気持を抑えようとします。
しかし、これが誤解で、圭介と千晶は本当の親友同士であることがすぐにわかります。千晶には別に好きな人がいるらしい。そして夏希の初恋はわりとすぐに成就してしまいます。
これだけなら、ただ「良かったね」というだけですが、自分と恋人と恋人の親友という三人の形は、ある意味“三角関係”となって夏希の気持に影を落とします。
“三角関係”というとドロドロしてそうですが、そういうのではなくて、恋人と仲のいい親友への嫉妬が我がままになったり不安になったり、そういうことなんですが、圭介と千晶の関係を不安に思いながらも、夏希は千晶が大好きで、「三人でいる」ということも夏希にとってはとっても大事なことで、ある意味、圭介、千晶、そして自分という三角は家庭をなくした夏希の「家族」の形なんですね。
夏希の恋心は時には自分勝手だったり意地悪なことを夏希に考えさせてしまいますが、松前さんはいつもの優しさで夏希の微妙な気持を書いていて、その暖かい視線は圭介や千晶をとおして感じられてきます。
オゾン荘には、他にも変わった人たちが住んでいて、そういう人たちとの関わりのなかで、少しずつ夏希は自分を開いていきます。
最終的に夏希が自分のやりたいことを見つけるわけではないですが、今はそれでいいんじゃないかと思う。だってまだ15歳(後半では16歳)ですもん。少しずつ自分を開いて間口を広げることで、いつか夏希にも「やりたいこと」が見えてくるのではないかと思います。
夢は無理矢理手繰り寄せるものではなくて、ある日自然に生まれてくるものだと個人的には思いますしね。
初夏から夏にかけての時期のお話ですが、タイトルに「プールいっぱいのブルー」とあるように、夏のプールの水や空の綺麗なブルーが浮かび、精神的な広がりや開放感を感じさせてくれました。
それが夏希の心情ともシンクロしているような気がします。
一つのアパートにいろんな住人が住んでいて・・・というのは「おおいぬ荘」とか「楽園建造計画」とかもありますが、「おおいぬ荘」よりさらにもっと柔らかく、「楽園」より明るいイメージでした。
松前さん、大好きなんですけど、著書を全部は読んでいないんですよね。
最近読みたい新刊がなくて、手持ちの本がどんどん減っている(というかほとんどない)ことでもあるし、松前さん読破に挑戦してみようかしら。
イラストレーター×高校1年生
「プールいっぱいのブルー」
「Cherish」の二編。
家族の中で居場所をなくし、存在価値を見失ってしまった高校1年生の少年が、恋をして成長するお話です。
夏希は二人兄弟でしたが、明るくて優秀だった大好きな兄は交通事故で死亡。自分も悲しいながら、落胆する両親のため、兄の代わりにと頑張りますが、夫婦仲は悪化して結局離婚してしまいます。
母と二人暮しになった夏希は、それでも母のためにと、優秀な兄が受験するはずだった学校に入学するため、友人も作らずに勉強に没頭します。少しでも母を喜ばせ、自分が母の支えになりたいと思っていたのですが、そんな母も再婚し、自分の他に頼れる人を見つけてしまいます。
高校入学時、海外赴任する義父に母はついていくことになり、「一緒に」と望まれた夏希でしたが、それまでの目標を失ってしまった夏希は、日本に残り、今度は自分のために生きようとします。
そんな気持で入居したのが庭にプールのあるオゾン荘。
夏希の部屋のお隣が、絵本作家の千晶(ちあき)と、挿絵をつけている圭介です。引っ越した日に、ベランダ越しに圭介に声をかけられた夏希ですが、すぐにお隣に招かれ、圭介と同居している千晶を含め、三人の擬似家族のような生活が始まります。
圭介に心惹かれる夏希ですが、仕事上のパートナーでもあり、ゲイ同士である圭介と千晶が同居しているということは、二人は恋人同士と思われ、夏希は気持を抑えようとします。
しかし、これが誤解で、圭介と千晶は本当の親友同士であることがすぐにわかります。千晶には別に好きな人がいるらしい。そして夏希の初恋はわりとすぐに成就してしまいます。
これだけなら、ただ「良かったね」というだけですが、自分と恋人と恋人の親友という三人の形は、ある意味“三角関係”となって夏希の気持に影を落とします。
“三角関係”というとドロドロしてそうですが、そういうのではなくて、恋人と仲のいい親友への嫉妬が我がままになったり不安になったり、そういうことなんですが、圭介と千晶の関係を不安に思いながらも、夏希は千晶が大好きで、「三人でいる」ということも夏希にとってはとっても大事なことで、ある意味、圭介、千晶、そして自分という三角は家庭をなくした夏希の「家族」の形なんですね。
夏希の恋心は時には自分勝手だったり意地悪なことを夏希に考えさせてしまいますが、松前さんはいつもの優しさで夏希の微妙な気持を書いていて、その暖かい視線は圭介や千晶をとおして感じられてきます。
オゾン荘には、他にも変わった人たちが住んでいて、そういう人たちとの関わりのなかで、少しずつ夏希は自分を開いていきます。
最終的に夏希が自分のやりたいことを見つけるわけではないですが、今はそれでいいんじゃないかと思う。だってまだ15歳(後半では16歳)ですもん。少しずつ自分を開いて間口を広げることで、いつか夏希にも「やりたいこと」が見えてくるのではないかと思います。
夢は無理矢理手繰り寄せるものではなくて、ある日自然に生まれてくるものだと個人的には思いますしね。
初夏から夏にかけての時期のお話ですが、タイトルに「プールいっぱいのブルー」とあるように、夏のプールの水や空の綺麗なブルーが浮かび、精神的な広がりや開放感を感じさせてくれました。
それが夏希の心情ともシンクロしているような気がします。
一つのアパートにいろんな住人が住んでいて・・・というのは「おおいぬ荘」とか「楽園建造計画」とかもありますが、「おおいぬ荘」よりさらにもっと柔らかく、「楽園」より明るいイメージでした。
松前さん、大好きなんですけど、著書を全部は読んでいないんですよね。
最近読みたい新刊がなくて、手持ちの本がどんどん減っている(というかほとんどない)ことでもあるし、松前さん読破に挑戦してみようかしら。
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