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唇(くち)はワザワイのもと
遠野 春日著 / 山田ユギイラスト
ムービック
ゲンキノベルズ(2002.10)


出会ったその日に反発しながらも抱きあった通哉と正純は仕事上もライバル。黙っていれば綺麗な男・通哉は強引な色男・正純の挑発に乗って、2人の躰だけの関係は毎週末繰り返されることに。
淫らな言葉で貶められながらも深い陶酔を感じ、正純の熱い欲望を待ち望んでいる自分に気づいた通哉。
しかし想いとは裏腹に…。
仕事も恋も負けたくない――躰からはじまる不器用な2人の大人気ない恋。
韮沢正純(にらさわまさずみ・27歳)×片桐通哉(かたぎりみちや・25歳)

「唇はワザワイのもと」
「丘の上の小魚」の二編収録されています。

またまた既刊本なんですが、来月続編が出るらしく、イラストも山田ユギさんだし…で、読んでみました。

ライバルの派遣会社に勤務し、それぞれ営業担当の二人は、得意先に向かう途中、駅の通路の角で出会い頭に衝突してしまいます。
まともに尻餅をついて書類を撒き散らしてしまった通哉に対し、頭上から降ってきたのは「痛いじゃないかっ!」という怒鳴り声。とりあえず“売られた喧嘩は買う”主義の通哉は、当然言い返し、二人は詰りあいになりますが、男は「急いでるんだ」の一言でその場を去ってしまいます。
その後、時間ギリギリに得意先に到着した通哉ですが、なんと先んじていたライバル会社に自社の派遣枠を取られてしまっており、しかもその営業が、先ほどぶつかって自分を置いていったあの男だったのです。

そして、ついていない一日に、その夜、通哉は後輩社員と飲みに出かけますが、行った先で三度目の偶然、またまた男と鉢合わせします。男は女連れで、盗み見た様子ではどうやら男が彼女から別れ話をされているよう。彼女を席を立ち店を出て行ってしまいます。
男がフラれる現場を見たことで通哉は昼間の恨みが晴れる気がしますが、間の悪いことに男とトイレでまたまた遭遇。
再び口げんかになってしまい、店の店員に咎められ、通哉の連れも急用で帰ってしまい、二人は渋々揃って店を出ることにします。

そして表を歩きながら、二人はまたまたまた口げんかに。
彼女にフラれた男を当てこすり、「そんなんだから彼女にフラれたんじゃないか」という通哉に、拳を握り締める男。ところが調子づいた通哉の「なんだったら俺が慰めてやろうか?」という挑発が相手をキレさせてしまいます。
有無を言わさず手を掴まれホテルに連れ込まれ、いきなりのキスでメロメロにされて、何の因果か会ったその日にベッドイン…ということになってしまうのですね。

喧嘩するほど仲がいいといいますが、出会った瞬間から二人は言い争いばかりしています。
正純はバイで、通哉のような綺麗な顔をした男は好みのタイプ。しかし、その性格はあまりにキツく気が強くムカつくことこの上ない。
それは通哉も同じことで、正純のような横暴で傲慢な男に腹が立ってしょうがない。
しかし思いのほか身体の相性が良かったことと、綺麗で気の強い男を屈服させる喜びに抗えなさを感じた正純は、「遊び」を前提に週末だけの身体の関係を持ちかけ、通哉もそれを了承。
それ以来、週末ごとに、身体を重ねる日々が続いていきます。
しかし、そのうちにそれぞれ、相手に惹かれ始めていくわけですね。

最初は単なる弾み。売り言葉に買い言葉のようなものでしたが、次第に二人とも週末を心待ちするようになる。
やがて相手をもっと知りたいと思うようになり、惹かれていることに気づくのですが、「遊び」で始めてしまった関係が、素直でない二人の壁になります
しかし想いは膨れ上がり、男同士の関係の不毛さを重々わかっているつもりだったのに、そんな損得勘定を置いてでも、大切にしなければいけないものがある、と相手の存在を何より大きく感じるようになっていく。

視点が両方に移るので、それぞれの変化はとてもわかりやすく、心が募るのに、素直になれず煮詰まっていく様子が面白い(?)です。
最初の出会いから初めて寝てしまうまでは、ちょっとバタバタしている感じがしましたが、二人が惹かれ合いはじめてからが、なかなか。
お互いに相手が「遊び」のつもりだと思っているので、二人は自分も何ともないフリをしているのですが、そういうところを見てますますお互い誤解する。プライドが高いからどちらも素直になれない。ちょっとしたことで期待してみても、タイミング悪く希望を打ち砕くようなことが起きる。
そのうち、ある誤解で、とうとう別れてしまうことになる。

気の強い外面と、弱い内面を持つ通哉が山田さんの「受け」にイメージが良くあってると思います。美人で喧嘩っ早い通哉みたいな受けは結構好きです。
正純は一見傲慢そうですが、色恋に手馴れてるはずが、通哉に関しては上手くことを運べなくて、やはり悩んでいるというのはいいと思う。
お互いに悩んで、壁に当って、消沈したり、ちょっとした反応に高揚したり、そういうのがいいですよね。どちらか一方が手綱を引くだけじゃなくて、それぞれが真剣な恋に悩んでいるというのが、いいな、と思います。

口を開けば悪態ばかりの二人でしたが、ラストはとっても甘い関係。そのあたりは遠野さんらしいかもしれません。
でも、通哉はちゃんと「愛してる」と言葉では言えてないんですよね。十分、他のセリフで惚れてるのはわかるけれど、「愛してる」という言葉は恥ずかしいらしい。
ちゃんと「愛してる」と言うあたりが、続編としてくるのかな?

とりあえずこの先の二人が見てみたいと思う、なかなか面白いお話でした。
来月を楽しみにしたいと思います。
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