大崎が京都で出会った、旅行中の美しく淋しげな青年。人の暖かさに餓えたような彼に惹かれ、大崎はその日のうちに彼を抱いてしまう。
名前も告げずに去った彼に再び会いたいと願うが、大崎には為すすべもなかった。
ところが、大崎が日本史の講師として招かれた大学で、二人は偶然再会する。由岐也と名乗る青年は、大学内の図書館に勤めていたのだ。
傷つくことを怖れ、恋にためらう由岐也に、大崎は優しく想いを伝え続ける。いつしか由岐也は再び恋に心を開き始めて…。
名前も告げずに去った彼に再び会いたいと願うが、大崎には為すすべもなかった。
ところが、大崎が日本史の講師として招かれた大学で、二人は偶然再会する。由岐也と名乗る青年は、大学内の図書館に勤めていたのだ。
傷つくことを怖れ、恋にためらう由岐也に、大崎は優しく想いを伝え続ける。いつしか由岐也は再び恋に心を開き始めて…。
大崎(おおさき・36歳)×安西由岐也(あんざいゆきや・23歳)
大崎の下の名前、出てたかどうか…。見逃したのかも。
「この雨がやむまで…」
「恋心」
「夏初め」の三編収録されています。
ちょっと古い本ですみません。
「この雨がやむまで…」は二人が京都で出会い、その日のうちに身体を重ねて名前も言わずに別れ、再び再会するまでのお話です。
突然の雨に古寺で雨宿りをしていた大崎は、自分と同じように雨を避けて寺門に入ってきた旅行中らしい青年の美しい容貌に目を奪われます。通りかかったタクシーを止め、宿を取っていないという青年を自分のマンションへと誘う大崎。
青年の話から、恋人と別れ傷心旅行であると知った大崎は、青年の影ある淋しげな美貌に惹かれ、「慰めて欲しい」と誘われるのを受け入れて青年を抱いてしまいます。
しかし、翌朝青年は名前も告げずに姿を消していました。大崎はそれ以来青年を忘れられなくなっていました。
そして大学講師に招かれて京都から東京に戻った大崎は、大学の図書館で、再びその青年・由岐也と再会するんですね。
ここからが「恋心」。
「この雨がやむまで…」は大崎側の視点なんですが、ここからは由岐也側に変わります。
大崎の方は、出会った最初の日から、由岐也に心を奪われていました。そして大崎の優しさは由岐也の心にも深く刻み込まれていましたが、二人の間にあったことを考えると恥ずかしさの方が先に立ち、大崎を避けてしまいます。
確かに最初の時は自分から誘ってしまったけれど、由岐也はそれが初めてで、傷心と、大崎の優しさに縋ってしまった結果だったのです。
そんな由岐也に、大崎はさり気なく近づき、お茶に誘ったり、展覧会に誘ったりして由岐也の緊張をほぐし楽しませてくれます。
大崎はとても穏やかで、がっつかないアプローチをするんですが、優しい中にも実は結構強引だったりして、由岐也を怯えさせることなく、肝心な時には押しが強くて「否」を言わせない、なかなかの大人のテクニックを披露していました(笑)
由岐也も大崎には少しも悪い感情はなく、むしろ惹かれているのですが、前の恋人との辛い別れが、由岐也をとても臆病にしていて、大崎に全てを預けてしまうのが怖くてたまらないんですね。
けれど、心は確実に大崎に向かい、自分でもそれを感じていく。
ところが、大崎を好きなんだ、とやっと認めた時、元の恋人が現れ復縁を迫ってくるのです。そして大崎に心を寄せる女生徒が、由岐也を大崎から遠ざけようとしてきます。
とても静かで穏やかなお話なので、このあと大崎に心を移してしまった由岐也を元カレが拉致して、そこへ大崎が助けに乗り込み…なんて展開にはなりません。女生徒の方も、大崎がきっぱりと断って自分から遠ざけてしまいますし、元カレへも、由岐也は自分できちんと今の気持ちを話し別れを告げます。
大崎は6年前に愛した恋人を亡くしているのですが、「涙が枯れた」というほどの哀しみのあと、それを今現在まで引き摺っているのではなく、自分が傷ついたからこそ人に優しくなれるというか、哀しみを知る心だからこそ、いろんなものを受け止められるような、そんな感じの大変大人な人です。
由岐也が以前の恋に傷ついて臆病になっていることもわかっていて、ゆっくりと由岐也の気持ちを解きほぐすようにしながら、「押すときは押すぜ」みたいな強引さも見せる。
優しくて、ちょっと強引で、そして自分の悩みや躊躇いや羞恥の全てを受け止めてくれる大崎に、由岐也の臆病な心が少しずつ、まるでソロソロ…と音がするような慎重さで開いていく過程が丁寧に語られていました。
出会ってすぐに身体を重ねるという始まりではありますが、そこから少しずつ、ゆっくりと心が沿うようになるまでのお話です。
派手な展開は一切なく、作者があとがきで述べているように「地味」なお話ということになるんだと思います。
けれど、淡々と静かに語られる、二人の想いが寄り添うまでのお話は、とてもしっとりとしていて深い味わいがありました。
大崎はどこまでも大人で誠実で、それでいて茶目っ気あるチャーミングなところもあって、一切ブレがなく、出来すぎたタイプなので、面白みには欠けるかもしれません。が、意外とBLの攻めにこういうタイプは少ないですよね。激情に駆られて暴走するのが愛の強さの証明みたいな攻めが多いですから。
こういう大人の男性と、しっとり包み込まれるような恋愛に浸るのも、なかなかいいと思います。落ち着いた関係ながらも、大崎はユーモアも稚気もあるし、楽しく穏やかで優しい恋ができるような気がします。
小川いらさんは、個人的に好きな作家さんですが、最近文庫で出ているお話より、ちょっと前のノベルズが好きです。人気作家さんのように話題になったりすることもないんですけど、でも小川さんが好きというかたは、結構いらっしゃいます。今後も楽しみに拝見したいと思います。
お話と今市子さんのイラストがピッタリ。
本文中の大崎が、枯れてるわけではないけれど大人過ぎて、この絵がないと、うっかり「壮年男性」を思い浮かべそうになってしまうのですが、この外見ならポイント高いです(笑)
大崎の下の名前、出てたかどうか…。見逃したのかも。
「この雨がやむまで…」
「恋心」
「夏初め」の三編収録されています。
ちょっと古い本ですみません。
「この雨がやむまで…」は二人が京都で出会い、その日のうちに身体を重ねて名前も言わずに別れ、再び再会するまでのお話です。
突然の雨に古寺で雨宿りをしていた大崎は、自分と同じように雨を避けて寺門に入ってきた旅行中らしい青年の美しい容貌に目を奪われます。通りかかったタクシーを止め、宿を取っていないという青年を自分のマンションへと誘う大崎。
青年の話から、恋人と別れ傷心旅行であると知った大崎は、青年の影ある淋しげな美貌に惹かれ、「慰めて欲しい」と誘われるのを受け入れて青年を抱いてしまいます。
しかし、翌朝青年は名前も告げずに姿を消していました。大崎はそれ以来青年を忘れられなくなっていました。
そして大学講師に招かれて京都から東京に戻った大崎は、大学の図書館で、再びその青年・由岐也と再会するんですね。
ここからが「恋心」。
「この雨がやむまで…」は大崎側の視点なんですが、ここからは由岐也側に変わります。
大崎の方は、出会った最初の日から、由岐也に心を奪われていました。そして大崎の優しさは由岐也の心にも深く刻み込まれていましたが、二人の間にあったことを考えると恥ずかしさの方が先に立ち、大崎を避けてしまいます。
確かに最初の時は自分から誘ってしまったけれど、由岐也はそれが初めてで、傷心と、大崎の優しさに縋ってしまった結果だったのです。
そんな由岐也に、大崎はさり気なく近づき、お茶に誘ったり、展覧会に誘ったりして由岐也の緊張をほぐし楽しませてくれます。
大崎はとても穏やかで、がっつかないアプローチをするんですが、優しい中にも実は結構強引だったりして、由岐也を怯えさせることなく、肝心な時には押しが強くて「否」を言わせない、なかなかの大人のテクニックを披露していました(笑)
由岐也も大崎には少しも悪い感情はなく、むしろ惹かれているのですが、前の恋人との辛い別れが、由岐也をとても臆病にしていて、大崎に全てを預けてしまうのが怖くてたまらないんですね。
けれど、心は確実に大崎に向かい、自分でもそれを感じていく。
ところが、大崎を好きなんだ、とやっと認めた時、元の恋人が現れ復縁を迫ってくるのです。そして大崎に心を寄せる女生徒が、由岐也を大崎から遠ざけようとしてきます。
とても静かで穏やかなお話なので、このあと大崎に心を移してしまった由岐也を元カレが拉致して、そこへ大崎が助けに乗り込み…なんて展開にはなりません。女生徒の方も、大崎がきっぱりと断って自分から遠ざけてしまいますし、元カレへも、由岐也は自分できちんと今の気持ちを話し別れを告げます。
大崎は6年前に愛した恋人を亡くしているのですが、「涙が枯れた」というほどの哀しみのあと、それを今現在まで引き摺っているのではなく、自分が傷ついたからこそ人に優しくなれるというか、哀しみを知る心だからこそ、いろんなものを受け止められるような、そんな感じの大変大人な人です。
由岐也が以前の恋に傷ついて臆病になっていることもわかっていて、ゆっくりと由岐也の気持ちを解きほぐすようにしながら、「押すときは押すぜ」みたいな強引さも見せる。
優しくて、ちょっと強引で、そして自分の悩みや躊躇いや羞恥の全てを受け止めてくれる大崎に、由岐也の臆病な心が少しずつ、まるでソロソロ…と音がするような慎重さで開いていく過程が丁寧に語られていました。
出会ってすぐに身体を重ねるという始まりではありますが、そこから少しずつ、ゆっくりと心が沿うようになるまでのお話です。
派手な展開は一切なく、作者があとがきで述べているように「地味」なお話ということになるんだと思います。
けれど、淡々と静かに語られる、二人の想いが寄り添うまでのお話は、とてもしっとりとしていて深い味わいがありました。
大崎はどこまでも大人で誠実で、それでいて茶目っ気あるチャーミングなところもあって、一切ブレがなく、出来すぎたタイプなので、面白みには欠けるかもしれません。が、意外とBLの攻めにこういうタイプは少ないですよね。激情に駆られて暴走するのが愛の強さの証明みたいな攻めが多いですから。
こういう大人の男性と、しっとり包み込まれるような恋愛に浸るのも、なかなかいいと思います。落ち着いた関係ながらも、大崎はユーモアも稚気もあるし、楽しく穏やかで優しい恋ができるような気がします。
小川いらさんは、個人的に好きな作家さんですが、最近文庫で出ているお話より、ちょっと前のノベルズが好きです。人気作家さんのように話題になったりすることもないんですけど、でも小川さんが好きというかたは、結構いらっしゃいます。今後も楽しみに拝見したいと思います。
お話と今市子さんのイラストがピッタリ。
本文中の大崎が、枯れてるわけではないけれど大人過ぎて、この絵がないと、うっかり「壮年男性」を思い浮かべそうになってしまうのですが、この外見ならポイント高いです(笑)
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