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204号室の恋
砂原 糖子著 / 藤井咲耶イラスト
新書館
ディアプラス文庫(2006.12)


アパートの二重契約で、九つも下の美大生・片野坂と同居する羽目になった柚上。短期間だからと仕方なく始めた同居だったが、几帳面な柚上は片野坂の大らかで人懐っこすぎる性格に苛々して仕方がない。
新しい職場にも溶け込めず我慢も限界に達したある日、柚上は八つ当たり気味に片野坂に酷い言葉をぶつけてしまう。
だが、それ以来、開いてしまった片野坂との距離を、今度は寂しく思い始め…?
片野坂了(かたのさかりょう・20歳)×柚上聖(ゆがみひじり・29歳)
美大生×サラリーマン
「204号室の恋」雑誌掲載
「星の降る町で」書き下ろし の二編収録されています。

初読だと思っていたら、読み始めてから雑誌で読んでいたと気づきました。

スーパーの営業戦略促進部に所属する柚上は、その手腕を買われて、本来、本社で戦略を練っているところを、売り上げの芳しくないスーパーに配属され営業を建て直す現場勤務を任されています。
あちこちのスーパーを短期間で渡り歩き、今回やってきたのが都心から3時間かかる田舎町のスーパー。
住む場所は会社が契約してくれたものの、歓送会で酔っ払ってたどり着いたアパートの部屋には既に住人がおり、齢80になる老婆の大ボケによる「二重契約」であることがわかります。
田舎町のこととて、他に賃貸物件はなく、アパートも満室。
どうせ短期間の勤務であるし、部屋が空いたら移ればいい・・・と、元よりそれ以外の選択肢はなく、柚上は、アパートの204号室で、一週間先に住んでいた美大生の片野坂と同居することになります。

柚上は、几帳面で真面目な堅物タイプ。
神経質というわけではないですが、物事には計画的で、きちんと整った部屋を好み、仕事で疲れて帰れば、ひとりでゆっくりしたい。
ところが同居人の片野坂はいやに人懐こく、また大らかでモノにこだわらないと言えば聞こえはいいが、部屋は片づけないし、食器は洗わないし、玄関に靴は何足も出しっぱなしだし、赤の他人が同居する上で、最低限のルールやプライバシーもまったく意に介さない男で、柚上を苛々させます。

また、新しい仕事場では、柚上のやりかたが受け入れられず、従業員やパートからは反発され冷たい態度をとられてしまう。
どちらかというとほのぼののんびり仕事をしていた田舎のスーパーなのですが、柚上は、マニュアル重視で、なあなあを許さない融通の効かない四角四面の性格なので、そのやり方はどうしても反発をくってしまうんですね。しかもそんなことはここが初めてじゃない。
仕事で孤立無援で奮闘し、家に帰れば片野坂に苛々させられる。

たまったストレスがとうとう爆発した柚上は、いつも呑気にへらへらとして勝手気ままに自分を振り回し生活を乱す片野坂に八つ当たりをしてしまいます。
そして、二人が気まずくなったある日、柚上は6年間つきあってきた彼女と久しぶりに会い、デートをしてプロポーズをするのですが断られ、そこでもまた、自分の堅物なマニュアル的な性格を非難され別れ話をされてしまいます。

しかし、アパートでヤケになっていた柚上を、帰ってきた片野坂は慰めて、大泣きする柚上を受け止めてくれ、朝まで抱きしめて眠ってくれます。
それをきっかけに、二人の関係が変わり始めます。


砂原さんの作品には変わったタイプの受けが多いですが、今回は、他作品に比べると普通っぽいかもしれません。それでも、堅物で、ちょっと天然で可愛らしい柚上は面白いですけどね。
普段きちんきちんとしているせいなのか、酔うと本音が出るタイプで、素直になって、喋り方もレロレロになり、ほおっておけない気になるような、その差がとても可愛らしいです。
攻めの片野坂は、大らかで、結構包容力のある年下攻め。ただ呑気にヘラヘラしてるわけではなくて、物心つく前に両親が亡くなって、育ててくれた祖母も三年前に他界し、たった一人で頑張ってる意外に苦労人だったりします。自分が寂しいから、人の寂しさもわかるんでしょうか。思いやりある、芯の優しい青年だと思います。

ちょっとコメディタッチなラブストーリーで、砂原さんの中ではクセのないお話なので、読みやすいです。可愛げのある受けはいつものとおり。
信楽焼きのたぬきの置物が登場していますが、もの言わないただの置物が、とっても可愛いエピソードに使われていて、面白かったです。
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