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君を殺した夜
夜光 花著 / 小山田あみイラスト
徳間書店
キャラ文庫(2006.11)


「ここから飛び降りたら、お前を好きになってやる」
10年前、幼馴染の聡の告白に幸也が出した条件だった。何においても優秀な聡が妬ましくて、酷く傷つけたかったのだ。
そんな幸也が勤める中学に、聡が新任教師として赴任してきた。聡は「お前に罪の意識があるなら、身体で償え」と、幸也に強引に迫る。
けれど、聡は辛辣な言葉とは裏腹に、優しく幸也を求めてきて…!?
樋口聡(ひぐちさとし・25歳)×吉井幸也(よしいゆきや・25歳)
幼馴染、再会、復讐もの。

幸也が小学生のころ、隣に聡が引越してきたのが始まりです。
聡の家は母子家庭で、身体が小さく泣き虫だった聡はいつも子供たちにいじめられていました。当時身体が大きくガキ大将だった幸也がいじめられる聡をかばったことがきっかけで、聡は幸也を慕っていつもあとをついてくるようになります。
子分というわけじゃないですけど、弱いものを従える強いものとして、そんな関係に、幸也は優越感さえ感じていたんですね。

ところが、中学のころになると、聡と幸也の体格は逆転。また、優秀で何でも良くできた聡は周りにも受けがよく、幸也はあらゆる面で、聡に敵わないと思わされることが多くなっていきます。
そんな聡に幸也はだんだんと妬みを感じはじめる。

母子家庭の聡の家を、幸也の両親は気にかけ、何かと声をかけては家族ぐるみのつきあいをしていたのですが、それも婀娜になりました。
教師をしていて、幸也が尊敬していた父は、いつも聡を褒め、とても可愛がっていて、そんなことも嫉妬の対象になっていったのです。

幸也が聡への嫉妬、僻み、劣等感でいっぱいになって、聡と離れたい、と感じるようになっても、聡は相変わらず幸也にくっついてきます。
それどころか、聡は幸也に対して恋愛感情を抱くようになる。
聡に告白されますが、幸也にしてみれば、そんな負の感情しか抱いていない相手、まして男に告白されても受け入れられるわけがありません。
聡の気持ちを傷つけることで、むしろ「ざまあみろ」と面白がるくらいの気持ちしかなかった。辛そうに想いのたけを告げられても、そんなものは鬱陶しい。ウザイ。

しかし、そんなとき、幸也は父と聡の母の不倫を目撃します。
そして幸也の中にたまっていた負の感情や怒りは、全て聡に向けられてしまう。
聡を歩道橋の上に呼び出した幸也は「ここから飛び降りたら、お前を好きになってやる」と言います。
できるわけがない、できなかったら嘲笑ってやる、とそんな気持ちで口にした言葉でしたが・・・そこで聡は、ためらいもせず、飛び降りてしまうんですね。

自分が起こした出来事にショックを受け、後悔した幸也は聡の入院先を訪ねますが、母親同士は不倫が原因でとっくみあいの喧嘩をし、また聡の母からは「お前がつきおとしたんだろう」と殴られ、聡に会うことはできませんでした。
幸也の家はこれをきっかけに引越し、両親は離婚。
聡とはそれ以降、全く会わずにいましたが、10年後、幸也の勤める中学に聡が赴任し、再会するわけです。

罪悪感に駆られる幸也に冷たい態度と辛辣な言葉で詰る聡。
そして、飛び降りたのだから約束を請求してもいいだろう?と、「お前を俺の女にしたい」と要求してきます。

自分のしたことを考えれば拒否することもできず、幸也は何度も身体を要求されます。
それだけでなく、同じ学校で仕事をする間に、『教師』としてまでも、聡には敵わないということを思い知らされてしまいます。
再び心に蘇る、嫉妬と劣等感。
聡のそばにいることで、幸也はまた昔と同じ苦渋を味わわされてしまう。
聡のことだけでなく、幸也にはそれ以外にも様々な問題がのしかかってきて、幸也は次第に疲弊していく。


幸也の聡への劣等感は、多少の差はあれど、自分より優秀で何でもうまくやっていく人を身近で見たときに誰でも感じるようなもので、理解はしやすかったです。
幸也の場合はそれが激しいんですが、では何故そこまで特別に聡を意識するのか・・・というところに、幸也の本音がちょこっと見えているような気がします。
それでも、お話のほとんどの間、幸也が聡に感じているのは負の感情なので、これが果たして『好き』という感情に変わるんだろうか?と心配しながら読んでいました。
結論から言えば、ラストの幸也には、「そうだろうなぁ」と納得した、という感じかな。

聡の気持ちについては、昔、告白したときから、ずっと変わっていないのは、どんなに露悪的な態度を取っていてもわかりやすいと思います。
けれど「飛び降りろ」と言われて飛び降りてしまうところに、尋常ならざる愛情、執着を感じるし、そのままの熱量を10年経っても持ち続けていることの方が、物凄く普通じゃないように思いますね(笑)

幸也のマイナス思考が延々と書き連ねられているのに、今回何故か聡に感情移入してしまったので、幸也が追いつめられていくのは実はちょっと楽しかった。
幸也の劣等感は、とても理解できるけれど、こうなったきっかけは全面的に幸也が悪いと思うし(笑)。

ラストが夜光花さんお得意の、余韻を残すというか、ハッキリすっきりはしてない終わりかたなんですよね。
でも「恋人としてつきあおう」とちゃんと言ってるし、二人は離れるんじゃなくて、一緒にいながら、新しく関係を築いていくんだと思ってます。
幸也の心に溜まりに溜まった『負』を考えると、幸也の言い分もわかるかなぁ…と思わないでもないんですよね。
むしろ、今までの感情を捨てて、あっさり好きだと言ってしまうほうが、ムリがあるような気がするので、このあたりは納得です。
自分を変えたいという気持ちもわかる。
でも、ショートでいいから、後日の幸せな二人が読めたりしたら、個人的には嬉しかったんだけど。

お話の雰囲気は好きな感じでした。
小山田さんのイラストも好きなので、そんな効果もあったかも。
Hはずいぶんいろんなところでヤッててバリエーション豊かでしたね。
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