インテリアデザイナーの今成和真が、亡くなった父の残した古びた喫茶店を訪ねると、そこには浅葉律という男が働いていた。
店を売ると伝える和真に、律は店を辞めないと主張。しかも昔の男からもらった慰謝料を店の運転資金に、と言い出す始末。
説得するため律のもとを訪れるうちに店を手伝うようになった和真は、謎めいた律に心惹かれるが…。
店を売ると伝える和真に、律は店を辞めないと主張。しかも昔の男からもらった慰謝料を店の運転資金に、と言い出す始末。
説得するため律のもとを訪れるうちに店を手伝うようになった和真は、謎めいた律に心惹かれるが…。
今成和真(いまなりかずま・29歳)×浅葉律(あさばりつ・25歳)
うえださんのお話では、誰かが亡くなっててそのことが心に影や引っかかりを残してたり、家族間に問題がある場合が多い。
今回は攻めがそのパターン。
和真の父は、言うなれば風来坊気質の男で、仕事は三年と続かず、気ままに職や居場所を転々として、妻も子である和真もそれに振り回されてきました。
そんな父が、とうとう自営(それが話になる喫茶店)を始めたことが、夫婦間に決定的な亀裂を齎します。雇われならともかく、自営で立ち行かなくなったりすれば、莫大な借金を抱えるかもしれない上に、和真の父の性格からして、そうなることは目に見えていたからです。
夫婦はとうとう離婚し、恋人がいて再婚を考えていた母のお荷物になることを避けるため、和真は父の元に残りますが、幼い頃から遊んでくれるわけでもなく、無責任な父に愛想をつかしていた和真は、高校を卒業し、専門学校に入学するとともに自立。
母の援助と奨学金で勉強し、その時以来、父には年賀状を出すくらいで、一切顔をあわせずにきました。
10年あまりの月日が経って、突然の父の訃報を聴いても、「なんで俺に連絡がきたんだろう」と思うほど、その存在は希薄になっていたのです。
父の気質を考えれば財産などあるはずもなく、残ったのは、予想に反してずっと辞めずにいた喫茶店のみ。
店を売ることに決めた和真は喫茶店を訪ねます。
そこにいたのが美しい容姿の、でも無表情で綺麗な人形のような男・律。
和真は、律に店を売ることにしたと話すのですが、困ったことに、律は頑なにそれを聞き入れません。
押し問答になり、埒が明かず和真はいったん引き返し後日再び店を訪ねますが、律は生意気で、話は堂々巡り。
老朽化した設備を整える金などないと言えば、「別れた男に貰った慰謝料があるからそれを使って」と見せられたのは五百万円の通帳。
目の前にいる美しい男が、男同士でそういうことをする人種だと知った和真は、何故か微妙にうろたえてしまいます。
実際に店の雰囲気を見てほしいという律に、和真が営業中の店を訪ねると、閑古鳥が鳴いていると思っていた店は、意外に客が入っている。
律ひとりでは忙しそうで、和真は昔、父とまだ一緒にいたころに手伝ったことがあるのを幸い、自分もカウンターに入り、店を手伝います。
それ以来、話のつかないこともあって、店を訪れては律とともにカウンターに入ることになってしまう和真。
そうやって、律とともに店をやっていくうちに続けていく気になるというのが予想するところですが、ならないんですよね。
父の残したものや気持ちに思いを馳せても、それを掴むことはできないし、やはりどこか他人事で、それを守っていこうと言う気にもなれない。
律に対しては、謎めいた雰囲気の中に、ときおり見せる可愛らしい笑顔など、惹かれていく部分はあるけれど、だから店を売らないのではなく、律が他の仕事をちゃんと見つけられるように、猶予期間を与えて辞めてもらうという温情でしか答えられない。
そんなある日、壮年の身なりの整った落ち着いた男が店にやってきます。先に来ていた学生と待ち合わせだったらしいその男を見た律の様子が豹変。
律に慰謝料を渡した男が、その男だったのです。
律が頑なに店を辞めないと言い張る訳はなかなかわからないんですよね。
和真の父とそういう関係があったわけではない。
その理由が、店にやってきた男…というわけなんですが、大学教授のこの男、最低なんですよ。
別れ方も最低だったのに、思い出の地に留まりたいというのには、ちょっとムリがあると思ったんですが、それだけ律が純粋ということでしょうか。
綺麗で無表情で生意気で、けれど内面は実は可愛らしくいじらしく、そういう律の姿は後半に全てわかりますが、苦味のあるコーヒーに微かに混じる甘味、和真が疲れたときに律が出してくれた「キャラメルコーヒー」に律をダブらせたタイトルなのですね。
父に対する和真の屈折した思いが、単に店を自分もやってみたら気が変わったとかいう安易な理由で払拭されるのではない、というのはちょっと良かったかも。
律に惚れちゃったから、というのは…どうなんでしょう?(笑)
愛する男のために、継続を決心したのはある意味男気があるとも言えるけれど、実際金はないから大変そうです。
父の全てを許したわけではないけれど、飽きっぽかった父が唯一続けていた喫茶店を続けていくことで、父の一部は理解したのかもしれません。
父の気質を思い、好きなところへどこにでも行かれるようにと遺骨の一部を海に流す情を見せ、残りを永代供養にしてしまうというドライさに、複雑な感情が見える気がします。
雰囲気は地味目かな。
うえださんらしいお話だと思いました。
うえださんのお話では、誰かが亡くなっててそのことが心に影や引っかかりを残してたり、家族間に問題がある場合が多い。
今回は攻めがそのパターン。
和真の父は、言うなれば風来坊気質の男で、仕事は三年と続かず、気ままに職や居場所を転々として、妻も子である和真もそれに振り回されてきました。
そんな父が、とうとう自営(それが話になる喫茶店)を始めたことが、夫婦間に決定的な亀裂を齎します。雇われならともかく、自営で立ち行かなくなったりすれば、莫大な借金を抱えるかもしれない上に、和真の父の性格からして、そうなることは目に見えていたからです。
夫婦はとうとう離婚し、恋人がいて再婚を考えていた母のお荷物になることを避けるため、和真は父の元に残りますが、幼い頃から遊んでくれるわけでもなく、無責任な父に愛想をつかしていた和真は、高校を卒業し、専門学校に入学するとともに自立。
母の援助と奨学金で勉強し、その時以来、父には年賀状を出すくらいで、一切顔をあわせずにきました。
10年あまりの月日が経って、突然の父の訃報を聴いても、「なんで俺に連絡がきたんだろう」と思うほど、その存在は希薄になっていたのです。
父の気質を考えれば財産などあるはずもなく、残ったのは、予想に反してずっと辞めずにいた喫茶店のみ。
店を売ることに決めた和真は喫茶店を訪ねます。
そこにいたのが美しい容姿の、でも無表情で綺麗な人形のような男・律。
和真は、律に店を売ることにしたと話すのですが、困ったことに、律は頑なにそれを聞き入れません。
押し問答になり、埒が明かず和真はいったん引き返し後日再び店を訪ねますが、律は生意気で、話は堂々巡り。
老朽化した設備を整える金などないと言えば、「別れた男に貰った慰謝料があるからそれを使って」と見せられたのは五百万円の通帳。
目の前にいる美しい男が、男同士でそういうことをする人種だと知った和真は、何故か微妙にうろたえてしまいます。
実際に店の雰囲気を見てほしいという律に、和真が営業中の店を訪ねると、閑古鳥が鳴いていると思っていた店は、意外に客が入っている。
律ひとりでは忙しそうで、和真は昔、父とまだ一緒にいたころに手伝ったことがあるのを幸い、自分もカウンターに入り、店を手伝います。
それ以来、話のつかないこともあって、店を訪れては律とともにカウンターに入ることになってしまう和真。
そうやって、律とともに店をやっていくうちに続けていく気になるというのが予想するところですが、ならないんですよね。
父の残したものや気持ちに思いを馳せても、それを掴むことはできないし、やはりどこか他人事で、それを守っていこうと言う気にもなれない。
律に対しては、謎めいた雰囲気の中に、ときおり見せる可愛らしい笑顔など、惹かれていく部分はあるけれど、だから店を売らないのではなく、律が他の仕事をちゃんと見つけられるように、猶予期間を与えて辞めてもらうという温情でしか答えられない。
そんなある日、壮年の身なりの整った落ち着いた男が店にやってきます。先に来ていた学生と待ち合わせだったらしいその男を見た律の様子が豹変。
律に慰謝料を渡した男が、その男だったのです。
律が頑なに店を辞めないと言い張る訳はなかなかわからないんですよね。
和真の父とそういう関係があったわけではない。
その理由が、店にやってきた男…というわけなんですが、大学教授のこの男、最低なんですよ。
別れ方も最低だったのに、思い出の地に留まりたいというのには、ちょっとムリがあると思ったんですが、それだけ律が純粋ということでしょうか。
綺麗で無表情で生意気で、けれど内面は実は可愛らしくいじらしく、そういう律の姿は後半に全てわかりますが、苦味のあるコーヒーに微かに混じる甘味、和真が疲れたときに律が出してくれた「キャラメルコーヒー」に律をダブらせたタイトルなのですね。
父に対する和真の屈折した思いが、単に店を自分もやってみたら気が変わったとかいう安易な理由で払拭されるのではない、というのはちょっと良かったかも。
律に惚れちゃったから、というのは…どうなんでしょう?(笑)
愛する男のために、継続を決心したのはある意味男気があるとも言えるけれど、実際金はないから大変そうです。
父の全てを許したわけではないけれど、飽きっぽかった父が唯一続けていた喫茶店を続けていくことで、父の一部は理解したのかもしれません。
父の気質を思い、好きなところへどこにでも行かれるようにと遺骨の一部を海に流す情を見せ、残りを永代供養にしてしまうというドライさに、複雑な感情が見える気がします。
雰囲気は地味目かな。
うえださんらしいお話だと思いました。
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