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スイートホーム
綺月 陣著 / 椎名ミドリ〔画〕
プランタン出版
プラチナ文庫(2006.11)


碧は雑誌に載るほどの人気シェフだが、鈍感な親友の遼平を餌付けするのに必死。なのに彼に彼女との結婚話を告げられ愕然。あんなに色々喰わせたのに「一番美味いよ」って言ったのに!
彼は自分のものにはならない。傷心の碧は酒に溺れ、何も知らない遼平に窘められるが、もう素直に聞けない。ヤケクソで彼の指に舌を這わせ、高ぶりに濡れる己に思わせぶりに手を伸ばした。
初めて見る友の姿に呆然の彼を、妖艶な笑みで眺めながら…。
大河内遼平(おうこうちりょうへい・29歳)×秋元碧(あきもとみどり・28歳)

プラチナさんの↑のあらすじ、間違ってはいないんですが、だけどすごく違うような気がします(笑)
これで判断しない方がいいと思います。
痛くない、怖くない、綺月さんです。
13年に渡る、辛く哀しくいじらしい片思いのお話でした。

秋元碧、大河内遼平、小熊勇士(おぐまゆうじ・通称テディ)は、高校の同級生で親友同志。その関係は13年経った今も変わりませんが、碧は高校生の頃からずっと、遼平に片思いしていました。
しかし、遼平は全く、碧の気持ちには気づいていません。
高校時代から料理が好きだった碧は、遼平の一言がきっかけでイタリアンレストランのシェフになりました。片思いの辛さから、遼平を忘れようと一旦はイタリアに行きますが、遼平に会えないことに耐えられずに帰国。
現在は営業マンとなった遼平の会社のすぐそばに店と家を構え、遼平の『食』を支えています。

いえ、『食』だけじゃないんですよね。
遼平の世話を焼くこと、それはもう、まるで母親のようです。
会社に近いため、遼平はしょっちゅう碧の家にやってくるのですが、食べることは勿論、ワイシャツからパンツにいたるまでの洗濯、アイロン、ズボンのプレス、疲れて風呂に入ることもせずに寝てしまった遼平の臭い足(笑)を拭いてやり、爪も切って鑢までかけてあげます。
朝ごはんはもちろん昼の弁当まで、栄養バランスや、その日の体調を細かく考えて作ったそれを手渡して送り出してやる。
遼平は素材はいいのにあまり自分に手をかけない、一歩間違うとだらしなくなってしまう、穏やかで優しいヘタレ君なんですが、そんな遼平の世話を焼くことは碧にとって誰にも譲れない至上の喜びなんですね。
想いを告げることはできないけれど、『親友』としてずっとそばにいて、遼平のために料理を作り、遼平の世話をしてやりたい。長い片思いの間には苦しいこともありましたが、30間近ともなれば、恋心をコントロールして隠し、このままでいることもできる、と碧はそう思っています。

しかし押さえつけた恋心は、やはり苦しく、碧は鬱屈する思いを逃がすように、幾人かの男と身体を重ねています。
あとがきで綺月さんが書いているように、私も「一棒一穴主義(笑)」ですが、碧に関しては、もうこれは仕方がないというか、必然なんだと思いました。叶うことのない遼平への想いや欲望を、他所で爆発させなければ、遼平の前で平静でいることはできないんだと思います。恋しくてたまらない男によく似た他人に、決して本人には受け止めてもらえない熱を代わりに受け止めてもらうことで、碧はバランスをとっているんだと思う。
そんな気持ちの中には、自分を汚し、汚い自分は遼平にふさわしくないと、遼平を諦める理由も探していたのかもしれません。

けれどそんなふうに、他人に身を投げ出しても、遼平への気持ちは一向になくなることはありません。碧は雑誌やTVにも登場し、料理本を出すなど、その美貌も手伝って有名な人気シェフなのですが、碧が店を開いたのも、ただただ遼平に料理を食べさせるためなんですね。遼平の会社の近くに店を構えれば、仕事の合間や帰りに立ち寄ってもらいやすいし、そうすれば、食生活がいい加減になりがちな遼平のために料理を作ることができる。
遼平が定年するまではレストランを続けたい。そんなふうに思っている碧…。

本当にいじらしい碧の想いに泣けてきそうでした。
碧はしおらしい大人しいタイプではなく、口調はべらんめぇで、口から機関銃の連射のような毒舌を吐く、男っぽいタイプです。遼平の態度に切なさを感じても、強がって何でもないふりをしていつもと代わらない自分を演じてしまう。けれど、心の奥にある遼平への想いは、一途で切なく哀しい恋心なんですね。表と裏のギャップが大きいだけに、よけいに泣けてしまうんです。
その想いに気づかない遼平の鈍さには、個人的に「2006年鈍感大賞」を進呈します。

いや、ホントにこんなに鈍感な男もめずらしい。
けれど遼平の名誉のためにいっておくと、こういう人のいい、裏表のないまっすぐなタイプは、人の心の裏を読むことは苦手だと思います。それに加えて、ちょっとボーッとしたところもありますからね。あ、それは名誉になってないか。
碧の気持ちに、そして自分の気持ちにも全然気づかず、「結婚する」などと言ってしまうし…。

それによって、碧の、ずっと遼平の世話を焼いていきたいという望みは、たとえ『友人』としてでも、叶わぬものであるということに、碧は気づきます。
遼平の結婚は、あることがきっかけで壊れてしまうのですが、それでも数年後には、きっと遼平は他の誰かと結婚して、碧の役目は取り上げられてしまう。
碧は少しずつ壊れていってしまいます。

碧の『支え』となってくれる男の一人が、親友のうちの一人、テディです。テディは碧の遼平への気持ちを昔から知っていて、その捌け口をずっと引き受けてくれていました。
テディに恋愛感情はない…ようなんですが、ホントかな。サラッと言ってましたけど、高校時代は碧を好きだったというのは本当かも。もしかして今も?というのは単なる想像ですが。
碧の遼平への想いは、もうギリギリのところまで来ていて、「失うかもしれない」という恐れの前には、もう噴出す寸前なんですね。毎晩酒を呑み、初めて会った男と寝て、ボロボロになっていく碧。自虐的になった碧は遼平の前で自慰までしてしまいます。
そしてそんな壊れかけた心を抱えて、テディと抱き合う碧の姿を、遼平に見られてしまうのです。
遼平に向かって露悪的な言葉を吐きながら、けれど、出ていこうとする遼平に泣いて縋りつく碧はもう・・・・辛い、苦しい。
もう決定的に駄目になってしまったのに、碧はそれでも遼平のために仕事場へお弁当を届けます。顔は合わせないで、社の人に預けるだけ。毎日毎日。

ホントに辛い片思いなんですけど、では切ない涙涙のお話かというと、雰囲気はそうでもないんです。
碧によるところが大きいと思うんですけど、泣けるんだけどジメジメしてない。

タイトルに「スイートホーム」とありますが、碧の求めているもの、遼平にあげたいと思っているもののひとつが、愛情たっぷりの「スイートホーム」だと思うんです。
碧の恋は切ないんだけど、碧が遼平を迎える家は確かに「スイートホーム」で、暖かい愛情が漂ってる。そんな雰囲気も、湿っぽくならない理由だったかもしれません。かいがいしい『オカン』のような碧は微笑ましくもユーモラスで笑いを誘います。
碧を大人しい、控えめなタイプにしなかったのは成功ですよね。押し付けがましかったり、卑屈だったりするようなところは微塵も感じられませんでした。そういうところが良かったです。威勢がよくて、乱暴で、でも一途でいじらしい、碧の可愛らしさが伝わってきます。
私は、鈍感朴念仁攻めはハッキリ言って好きなのですが、受け贔屓の人は、遼平をどつきたくなるんじゃないかな(笑)

とっても面白かったです。
切なさにも浸れます。
いつもは言わない「お薦め」を、久しぶりに言っちゃいたい気持ち。
受けに感情移入するひとは、片思いの切なさに、かなり泣けると思います。
ハッピーエンドなので、ご心配なく。
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