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獣の啼く街
いおか いつき著 / 石田 育絵イラスト
大洋図書
SHYノベルズ(2006.11)


風俗が主産業の町で唯一の医師として闇診療をしながら暮らしている沢渡芳紀は、ある夜、ボディーガードを生業にしている青年・劉と出会う。
その翌日から、劉は「やらせて」の一言で芳紀の診療所に入り浸るようになる。
欲しいものは力づくで手に入れ、気に入らなければ腕で黙らせる劉は、自分の欲望に忠実で常識もモラルもないこの町そのものだった。
彼にとってセックスとは愛情の伴うものではなく、欲望を晴らす行為でしかない。
劉に人間らしい感情を教えたい、そう思った芳紀だが・・・!?
劉(りゅう・24歳)×沢渡芳紀(さわたりよしき・32歳)


不法滞在、不法就労の外国人に、売り飛ばされてきた女たち、事情があって社会からはみ出した者たちに、それを取り仕切るヤクザ。そんな人間たちが作り上げた町は、異人種が入り乱れ、何ヶ国語もが飛び交い、日本の法律さえ適用されない。路上で、クスリが売買され、至るところに街娼が立つ。
…日本にこんな街ないと思う。

芳紀は、尊敬していた医師の跡を継ぐかたちで、こんな闇社会で診療所を開いています。
そんなある晩、往診の帰り、芳紀は、劉という、この街で生まれ育ち風俗店のボディーガードをしている男に出会います。
その時は会話はありませんでしたが、翌日診療所を劉が訪ねてきます。用を尋ねる芳紀に、劉は「やらせて」と言う。勿論断る芳紀ですが、その日以来、劉は芳紀にまとわりつき、口を開けば「やりたい」とそればかり。
始めは呆れて相手にしなかった芳紀なのですが。

劉は不法滞在で風俗で働いていた中国人女性と、誰ともわからない父親との間に生まれました。そんな境遇の劉は、出生届けも出されておらず、そのため学校に通ったこともなく、一切教育を受けずに育ってきました。
彼が学んだのは、この街で生きていく術のみ。外国人が多い場所柄、日本語以外に中国語と英語を話しますが、読み書きはできません。
風俗店のボディガードをするだけあって腕っ節は強いですが、「常識」は全くなく、芳紀が「sexは同意のもとにするもの」と言ったのを忠実に守り、芳紀に無理に手を出そうとはしませんが、やりたいからやりたい、気持ちよくなれればいい、という劉は、ただ本能のみで生きていて、まるで獣。
男とどうにかなるなどと考えたことのない芳紀は、劉の誘いをかわし続けているのですが、やがて劉の本質的な純粋さ、素直さを目にして、少しずつ惹かれていくわけです。

そして実はもう一人、やはり芳紀を口説いている男がいます。それはこの闇社会を牛耳るヤクザの榎田(えのきだ)。榎田に関しても、芳紀はその誘いには乗らず、すげなく接してきました。
ところが、今までは余裕ありげに芳紀のあしらいにつきあってきた榎田も、芳紀と劉が近づきはじめたことを知り、とうとう牙をむき出します。
街で医者を続けるために、劉を守るために、芳紀は榎田に抱かれることを決心するのですが、榎田は舎弟のみならず、芳紀を助けにきた劉の目の前で、芳紀を押さえつけ…。

とまあ、こんなお話なのですが、なんというか微妙でありました。
こういう影のある街で、お金がなかったり訳アリだったりする患者たちを診るツンデレ医師と、その街で生まれ育った年下の野良犬…と、設定はとてもツボであるのに、どうもお話に乗れないのは何故だったんでしょう。
ハードというには温く、嘘っぽい背景にどうにも入っていかれませんでした。

荒んだ街で医師になろうというのには芳紀憧れの医師の存在があったわけですけど、身体を張ってまで続けていきたいと思う理由や、芳紀の医者としての信念みたいなものが、ちゃんと伝わってこなかったんですよね。言ってることはわかるんだけど、熱がない、というか。
学の無いワンコというのは嫌いじゃなくて、むしろそういう野良犬を躾けていくのは好きなんですけど、戸籍までないといったら大変ですね。
ただ芳紀はこの町でずっと診療をして暮らしていくつもりのようだし、劉も他には出ていけないし、この街にいる限りそれはそれで大丈夫なんでしょうけど。
榎田も中途半端な感じがしました。
あんなに簡単に納得して手を引いて、こんなヤクザが締める闇の街は、やはり温いんだかハードなんだか。

芳紀の元で少しずつ字を覚えたり、常識を教えられたりしていく劉・・・微笑ましいラストですね。
劉をこの町から出し、真っ当にしてやろうという話ではないので、たぶん二人はこの町で、ひっそり生きていくんだと思います。風俗店のボディガードをして暴力と節操のないsexを繰り返すよりは、芳紀の助手になったほうが、寿命は延びますね(笑)

いおかさんということで、大抵お名前で買うんですが、どうも「好きこそ~」と「真昼の月」シリーズに比べると残念ながら・・・なことが多いんです。もちろん個人的な話ですよ~。
この二つが面白いんだから、今度こそは…と思って買うんですけどね。
今回辛口になっちゃいましたけど、いつもとても期待してます。

それと、お話には関係ないんですけど、今回の石田さんのイラスト、芳紀が髪の一部をちょんちょりん(笑)に結わえてますけど、32の男の髪型として、私としてはいただけないです(^^ゞ
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