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シナプスの柩 下
華藤 えれな著 / 佐々木久美子イラスト
幻冬舎コミックス
リンクスロマンス(2006.10)


外科医の桐嶋水斗は、副医院長の長山に身体の関係を強いられていた。
一方で同僚の樋口へ想いを募らせていった水斗は、長山の呪縛から逃れられないことに絶望し、病院の窓から身を投げる。
運良く一命を取り留めたものの記憶を失い、幼児退行してしまった水斗。
そんな水斗を育てることを決意した樋口と北海道に移り住み、穏やかな日々を過ごしていたが、長山の影が忍び寄り…!?
樋口洋一郎(ひぐち・よういちろう/34歳)×桐嶋水斗(きりしま・みなと/30歳)

「シナプスの柩 下)」雑誌掲載
「幸福の領域」書き下ろし の二編。

「シナプスの柩」続編です。
(上)から間を空けずに出てくれたので、最近めっきり記憶力の怪しい婆にも優しくて嬉しい。

(上)は、水斗に再び長山の手が迫り、やきもきする場面で終わっていました。いったいどうなるのか、気になっていたんですが、あれ?わりとあっさり終わってしまったように感じました。雑誌掲載だったせいか、こじんまりとまとまってしまったような。1冊丸々ドロドロするのかと思ってたんですけどね。

過去を捨て、新しい過去を築いていけばいいと思ったとしても、過去の手は水斗を追いかけてきます。
自分は長山の愛人だったと聞かされた水斗。
長山から呼び出され、また長山の医療過誤、元厚生労働省幹部との癒着疑惑の捜査の手は、医学界で口には出されないまでも暗黙の了解となっていた“長山の愛人”水斗にも伸びてくる。
記憶を失っていることを理由に、樋口は警察から水斗を守りますが、自分の失くした過去に“犯罪”に関わる出来事があると知った水斗は、長山に会い、真実を問いただすことを決意して、長山のホテルに向かいます。

記憶を取り戻したいという願いと同時に、それを怖れる気持ち。記憶が戻った時、樋口を失うような気がして、逡巡する水斗の思いがとてもよく伝わってきました。
前の感想で「長山をギャフンと言わせてほしい」などと書きましたが、長山も、ただ水斗を利用して言いなりにしていたわけではなく、実は複雑な感情が隠されていたんですね~。身勝手で甚だ迷惑な話ではあるけれど、ただのエロじじいではなかったのです(笑)
前作の窓から落下のシーンを再び踏襲するような出来事がおき、水斗は記憶を取り戻します。
しかし、記憶が戻ったということを樋口に話すことができません。
そこで(下)はお終い。

書き下ろし「幸福の領域」は、記憶が戻っているのに、なかなかそれを話せずにいる水斗のグルグルが延々と続きます。
話さなければならないとわかっているのに、そのあとのことが怖くてなかなか言い出せない。
記憶が戻ったことがわかれば、警察に協力し、場合によっては罰を受けるかもしれません。
しかし、記憶が戻っていないと信じている樋口は、水斗のために大学病院を辞め、道東の海辺の町の病院に勤めようと考えていました。しかしそれさえも、水斗の存在によるスキャンダルを怖れた病院側によって断られてしまう。
自分の存在が、優秀で類稀な心臓外科医である樋口の将来の枷となり邪魔をしているということを知り、言わなければ、そして樋口から離れなければと思うのですが、樋口の優しさや暖かさに触れるたび、もうちょっと、もうちょっと、とその瞬間を引き伸ばしてしまいます。

悩んでは言えず、言えずに悩み・・・エンドレス。
ちょっと苛々するほどなんですけど、でも自分を愛してくれる人が目の前にいて、自分もこの上なく愛情を感じていたら、それを捨てることに臆病になる気持ちはわからなくはない。
樋口はホントに包容力があって、水斗が記憶を失くしていようが思い出していようが関係なく水斗の全てを受け止めて愛していて、その態度は水斗にも外に向けても一貫しているので、ホントは不安なんて感じなくたっていいんですけどね。
全てを思い出したことを告げたら、あの何もかもを忘れたけれど幸せだった二人の日々を失うのではないか、と怖れる水斗ですが、ついに水斗の記憶が戻ったと知った樋口は、水斗の悩みなんか吹き飛ばしてくれています。
樋口の将来のために自分が邪魔だとか、長山の件とか、記憶が戻っても医師には戻れないのでは、とか水斗には不安がつきません。でも、水斗の記憶が戻ったときから、樋口は更にこの後のことを、きちんと考えてくれているんですもんね。
やはり水斗はちょっとグルグルし過ぎだと思います。

細かい突っ込みなんですけど、水斗が樋口を「洋ちゃん」ではなく「樋口先生」と呼ぶことで、水斗の記憶が戻ったことに樋口が気づくのですが、(下)の最後でもう呼んじゃってますよね(笑) 樋口はあっさりスルーしちゃってたけど、気づかなかったのかな(笑)
雑誌掲載はそこで一応ENDとするためにそうなってたんだと思いますけど、ちょっとあれ?って思っちゃいました。細かいですけど(^^ゞ

前作のドロドロを見るに、いったいどんなことになるのやらと思っていたら、樋口の揺ぎ無い愛情と、幸運に恵まれて意外にトントン拍子でした。幸せそうでございます。
まあ、今後はあんまり樋口に心配かけないように、もうちょっと強くなれるといいかもね。
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