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愚直スタイリッシュ
花川戸 菖蒲著 / 角田緑イラスト
二見書房
シャレード文庫(2006.10)


熱い親切青年・朋野と元エリートサラリーマンの翠。
性格正反対の二人が営む「便利屋朋野」はその名の通りティッシュ配りから経営コンサルタントまで、なんでも請け負う庶民の味方。役割分担は、締まり屋の翠が内勤と経理で、朋野が主に肉体労働―だが、そこには翠が心に大きな傷を抱えているという理由が。
苦しみを分かち合い、一人では社会に適応できなくなってしまった翠を支える朋野の愛が、じわりと胸を熱くする珠玉の名作。
書き下ろしは年末編。朋野ついに過労で倒れる!お世話になった沈着冷静な朋野宅のお隣、左近司さんの正体とは。
朋野航平(とものこうへい・25歳)×羽根田翠(はねだみどり・25歳)
この攻受関係でいいのかな?
便宜上、普通に考えられる方で並べてみましたが、実はこの2人、キスもHもしておりません。
けれど、そんなものはなくても、確かに「愛」の物語。

「愚直スタイリッシュ 1」
「愚直スタイリッシュ 2」
「愚直スタイリッシュ 3」とあり、「1」「2」は初出JUNEだそうです。
「3」は書き下ろし。


大手一流商社で、同期だった朋野と翠。しかし、現在は2人とも会社を辞め、一緒に「便利屋朋野」を営んでいます。
実は会社を辞めざるを得なくなった事情と言うのが、かなり陰惨。翠は未だにその時の傷が癒えず、現在でも“発作”を起こしてしまいます。
詳しくは「1」で語られますが、その時の翠の心理を慮るとかいう前に、この吐き気がする出来事をまともに受け止められなかったです。ホントに気持ち悪くなりそうで読むの辛かった。人が壊れていく過程なんて詳細に見たくないですから。
よっぽど飛ばしてやろうかと思いましたが、そうすると翠の傷が理解できなくなるのでは・・・?と思って我慢して読みましたけどね。ホントに辛かったです。

翠とともに会社を辞めて以来、朋野はずっと翠の傍にいて、心が壊れてしまった翠を守るようにして生活してきました。
翠も、事務系の仕事なら完璧にこなすし、1人で外出したりできるようになってきましたが、他人はまだ怖く、完全に社会復帰することはできていない。

朋野は、いつしか翠を愛するようになり、今では一生翠の傍にいると誓っています。口に出して翠にもそう伝えている。
けれど翠はそれを言葉どおりに受け取ることはできないんですね。
過去、自分の全てを否定され、虐げられて地の底まで踏みにじられた記憶は、翠に自分の価値を認められないという気持ちを植えつけてしまいました。
翠は、今の自分が朋野に依存せずに生きてはいられないとわかっています。そして、朋野がどんなに言葉を尽くしても、朋野が自分と一緒にいるのは、そんな自分をただ“ほおっておけないから”傍にいるのだとしか信じられないんですね。

そして朋野も、翠に自分の気持ちを無理に伝え、わかってもらおうとはしないのです。
一生そばにいても、もしかしたらキスさえできないかもしれないとわかってる。
朋野に依存し、朋野がいなければ自分は生きていけないと、はっきり知っている翠ですが、その気持ちがなんなのかはまだ怖くて見つめることもできません。
それでも、朋野だけでなく、翠も、一生一緒にいたいと想っている。

一緒にいられれば、幸せ。
“ずっと一緒に”…と、ここでもやはり花川戸さんのテーマはこれでしたね。

sexが愛の全てではないだろうし、この2人は確かに何もなくても、言葉にできなくても、確かに愛し合ってるカップルだと思います。
ずっと一緒にいることが、お互いにとってこの上ない幸せなんだろうとわかる。sexしなくても、キスさえできなくても、ただ“一緒にいること”が幸せなんだろうと。
でも、それならせめて、愛してるということをきちんとお互いに自覚して、それを伝え合って欲しいかな。今は外側から見れば恋愛だけど、お互いの認識はまだ恋愛関係とは言えないですよね。
せめて愛を伝え合って、その上で、身体を繋がないということを選択するならね。

でもこのままでは朋野がちょっと可哀相かなぁ(笑) 
煩悩を滅却するために冷たいシャワーを浴びて熱出したりしちゃうのは哀れですよね。
翠の過去が過去なので、身体を繋げるという行為には、相当の時間がかかるかもしれないし、もしかしたら駄目かもしれません。
でも、2人ともまだ25歳。25歳はまだまだ若いですよ。心だって、ずっとしなやかなはず。少なくとも私より(笑)。本人は自覚しなくても、間違いなく翠の心は朋野を愛することができるくらいには回復してるんだから。
完全に回復するのにあと10年かかったって、まだ35だ。時間はたっぷりある。
いつか身も心も、文字通り一緒になることができるだろう…と思いたいですね。

翠の過去が、私には耐えられないので、もう二度と読み返したくないんですが(笑)、こういう暗い影が落ちてはいるものの、全体のトーンやテーマはいつもの花川戸さんだと思います。
文章が暗くないし、過去に絡む人物はともかく、他は主人公も含めてみんないい人ばっかりで、ドンゾコな気分にはならずにすみました。
読み返したくないとは思うものの、続きがあったら読みたいかな(笑)。
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