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お気に召すまで
水無月 さらら著 / 北畠あけ乃イラスト
徳間書店
キャラ文庫(2001.7)


大手建設会社に入社して3年。将来を嘱望された慎也のプライドはボロボロ。新しく赴任してきたエリート上司・久我山に、毎日怒られてばかりなのだ。
そんなある日、久我山はなぜか慎也に誘いをかけてきた。OKしたらこれから優しくしてくれるかも?
ところが、相変わらず仕事に厳しい久我山。なのに夜には巧みなHで甘やかされ、慎也は昼と夜の久我山に翻弄されて…。
また古い本です。
北畠さんのイラストに惹かれて…。

久我山恭一(くがやまきょういち・33歳)×松永慎也(まつながしんや・24歳)

「お気に召すまで」
「天に召されるまで」の二編。

大手建設会社に入社して3年の慎也は、他社から引き抜かれ赴任してきたエリート新課長・久我山にプライドがズタズタになるほど毎日怒鳴られていました。そのため心にも時間にも余裕のなくなった慎也は恋人を可愛がる余裕もなくし、ついにフラれてしまいます。

偶然その現場を久我山に見られ、お茶につき合わされてしまい、その後は誘われるまま食事、バーと場所を変えるうちに、口煩い陰険意地悪課長だと思っていた久我山が、思いのほか話上手の聞き上手であったことで話が弾み、つい飲みすぎた慎也は課長の家に誘われて…。
酔って寝てしまった慎也が目覚めると、そこにいたのは自分の股間に顔を埋める久我山課長でした!

酒酔いのボンヤリと快感とで貞操観念がうやむやになった慎也は、そのあと久我山にいいようにイカされてしまうのですが、久我山に「つきあってみない?」と言われてはたと考えます。
エリートで小金持ちの久我山の財布はとりあえず魅力的。大人の遊びを教えてもらえるし、Hも挿れないならOK。そして一番のメリットは、つきあえば会社でもお手柔らかに接してもらえるだろうということ。
そう考えた慎也は、自分はわがままだから奴隷のように恭順な相手じゃないと続かないとのたまい、「奴隷も面白い」という久我山とおつきあいをしてしまうことになります。

そして昼は課長と部下、夜は奴隷とご主人様という昼夜逆転の関係が始まります。
しかし、アテが外れて久我山の仕事場での態度は一向に変わりません。仕事での「意地悪」の仕返しに、プライベートでは久我山を奴隷扱いすることで憂さを晴らそうとする慎也。と言ってもそんなに嫌な性格じゃないので主人になりきれないんですけどね。別に変なプレイをさせたりはしません(笑)。靴を脱がせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、料理を作らせたり…と可愛いもんです。

いくら厳しすぎると言っても、夜はベタベタに甘やかしてくれ、慎也が嫌がることは絶対にしない。総じて甘くて優しく、しかし公私混同しない仕事に対する厳しさも持ってるなんていいじゃないかと思うんですけど、久我山はそう簡単な男じゃないんですよね。

久我山の不器用さ、口の足らなさは、少しずつ垣間見えてきます。見目麗しい美しい男である久我山は、女性には大変モテるんですけど、実は大変恋愛ベタなことがわかってきます。
実は慎也に仕事で厳しくしたのは、慎也の実力を認めていたこともありますが、「好きな子にはつい意地悪しちゃう」という小学生のような気持ちも大いにあったんですね。
そして、恋人を構うのが大好き。構いすぎて弄り倒し、ちょっかいを出しまくったあげくに壊してしまう…。そんな恋愛ばかりしてきた男なんです。

「お気に召すまで」は、仕事には才能あるけど、ちょっと天狗、「王子気質」の慎也が本気で頑張れるようになるとともに、自分を変えた久我山を好きになるまでのお話なんですが、面白かったのは「天に召されるまで」の方でした。
慎也の仕事への思い、男として久我山と対等に並んで歩ける存在になりたいという思いと、久我山の「可愛がり過ぎ、構い倒し」の愛情がうまくかみ合わず、擦れ違いを引き起こしてしまいます。

仕事ではどんなに厳しくしても、それは慎也を認めているから。
そう伝えてやれば良かったのに、プライベートで優しく甘やかすだけでフォローしているつもりの久我山。

けれど慎也にしてみれば、久我山に認めてもらいたい仕事で他社員の前で罵倒されたのでは、いくら2人の時に甘く優しくされても、「男」としてのプライドはズタズタだし自信も喪失してしまいます。可愛がられるだけの愛玩動物ではないんですからね。
そして久我山が甘やかしすぎたことで、慎也は自分で立ち上がることもできなくなってしまったのです。久我山に仕事への自信を失わされても、立ち直らせてくれるのもまた久我山でした。上司である久我山に遠慮して、大勢の前で叱責される慎也を助けてくれる同僚はいません。叱るのも慰めるのも久我山一人。

仕事では久我山に全く叶わず、すっかり自信を失い荒れる慎也を久我山はまた甘やかすことで懐柔しようとしてしまいます。SEXして、慎也に受け入れられたことで“許された”と思って安心してしまう。本当の慎也の気持ちを聞こうとせず、自分もいうべきことを言ってあげない。
そしてそんな久我山を待っていたのは、慎也の辞表と失踪でした。

愛してるからって、全てが欲しいからって、相手の全てを自分の腕に閉じ込めてしまっては駄目ですよね。
慎也はまだ若く発展途上で、成長したいと思ってるんだもの。
そんなことにさえやっと気づくほど、愛情たっぷりで恋愛ベタの美しい男…このアンバランスな感じがなんだか好きです。


仕事面も程よく詳しく書いてあるので職業BL系の面白さもあって、ちゃんと「お仕事してるリーマン」なのがいいです。
仕事に対する男のプライドや恋愛がうまく絡んでて、面白く読めました。
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