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ビスクドール・シンドローム
花川戸 菖蒲著 / 水貴 はすのイラスト
ワンツーマガジン社
アルルノベルズ(2006.10)


ビスクドールのように整った顔のSE・藤池夏樹。顔に似合わない小悪魔な性格の彼は、男の理想を演じてさまざまなタイプの人間と付き合っていた。
今度のターゲットは笑顔がまぶしい取引先の商社マン・陶山。彼に狙いを定めた夏樹は、陶山にあぶないイタズラをしかけて無事ゲット!
男の抱き方を教えたのは夏樹だが、次第に陶山は夏樹の快楽を翻弄していく。
他の男と遊びつつも陶山にひかれる夏樹だが、陶山に見られてはいけないところを目撃されてしまい―。
陶山糺(とうやまただす・27歳)×藤池夏樹(ふじいけなつき・25歳)

「ビスクドール・シンドローム」
「永遠ラヴァーズ」の二編。

わりと評判の良い作品なんですが、私にしては今回ちょっと辛口入っております。
どうもすみません。


ゲイの夏樹は将来の不安に怯えています。
男しか愛せない自分は、若いうちは良くても、やがて年を取り一人になって、一人の暗い部屋に帰り、一人でご飯を食べて、そうやって一人で毎日過ごし、やがて一人で病気になって、看病に訪れる人もなく入院して、そして一人で死んでいくんだろうか、と。
そんな不安を打ち消したい。
誰かにずっと傍にいて欲しい。
気に入られるように振舞うから、だから捨てないで。

そんな痛ましい思いを抱いた結果、夏樹は常に何人もの男とつきあっています。
しかし、男の好みを研究し、自分をその理想どおりに演じ、自分がこうすれば相手はこう出る…と計算しつくした媚態を演じる夏樹は、痛ましいどころじゃなかったです。
あとがきでは、もっといやな子に書くつもりだった…と花川戸さんは仰ってますが、これでも加減したんですか?! うそ。(笑)

そんな夏樹は、仕事で陶山に出会い、ひと目でその笑顔に惹かれ、「ものにする」と決意します。
陶山の職場に仕事で通いながら、陶山の社内での様子などを盗み見して、その生活スタイルや好みのタイプを割り出し、優しく控えめなタイプが好きと知ると、そのとおりに自分を演じ、また忙しいあまり毎日午前様で、食事も碌に取れていないとわかると、得意の料理で手作り弁当を持参。
その渡し方も引き際も笑顔もセリフも全て計算して、陶山が夏樹の予想どおりに動くのを見て影でほくそえむ。陶山がまた、面白いように簡単に夏樹の手に落ちてしまうんですよね。
それを見てクククと笑う夏樹。

このあたりを可愛いとか面白いとか、または共感や理解できたりすれば受け止め方は違うんだと思います。
でも私にはどれも思えませんでした。
ああ、この子は好きになれない…と思いつつ我慢して読んでましたが、考えてみればそれも当然でした。途中で気づきました。
この子はそういう風に書かれてるんですよね。

将来一人になるかもしれない不安は、何もゲイに限ったことじゃないです。誰だって程度の差はあっても考えたことはあると思うんです。いい年齢で独身だったらその不安も大きいかもしれませんが夏樹はまだ25歳だし、結婚してるからって、安泰だと決まったわけじゃない。
だからって、一人失った時のためにスペアを用意しておくような輩はそういないと思うので、そこにたどり着いてしまう思考回路はどうしても理解できませんでした。

捨てられたくないという思いはわかります。初めての男に捨てられたら、心に傷も残るだろう。
捨てられたくないから、相手の好みどおりに振舞うといういじらしい気持ちもわかる。そんないじらしさとは反対に相手を操って悦に入るような態度なのも、精神的に優位に立ったつもりで不安を打ち消したいからなんでしょう。
だけど、どうしても凄くバカなことをしてる子だとしか思えなかったんですよね。気持ちがわかった上でも、同情できなかった。不安やフラれる怖さなんて皆同じだもん。原因と結果の間に繋がりを見出せなかったから、皆さんのように夏樹に好感持てなかったんだと思います。

ですが、これは夏樹が本当の「好き」、本当の「愛」にたどり着くまでのお話です。
相手を手玉に取っているつもりが、相手にとって都合のいい「ドール」になっていたという現実。夏樹が自分の間違いに気づくお話なので、それまでの夏樹に、私が「こんな子は絶対、嫌」と思わされたのは正しい反応だと思うんだけど…。

自分の気持ちに気づいてからは、ちゃんと軌道修正してくれるし(笑)、そこから短編の「永遠ラヴァーズ」にいたっては、花川戸さんお得意のひたすらラブラブ甘々でした。
攻めの陶山も、夏樹の罠にハマってあっけなく落ちてくるあたりは、あまりに他愛なさ過ぎて「大丈夫かよ」と不安に思いましたし、いい人風だったので、毒牙にかかったのが可哀相に思えたりしましたが、当たり前だけどそれだけの男じゃなかったですね。
花川戸さんらしい、受けに目一杯愛情を注ぎ、それでいて間違ってることはハッキリ言ってくれる、「清く正しい男」でした。

2人で買い物に行ったり、デートしたり、お弁当もってピクニック…。
そうやって何気ない日常を繰り返し、ずっと一緒に過ごしていくんでしょうね。
最初はどうしようか、読みきれるだろうかと思いましたが、終わってみれば、いかにも花川戸さんらしいテーマのお話で、らしいカップルが出来上がりました。最後まで読んで、救われました。
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