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青菫館のはなびら
周防 芳音著 / 佐々木 久美子〔画〕
雄飛
アイノベルズ(2006.9)


貧苦に悩む名門・芹沢伯爵家当主の薫はある日、観梅の宴で一人の男と出会う。
男の纏う刃のような鋭さと凛々しさに心奪われ、別れた後も彼を忘れられずにいた薫。そこへ、芹沢家を救う一報が届く。赴いた先に待っていたのはあの男―彼は過去に芹沢家と因縁のある月岡男爵家当主・敏弥だった。
ある条件の下、敏弥が『買った』もの、それは芹沢家所有の館・青菫館と、薫自身であった…。
月岡敏弥(つきおかとしや)×芹沢薫(せりざわかおる・22歳)
男爵と伯爵。
敏弥の年齢は不明。30歳前後くらいかな?

またまた、大正時代ものです。
周防さんは新人さんのようで、初めての単行本だそうです。
好きな時代ものだし、イラストが佐々木久美子さんだし…ということで買ってみました。

お話は定番のストーリーでした。
貧窮し、没落しかかっている芹沢伯爵家。父は戦死し、兄は病弱で東京を離れ信州で療養の身。現在は薫一人が芹沢家を守っています。
父は生前、生糸関係の会社を興していましたが、それも大戦景気に沸く財閥企業に業績を奪われ倒産。すでに芹沢家の資産は底をつき借金さえ返せない。美術品や豪奢な家具調度を少しずつ売りさばき、なんとか生活を繋いでいるものの、病弱な兄への新治療を試みるために、新にまた多額のお金が必要となります。
とうとう薫は、芹沢伯爵家の住居、かの有名な鹿鳴館を建てた建築家がたてたという「青菫館(せいきんかん)」を売りに出すことを決意します。

売りに出すには薫には一定の条件がありました。
芹沢家の当主が代々受け継いできた芹沢家の「印章」。
亡き父が屋敷のどこかにかくしたこの印章を見つけるまでは、屋敷を出るわけにはいかないのです。
ですから、屋敷を売っても、一定期間はまだ自分が住むことを認めること。青菫館を壊したりせず、なるべくそのままで修復保存することと並んでそれが売買条件でした。

そのような条件の中、なかなか買い手が現れない中、薫が住むことも含めて、なんと銀行が提示する倍額で購入すると名乗りを上げたのが、月岡敏弥でした。
しかし、芹沢家の月岡家には過去に拭いきれない禍根がありました。月岡男爵に売るなどとんでもないと憤る薫でしたが、もはや選択の余地はありません。

青菫館は月岡敏弥のものとなり、薫は滞在を認められましたが、驚いたことに敏弥までが青菫館に越してきます。
そして、月岡の買ったものは屋敷だけではなく、薫自身も含めてだと言われ、ある日、無理矢理に陵辱されてしまう。

誇り高い伯爵である薫は、無理矢理自分よりも下の身分の者に好きなようにされ…この辺ちょっと下克上も入ってますね。
身体を自由にされるうちに、やがて心が惹かれはじめ…と、ホントによくある展開。

ストーリーに目新しさはないものの、大正時代の雰囲気は、かなりいいなと思いました。古風な言葉や言い回しを混ぜながら、それでいて難しくならずに、時代の雰囲気をいい具合に出していらっしゃいます。
文章もお上手な印象でした。綺麗な言葉や文章が、時代設定に合っていて美しいですが、現代ものだとどういうふうになるんでしょうね。この時代を書くには相応しいと思いましたが、これをとっぱらってしまうと、何が残るのか?(笑) 

この雰囲気で、ツンデレ薫が敏弥に押し倒され「狼藉もの、赦さんぞ!」と抵抗するのは萌えでしたね(笑) 狼藉者か~。現代では聞かないよな~。

ストーリーより、雰囲気や描写の美しさが印象に残ってしまったと言ったら失礼でしょうか。
肝心のカップルも、わりとよくある方たちなので…。
「伯爵」になったことがないので(笑)、薫の誇り高さとか、家を大事に思う気持ちがなかなか理解しづらい部分であるけれど、芹沢伯爵家という華族のプライドを何があってもなくさない、硬質で凛とした薫はなかなかいいかも。
ただ、気位は高いですが、生活能力はなさそうです(笑)。
薫だけだったら、一時的に芹沢家を持ちこたえることができても、華族制度廃止によって、絵に描いたように落ちていった華族の仲間入りのような気がします。世俗を読むことに長け、会社経営に敏腕を発揮する月岡男爵と一緒になって、良かったね~と変なところで安心してしまいます。

書き慣れていらっしゃる感じの文章は、新人さんとは思えず、お好きだという「大正」という舞台を十二分に表現されていると思いましたが、どうしてかしら、なんとなく硬い感じがしたんですよね。
部分的には萌えを感じても、ストーリーやキャラそのものにはあまりそれを感じない。その辺はもう、よくある展開なので仕方なく、でも、綺麗だけれど、色気がないというのかなぁ。うーん。
偉そうですね。ごめんなさい~(^^ゞ
でも、とりあえず、次を見てみたいと思うくらいには楽しめました。
現代ものを書かれるとまた変わるのかどうか、興味あります。
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