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恋情のありか
結城 一美著 / 飴本 巽イラスト
プランタン出版
f-LAPIS(2006.8)


「これが取引の条件だ。今さら不満は言わせない」
憲兵将校の有島馨はある疑惑をかけられた愛しい親友を逃亡させた代償として、その親友の兄である瓜生男爵家嫡子の國宏に抱かれてしまった。
幼い頃から優しく温かかった國宏の豹変に愕然とするけれど、何度となく馨の窮地を救ってくれるのも國宏で…!? 
甘い毒のような愛撫に翻弄され、取引として始まった関係が馨には切なくて。
瓜生國宏(うりゅうくにひろ・29歳)×有島馨(ありしまかおる・27歳)
医者と憲兵。

「約束のかけら」に続く軍服ものです。時代は今度は大正時代。

馨は、学習院初等科時代からの幼馴染で親友の瓜生篤宏(あつひろ・攻めの弟)に密かに想いを寄せていました。
自分の気持ちに気づいたあとは意識して篤宏から離れ、あまり会うことのないまま、馨は赤坂憲兵分隊隊長、そして篤宏は政治家の秘書となっています。

そんなある日、憲兵所に密告書が届けられます。
その内容は、瓜生家の次男・篤宏はアカ(共産主義者)だというもの。
この時代、思想犯は逮捕拘留されて取調べを受け、場合によっては拷問という厳しい尋問が待っています。
今でも篤宏に心を残す馨は、憲兵隊長という立場であるにも関わらず、篤宏に危険を知らせ、海外に逃亡させてしまいます。
しかし、それが篤宏の兄・國宏(攻め)に知られてしまう。
そして真実を黙っている条件として、馨は國宏に抱かれることになってしまいます。

篤宏の兄である國宏とも、馨は幼いころから旧知の仲。
自由奔放な篤弘と真面目で寡黙な國宏。
篤弘に想いを寄せていた馨でしたが、兄の國宏は、そんな馨のことが好きだったんですね。しかし、馨が篤弘に想いを告げないのと同様、自分も密かに想い続ける道を選んでいた。

実は密告書を送ったのは國宏の仕業です。
それは弟を落しいれようとしたわけではなく、兄として「アカ」である弟を心配し、馨の元へそれを報せ、篤弘も一度捕えられれば、お灸をすえ目を覚まさせることもできるだろうし、馨なら取調べにも手心を加え、弟の思想を変えることもできるだろうと考えてのことだったのです。

しかし、馨は篤弘を逃がすことを選んでしまった。しかも自分の立場を省みず危険に晒すことまでして。
馨の篤弘への想いの強さを思い知らされた國宏は、嫉妬のあまり、そんな条件を出してしまったのです。
しかし、馨は、篤弘への自分の想いを國宏に知られ、國宏が嫌悪のあまり、怒りで自分にそんな仕打ちをしたと思い込みます。
「好きだから抱いた」という國宏の言葉も信じられない。
擦れ違いの始まりです。

もともと馨のことが好きな國宏なので、横暴な態度を取っていても、どこか優しい。篤弘がアカだという噂が流れ、友人だった馨が逃亡幇助の疑いをかけられて(真実ですが)拘留されてしまうと、馨を助けるために影で手をつくし、馨を救い出します。
視点は馨、國宏と変わるので気持ちはわかりやすい。擦れ違ってることもよくわかるので、じれったさが切ないですね。

國宏に抱かれることを、自分への罰として淡々と受け入れようとする馨ですが、やがて國宏の優しさや自分のために動いてくれたことを知り、初めに聞いた「好きだから抱いた」という言葉が真実なのではと思いなおしはじめます。
馨の中で國宏の存在は少しずつ大きくなっていく。
しかし、ある日、篤弘が巴里で亡くなったとの知らせが届きます。
自分が海外へ行かせた責任だと思った馨は…。
國宏が馨の元へ駆けつけ、部屋でみたものはなんと!!!(笑)
切腹しようとして自ら腹に短刀をつきたて、まさに腹をかっさばかんとしている馨の姿。

う~ん。軍人だなぁ。って感心してる場合じゃないですけど、この時代設定ならではの展開に、びっくりしつつ萌えました(笑)
馨はむくつけき憲兵たちの中にあって、まるで場違いのように美しい、現代で言うならクールビューティーというやつですね。
二人の想いが中心なので、大正時代という設定に囚われず、読みやすいと思います。王道でしたし。

一応のハッピーエンドですが、弟も亡くなってしまったし、あとがきにもあるように、この後、関東大震災があったり、戦争もあるわけです。
そういう時代を二人が無事乗り越えていってほしいなと思いますね。
そうそう、瓜生家には三男もいるとはいえ、長男・國宏の嫁取り跡継ぎ問題はそう簡単には避けて通れず、ひと悶着もふた悶着もあるでしょう。
この時代の男同士のカップルは大変だなぁ。
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