刈谷美幸は怜悧なビ能を持つ心臓外科医。とある深夜、病院に忍び込んできたチンピラ・唐沢亨に人違いで犯されてしまう。だが、亨は薄茶の瞳にふわふわの髪、身体は大きいがヤクザにあるまじき仔犬のような性格をしていた。
後日、平身低頭でやってきた亨を美幸は「ポチ」と呼んで可愛がることにしたのだが!?
後日、平身低頭でやってきた亨を美幸は「ポチ」と呼んで可愛がることにしたのだが!?
唐沢亨(からさわとおる・19歳)×刈谷美幸(かりやみゆき・33歳)
ヤクザと外科医。
先に出た「罪深き夜の僕(しもべ)」(ヤクザ×神父)とのリンク作で、神父・真紀(まき)の兄・美幸編です。「罪深き~」を読んでいなくても大丈夫。
ラストのSSには前作の二人も登場していますが。
弟の真紀が医師の道を捨て刈谷家を出奔して神父になってから、美幸は父と同じ心臓外科医として医師としての道を歩んでいます。将来的には「刈谷医院」を継ぐことになるだろうけれど、今は大学病院勤め。
弟は優しい控えめなタイプでしたが、兄の美幸は、クールで有能で近寄り難いと周囲に思われるタイプ。
ある夜、CCUを見回ったあと仮眠室で横になった美幸は、いきなり侵入した若い男に犯されてしまいます。
美幸を「みゆきちゃん」と呼び、「彼氏の代わりに借金をかえしてほしい」という話に男の恋人などいない美幸は人違いだと気づきますが、手馴れた男には抵抗も虚しい。
「泣かないで。ひどくなんかしないよ。悦くしてあげるからね」と、いやに優しい男に写真まで撮られ、人違いだと言っても聞く耳を持たない男は、これをバラまかれたくなかったらお金を払ってね、こんなことしたくないけどこれも仕事だからゴメンね、と自分を「広仁会(こうじんかい)の唐沢亨と名乗り、「明日も会える?みゆきちゃんの返事を兄貴に話さないといけないから」と美幸の住むマンションの住所を聞いて去っていきます。
突然男に犯されたことに怒りを覚えつつも、天真爛漫で悩みなどなさそうな亨に何故か心底から怒る気になれず、「馬鹿犬」に噛まれたような心地の美幸。
翌日、自分のマンションに亨が現れ、殴られて目を腫らした様子を見て、人違いだったことがわかって兄貴にしこたま殴られたと聞きます。
しかし、手当てをしてやる美幸に、「ご相談があるんですが…」と亨が言い出したのは、昨夜の嵌め録り写真を「買い取っていただけないでしょうか?」…つまりオドシ。
頭にきて怒鳴りつける美幸に「すみません」と頭を下げるばかりのヤクザの亨。
人違いでひどいことをしてしまったことに罪悪感を感じたらしい亨は、償いに、と料理を作り、美幸が寝ている間に掃除をして、「お前のせいで腰が痛い」という美幸にマッサージまでしてくれます。
そして一日お世話がしたいという亨と過ごすうちに、ヤクザのチンピラな亨の本質が美幸に見えてくるんですね。
どうも最初からヤクザらしからぬヘンな男だったんですが、亨は幸せな家庭で育っておらず、15~6歳からひとりきりで17でヤクザに拾われ、ヤクザ世界の常識を常識として覚え、何の疑問も持たずに、上の言うとおりに使われてしまっているのだとわかります。
亨の取り得は外見とSEXだけと、組からは借金をした女に性技をしこみ風俗に流す仕事を専門にやらされているのですが、自分のしていることに疑問を抱く頭さえ持っていないのです。亨はとても正直で素直で、人懐こく気立てのいい青年で、自分が風俗に落とした女達にも明るく懐いていって慕わせてしまうようなところがあります。
恵まれない生い立ちのせいで、いいことと悪いことの本当の区別もついていない亨を「馬鹿だ」と思いながらも、「可愛い」と思ってしまう美幸。
亨の茶と金色に染めた髪や、まっすぐに見つめてくる茶色の瞳がまるで昔飼っていた愛犬のようで…。
美幸は亨を「ポチ」と呼び、つい世話を焼いてしまうようになります。
美幸はお金を持って帰らないとまた殴られてしまう亨に10万円を渡してやったり、スーツを買ってやります。無知なだけで、そこらの医師よりよっぽど人間が出来ていて可愛げがある亨を磨き上げて、別人のようにいい男にしてやりたいなどと思っちゃったりします。そして、この無垢で子供のような男の魂や、それとは裏腹に均整の取れた逞しい体、プロとして長けた情事の腕を持つ年下の男を傍におきたい…と思うようになるんですね。
亨は確かにほおっておけないタイプですね。ちょっと馬鹿だけどちゃんと躾ければお利口になりそうな犬…って感じで、年上の美幸は「自分の手で育ててみせる…」とハマっちゃってますね(笑)。
美幸が意外に腹の座ったタイプで、脅されてもビクともしないし、亨の気持ちがわからなくても自分は揺らいだりしないところが良かったです。年上の大人って感じがする。
亨に服を買ってやったり、美味しいレストランに連れて行ったり、若い男にハマる年上女みたいだけど、お金があったらやってみたい妙齢の女性は多いだろう(笑)。
亨も馬鹿だけれど飼い主に忠実な可愛いワンコで、頭をグリグリしたくなる、美幸の気持ちもよくわかります。磨けば光る片鱗が見えるとなったら、育てる醍醐味は美味しいですよね。
おおむね楽しく読めましたが、ちょっと引っかかったのは、美幸の背景にある「寂しさ」や「人恋しさ」がいまいち伝わりにくかったのと、そもそもの人違いの原因となった借金「1000万円」を、借金した男ではなく美幸が立て替え、その立て替え分を亨が美幸に返す…という結末になったことです。
借金した男は払わないんですか?麻薬に手を出し、心臓発作まで起こした上に警察のお世話になることにはなったわけですが、亨とは友人でも顔見知りでもないのにナンか変だと思いました。
亨が借金を取り立てられないと、指を詰めなければならないかもしれないということもあり、亨の身体を傷つけたくない美幸の気持ちはわかります。でも気持ちも通じ合ってるのにそんな建て前いらないと思うんですけど…。
ちょっとスッキリしませんでしたね。
亨は結局そのままヤクザを続けていくわけですが、亨のヤクザとしての仕事は借金を払えない女や男とsexして、それをネタに脅し風俗に送ること。他の誰かとsexすることに美幸はもちろん嫉妬を感じていたし、亨も自分のしていることの非道さに気づいてきたところだったんですが、そのへんの解決もされていませんでしたね。
ちょっといろいろ中途半端で、今後に憂いを残した感じですねぇ~。
弟編はしっとり切ない感じでしたが、こちらはどちらかというとほのぼの系。
刈谷病院は、美幸が継いだ跡は、跡継ぎはできないのでした…。ここも兄弟ホ○決定なので(笑)
そうそう、お話の展開が「対」というか、意識して書かれたそうで二つとも似ています。
弟編は教会、兄編は病院が舞台ですが、「突然現われた男に強姦され」「その男がまた舞い戻り」「度々現れる男の人柄や過去の傷を知り惹かれていく」と、その後も似た展開。ヤクザな男なのに、「教会の信者、病院の看護婦」に受けがいいという状況も同じ。
読む比べると面白いかもしれませんね。
残念ながら、前作は手元にないので私はできませんが(^^ゞ
ヤクザと外科医。
先に出た「罪深き夜の僕(しもべ)」(ヤクザ×神父)とのリンク作で、神父・真紀(まき)の兄・美幸編です。「罪深き~」を読んでいなくても大丈夫。
ラストのSSには前作の二人も登場していますが。
弟の真紀が医師の道を捨て刈谷家を出奔して神父になってから、美幸は父と同じ心臓外科医として医師としての道を歩んでいます。将来的には「刈谷医院」を継ぐことになるだろうけれど、今は大学病院勤め。
弟は優しい控えめなタイプでしたが、兄の美幸は、クールで有能で近寄り難いと周囲に思われるタイプ。
ある夜、CCUを見回ったあと仮眠室で横になった美幸は、いきなり侵入した若い男に犯されてしまいます。
美幸を「みゆきちゃん」と呼び、「彼氏の代わりに借金をかえしてほしい」という話に男の恋人などいない美幸は人違いだと気づきますが、手馴れた男には抵抗も虚しい。
「泣かないで。ひどくなんかしないよ。悦くしてあげるからね」と、いやに優しい男に写真まで撮られ、人違いだと言っても聞く耳を持たない男は、これをバラまかれたくなかったらお金を払ってね、こんなことしたくないけどこれも仕事だからゴメンね、と自分を「広仁会(こうじんかい)の唐沢亨と名乗り、「明日も会える?みゆきちゃんの返事を兄貴に話さないといけないから」と美幸の住むマンションの住所を聞いて去っていきます。
突然男に犯されたことに怒りを覚えつつも、天真爛漫で悩みなどなさそうな亨に何故か心底から怒る気になれず、「馬鹿犬」に噛まれたような心地の美幸。
翌日、自分のマンションに亨が現れ、殴られて目を腫らした様子を見て、人違いだったことがわかって兄貴にしこたま殴られたと聞きます。
しかし、手当てをしてやる美幸に、「ご相談があるんですが…」と亨が言い出したのは、昨夜の嵌め録り写真を「買い取っていただけないでしょうか?」…つまりオドシ。
頭にきて怒鳴りつける美幸に「すみません」と頭を下げるばかりのヤクザの亨。
人違いでひどいことをしてしまったことに罪悪感を感じたらしい亨は、償いに、と料理を作り、美幸が寝ている間に掃除をして、「お前のせいで腰が痛い」という美幸にマッサージまでしてくれます。
そして一日お世話がしたいという亨と過ごすうちに、ヤクザのチンピラな亨の本質が美幸に見えてくるんですね。
どうも最初からヤクザらしからぬヘンな男だったんですが、亨は幸せな家庭で育っておらず、15~6歳からひとりきりで17でヤクザに拾われ、ヤクザ世界の常識を常識として覚え、何の疑問も持たずに、上の言うとおりに使われてしまっているのだとわかります。
亨の取り得は外見とSEXだけと、組からは借金をした女に性技をしこみ風俗に流す仕事を専門にやらされているのですが、自分のしていることに疑問を抱く頭さえ持っていないのです。亨はとても正直で素直で、人懐こく気立てのいい青年で、自分が風俗に落とした女達にも明るく懐いていって慕わせてしまうようなところがあります。
恵まれない生い立ちのせいで、いいことと悪いことの本当の区別もついていない亨を「馬鹿だ」と思いながらも、「可愛い」と思ってしまう美幸。
亨の茶と金色に染めた髪や、まっすぐに見つめてくる茶色の瞳がまるで昔飼っていた愛犬のようで…。
美幸は亨を「ポチ」と呼び、つい世話を焼いてしまうようになります。
美幸はお金を持って帰らないとまた殴られてしまう亨に10万円を渡してやったり、スーツを買ってやります。無知なだけで、そこらの医師よりよっぽど人間が出来ていて可愛げがある亨を磨き上げて、別人のようにいい男にしてやりたいなどと思っちゃったりします。そして、この無垢で子供のような男の魂や、それとは裏腹に均整の取れた逞しい体、プロとして長けた情事の腕を持つ年下の男を傍におきたい…と思うようになるんですね。
亨は確かにほおっておけないタイプですね。ちょっと馬鹿だけどちゃんと躾ければお利口になりそうな犬…って感じで、年上の美幸は「自分の手で育ててみせる…」とハマっちゃってますね(笑)。
美幸が意外に腹の座ったタイプで、脅されてもビクともしないし、亨の気持ちがわからなくても自分は揺らいだりしないところが良かったです。年上の大人って感じがする。
亨に服を買ってやったり、美味しいレストランに連れて行ったり、若い男にハマる年上女みたいだけど、お金があったらやってみたい妙齢の女性は多いだろう(笑)。
亨も馬鹿だけれど飼い主に忠実な可愛いワンコで、頭をグリグリしたくなる、美幸の気持ちもよくわかります。磨けば光る片鱗が見えるとなったら、育てる醍醐味は美味しいですよね。
おおむね楽しく読めましたが、ちょっと引っかかったのは、美幸の背景にある「寂しさ」や「人恋しさ」がいまいち伝わりにくかったのと、そもそもの人違いの原因となった借金「1000万円」を、借金した男ではなく美幸が立て替え、その立て替え分を亨が美幸に返す…という結末になったことです。
借金した男は払わないんですか?麻薬に手を出し、心臓発作まで起こした上に警察のお世話になることにはなったわけですが、亨とは友人でも顔見知りでもないのにナンか変だと思いました。
亨が借金を取り立てられないと、指を詰めなければならないかもしれないということもあり、亨の身体を傷つけたくない美幸の気持ちはわかります。でも気持ちも通じ合ってるのにそんな建て前いらないと思うんですけど…。
ちょっとスッキリしませんでしたね。
亨は結局そのままヤクザを続けていくわけですが、亨のヤクザとしての仕事は借金を払えない女や男とsexして、それをネタに脅し風俗に送ること。他の誰かとsexすることに美幸はもちろん嫉妬を感じていたし、亨も自分のしていることの非道さに気づいてきたところだったんですが、そのへんの解決もされていませんでしたね。
ちょっといろいろ中途半端で、今後に憂いを残した感じですねぇ~。
弟編はしっとり切ない感じでしたが、こちらはどちらかというとほのぼの系。
刈谷病院は、美幸が継いだ跡は、跡継ぎはできないのでした…。ここも兄弟ホ○決定なので(笑)
そうそう、お話の展開が「対」というか、意識して書かれたそうで二つとも似ています。
弟編は教会、兄編は病院が舞台ですが、「突然現われた男に強姦され」「その男がまた舞い戻り」「度々現れる男の人柄や過去の傷を知り惹かれていく」と、その後も似た展開。ヤクザな男なのに、「教会の信者、病院の看護婦」に受けがいいという状況も同じ。
読む比べると面白いかもしれませんね。
残念ながら、前作は手元にないので私はできませんが(^^ゞ
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