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恋について
木原 音瀬著 / 大竹ともイラスト
蒼竜社
ホリーノベルズ(2006.7)


ブライダルコーディネーターの朝霞武史は、初めてプロデュースしたお客様・笹川様に一年ぶりに再会した。
笹川夫婦は、朝霞が結婚式当日に起こしたドジを、笑って許してくれたとても優しいお二人だった。
朝霞は嬉しさと感謝の気持ちを込めて、笹川夫婦の結婚記念日に、お祝いの花束を贈るのだが…。
笹川吉郎(ささがわよしろう・29歳)×朝霞武史(あさかたけし・26歳)

木原作品の「ほのぼの系」です。
痛かったりハードだったりすることはありませんでした。

「恋について」
「恋について2」の二編。

朝霞がブライダルコーディネーターになって初めて担当したのが笹川です。ちょうど一年後、歯医者の受付で二人は偶然再会します。
それ以来顔を合わせるようになり、飲みに行ったり、遊びに行ったりと親しくなっていく。
幸せそうな笹川の様子を嬉しく思った朝霞は、結婚記念日に花束を贈ります。
しかし、実は笹川夫婦の結婚は『偽装結婚』だったということを聞かされるのです。

笹川の妻は「レズビアン」でした。
それが親にばれ、彼女を救うために、以前から彼女を好きだった笹川が世間体をつくろうために結婚を申し出ていたのです。
そうやって夫婦になれば、いつか彼女が自分を振り向いてくれるかもしれないという期待が笹川にはありました。しかし実際、結婚しても妻は笹川と一緒に住むことはせず、親が来る時だけ新居にやってきて、それ以外は同性の恋人と一緒に暮らしてしまいます。
真実を朝霞に打ち明け泣き崩れる笹川。
笹川の妻については深く言及されていないので、突っ込んだコメントはできませんが、非常に自分本位で笹川を傷つけることをなんとも思っていない人…のように書かれ、フォローがあんまりされていません。ホリーの前作での主人公の妻もそうでしたが、女性に関してはわりと冷たい扱いであります(笑)。

そんな笹川を見た朝霞には、同情もあったのかもしれません。親しくなって笹川の人柄を好ましく思っていた朝霞は、笹川を励ますように密な友人つきあいを続けます。
そうしてそばにいるうちに、お互いに惹かれあっていくのですね。

二人はつきあうことになるまでが「恋について」。
つきあうようになっても全然すんなりといかない、紆余曲折が「恋について2」になります。

お互いに相手を好きなのに、ちょっとした誤解や相手を気遣い過ぎたことが、どんどん溝を深めていきます。別に何が起きるわけじゃないのに、ちょっとしたためらいや遠慮が、心に疑念を植えつけていく。
華々しい大袈裟な展開があるのではない分、とても身につまされる、こんなことで擦れ違ってしまうのか、とひとごとではない感じ。
人を好きになると、小さなことを疑ってみたり不安になってみたりいろいろ気になるものですが、嫌われたくなくて言えずに心に不安が溜まっていったりすることがあります。やがて溜まった疑念が「そうに違いない」に心の中で変換されてしまうのね。するとそれが態度に出たり、言葉の棘となって相手にも伝わる。
こういうことで擦れ違っていくのって、明らかな「問題」があるよりもずっと怖い気がします。だって知らないうちにどんどん溝が広がっていくんだものね。

そんな事態になっていく二人が、切ないというか、読んでてジタジタしてしまいます。
ちゃんと誤解が解けたときは心底ホッとしました。
木原さんだから、救いようのない傷つけあいになったらどうしようと、ちょっと怖かったからね(笑)

攻めの笹川は、背は高いけれど人からは「冴えない」と言われてしまうような地味なタイプです。でも優しくて気遣いのできる、聞き上手で穏やかな男。
どこにでもいそうな、気弱で凡庸な男だと思いますが、好きな女性と『偽装結婚』してしまうくらいだし、朝霞に対してもそうだけれど、ある意味「愛に生きる人」ですよね。
ただ、その愛情表現は非常にヘタレ。
妻にも朝霞にも相手を優先しようとし過ぎるし、見当違いの思い込みを重ねてしまう。とても気が弱く、しゃがみ込んで泣いたり、朝霞に初めてキスをして「どうしよう・・・」とつぶやいたりと、「攻め」としては珍しいタイプだと思います。
そういう笹川の心の優しさや傷つきやすさが結構好きでしたし、この「どうしよう」のシーンはカラーにもなっていますが、気持ちが目に見えるようでこっちの胸までキュンと苦しくなる好きなシーンでした。
朝霞にもこのどこまでも優しい人柄は癒しだったし、泣いたりする姿にはほだされ惹かれちゃうんだろうなと思います。
朝霞は好きな仕事に一生懸命で前向きに勉強する意欲があり、クサれば酔っ払って潰れて愚痴もこぼすし、悔しければ泣きもするし、笹川に対して臆病になって引いてしまったり、そして堪えきれずにぶつかっていってみたり、精神的にごく普通の揺れをする、これまたどこにでもいる、安定した人と言う感じです。

特に秀でた才能があるわけでもなく、普通の勤め人の一人暮らしで食事は外食かコンビニ、容姿もごく普通で目立つわけではなく、煌びやかで華やかな設定は全然ない二人なんですが、そんなものは何もなくても、二人の気持ちだけで読ませます。
こういうお話は大好き。

ちゃんと誤解を解いた二人は、嬉しいことに甘々の恋人同士ですよ。ああ、よかった(笑)
「誠心誠意尽くすので…」という笹川の言葉、これ絶対嘘じゃないってわかるので、嬉し恥ずかしい。笹川は愛に関してはとても「濃い」人だと思うから、もう真綿で包むように優しく熱く手取り足取り愛されると思います。「ムッツリなスケベ」だそうですが、実はHシーンがないのが非常に残念。「どんなsexをするんだろう」と朝霞が思う一文がありましたが、それは私も知りたかった。このヘタレがどんなHをするのか…。下世話ですみません。

前作の「箱の中」「檻の外」も名作でしたが、これもまた大好きになりました。イラストもとってもいいです。
内容も読みやすいと思うので、木原さんが苦手なかたにもよろしいと思います。
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