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透過性恋愛装置
かわい 有美子著 / 花本安嗣イラスト
笠倉出版社
クロスノベルズ(2007.5)


若手建築士として注目を浴び、己のルックスにも自信を持っていた北嶋は、とあるコンペでホテルマンの牧田と出会う。
その落ち着いて控えめな物腰を軽んじ、コンペで最優秀賞を逃したことで牧田にいちゃもんをつける北嶋だったが、常に大人の余裕を持つ牧田に諌められ高慢な鼻をへし折られてしまう。
それをきっかけに牧田の人間性に触れ、恋に落ちてしまった北嶋は、思いつく限りの策を弄するのだったが・・・・。
牧田和巳(まきたかずみ・36歳)×北嶋秀司(きたじましゅうじ・31歳)
老舗一流ホテル企画部長×建築士

「上海金魚」のリンク作品です。「上海金魚」が出たのがもうずいぶん前なので、リンク作品が出るとは嬉しい驚きでした。
「上海」の滝乃(たきの・攻め)が北嶋の友人として、水端(みずはし・受け)がもちろんその恋人として登場していますが、そちらを読んでいなくても全然大丈夫です。こちらを読んだあと「上海」が読みたくなるかもしれませんが。

北嶋は雑誌などに顔写真付の記事が載ったりするような、若手ながら優秀な建築士です。見た目も王子様顔のシャレた男ですが、しかし、その性格は悪魔のように悪い。
傲慢、高飛車、自信過剰、毒舌・・・とにかく自己中で態度や言葉を慎むことをしないので、周りからは唖然とした目で見られているし、はっきり言って嫌われている。人を見下すことにも躊躇いがなく、またそれを隠さない、ホントに傍にいて欲しくないタイプの男です。

そんな北嶋が滝乃の薦めで、オテル・ド・エンピール企画の高齢者向け高級マンションのコンペに参加します。とことん奢り高ぶった北嶋は説明会に現われた企画部長・牧田の説明も碌に聞かずに自信満々で設計を提出しますが、結果は最優秀賞ではなくデザイン賞。建築の仕事は他の事務所に取られてしまいます。
そこで黙っていないのがこの北嶋で、北嶋はアポもなしにオテル・ド・エンピールの牧田の元に乗り込み、「これは出来レースだ」といちゃもんをつけてしまうのです。

この辺りまでの北嶋の恥を知らなさと来たら、こっちが恥ずかしくて赤くなりそうです。
しかし対する牧田は、穏やかに、どこまでも大人な対応で、北嶋を傷つけることなく矛を収めさせてしまいます。しかもこの北嶋に「すみませんでした」と頭まで下げさせてしまう。
そして、上っ面や口先だけでない、本当の本物の大人の男である牧田に、そこで北嶋は恋してしまうんですね。

そして牧田に恋してしまった北嶋の行動が、これはまた中学生の乙女のようなんです。自信家で高飛車でどこまでも人を見下した男ですから、これまでの女性とのつきあいが真摯であったわけがありません。
北嶋は初めて、牧田に本当の恋をしてしまうんですね。そして、わざわざ自宅から遠回りまでして、朝、牧田が電車に乗る時間に合わせて駅のホームへ立ち、影から牧田を見つめて胸をときめかす・・・という行動に出るのです。声はかけません。ただ遠くから見つめるだけで幸せ。なんか懐かしいです、この初々しい行動(笑)。
そんな朝がしばらく続いたあと、北嶋は牧田の方から声をかけられてしまいます。北嶋の姿に牧田は気づいていたんですね。舞い上がった北嶋は思わず牧田に「好きです」と言ってしまうのですが、牧田の反応はきっぱりとした拒絶でした。

正直、最初の北嶋には可愛げの欠片も感じられませんので、こんな男に牧田が捕まってしまうのは可哀相じゃないかとか思ってました。
牧田はとことん欠点のない大人の男として書かれていて、優秀なのに腰が低く、気配りもできる優しく穏やかな男。また高身長に素晴らしくガッチリした体格を持ち、その辺りからも、何があってもビクともしない頼りがいと包容力を感じさせます。そして、声が特徴的で、男でも聞けば腰に響く、低音の美声。往年のハリウッド俳優のような厚みのある逞しい体に腰にくる美声とは、どんなものか想像力がたくましくなってしまいました。なんか読んでるだけで相当に素敵っぽいです。
こんな素敵な紳士が、北嶋の魔の手に・・・(笑)と思っていたんですが、牧田に拒絶されたあとの北嶋の心情、また牧田から見る北嶋の様子を読んでいたら、不覚にもジワッときてしまいまして。なんでこれだけで泣けるのかわからないんですけど、フラれた北嶋のいじらしさや傷心につい文字が霞んでしまいました。
そして気づいたんですけど、これこそ「ほだされた」というヤツではないかと。なので、牧田が北嶋にほだされてしまったのが、個人的には非常に納得だったのでした。
恋する牧田に対する態度はともかく、それ以外では口にガムテープでも貼っておきたいようなのは相変わらずですが、牧田がこんな北嶋を操縦できるほどの大人だったことに安心感を感じました。これなら大丈夫でしょう(笑)。
紳士なのにHがいやらしいのが、なんだか凄くいやらしいです(笑)。

大変面白かったです。
これもかなりお気に入りになりましたね。
あ、そうそう、文中にすごく懐かしい言葉があり、印象に残りました。「色気違い」「伊達の薄着」がそれなんですけど、こんな言い回し、物凄く久しぶりに聞きました。今年75になる私の母から○十年も前に聞いて知った言葉ですが、今はほとんど聞きませんよね。作者さまはおいくつなのかしら。


※ちなみに『上海金魚』の感想はこちら
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