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恋獄の獣に愛されて
吉田 珠姫著 / 相下猛イラスト
海王社
ガッシュ文庫(2006.7)


誰にも必要とされていないという思いを抱きながら毎日を送るあさぎは、ある日違う世界へと迷い込んでしまう。
そこで出会ったのは、赤い髪、獣のような体躯を持つ男・ソード。ぶっきらぼうで野蛮な彼は、あさぎへの強い欲望を抑え込みつつも、傷だらけになりながら激しい情熱で、あさぎを魔物から守ってくれる。
初めて自分が自分である意味を見出せたあさぎは、ソードと共に生きたいと願うが、ソードに元の世界へ戻れと突き放されてしまい…。
ソード(年齢不明)×久保田あさぎ(18歳)

異世界、人外ファンタジーです。
鬼と人です。
駄目な人は駄目なんだろーなー。
吉田さんのファンタジー、ガッシュ前作の王と神官に萌えまくったのでこれも期待していたら、ヘタな現代物より、よっぽど切なくて泣けました。

幼い頃、、あさぎはひとけのない神社で、偶然異世界への扉を開けてしまいます。闇の奥にいたのは異形の者たちに襲われる赤い髪の少年。驚いたあさぎは家から日本刀を持ち出し、少年にそれを投げ渡し、叫びます。「それでたたかって!『ソード』だよ、わかる?」
しかしあさぎの記憶はそこでぷっつりと途切れてしまいました。
そして12年後、あさぎは再び異世界への扉を開けてしまい、向こう側へ落ちてしまうのです。

あさぎの家は、父母と弟と妹の5人家族です。しかし、あさぎの存在はとても薄いものでした。幼い頃から「お兄ちゃんだから我慢してね」と言われ続けるうちに、自己主張の激しい弟妹の影で自分を抑え我慢することばかり覚えてしまったあさぎ。あさぎの家族はあさぎが我慢しているということにさえ気づいていません。
4個入りの出来合いのハンバーグを食べる時、あさぎの分はいつもありません。独りだけ違うものを食べるか、外でこっそりとコンビニ弁当を食べるのです。弟妹が買ってもらった携帯電話も「お兄ちゃんはいらないわよね」と言う母に強く言えず買ってもらえませんでした。誕生日も忘れられています。学校でも同じような扱いを受けています。優等生だ、まじめだと先生や友人から言われ、生徒会長をしていますが、それは名を変えた雑用係でした。あさぎの周りには、友人の一人もいなかったんですね。
家にも学校にも居場所がなく、爆発しそうな思いを抱えながら、それでも人を不快にしないように、困らせないようにと振舞うあさぎ。
もうこのエピソードだけで可哀相で泣きそうなんですけど。

異世界に落ちたあさぎは、異形の鬼たちに襲われそうになります。そこに現れあさぎを助けてくれたのは、赤い髪を腰の辺りまで伸ばした2m近い身長の筋骨たくましい男。
彼は「あさぎ」と名前を口にします。そしてあさぎも、彼が12年前に出会った少年だということに気づきます。
彼は自分を「ソード」と名乗ります。それは12年前、あさぎが叫んだ言葉です。腰にはあさぎが渡した日本刀を下げていました。武器を貰い、名を与えられた男は…異世界であさぎのいる世界を守るため、ひとり闘う「鬼王」だったんですね。
12年前に出会ったとき運命は動き始め、あさぎも彼といるうちに、彼に恋をしていることに気づきます。
しかしソードはあさぎのため、あさぎを元の世界に返そうとするのです。

異世界、そこは地獄のような世界です。現実の世界とかけ離れているわけではなく、ひっそりと寄り添うように、または影のように同時に存在していて、何かの拍子に向こう側が見えたり、扉が開いてしまったりします。鬼や魑魅魍魎が跋扈していて、落ちてくる人間は鬼の餌食となるか、水に囲まれた安全な場所で密かに暮らしています。しかしこんな場所で暮らしている人間もすでに正常ではありません。
現実の世界が汚れ、乱れる昨今、二つの世界の狭間は近づいてきて、このままいけば鬼が異世界の側から飛び出してしまいそうな危険をはらんでいます。
あさぎを守るため、あさぎの生きる世界を守るためだけに生きて闘ってきたソードは、あさぎをここに置いておくわけにはいかないと思うのですが、あさぎはこの世界に来て初めて、自分を大事に思い守ってくれる人がいるという経験をします。
あさぎは自分のいた世界を捨てソードと共に生きたいと願いますが、家族に一切の未練を残さないあさぎが納得できてしまうほど、家族のしうちがヒドイんです。弟妹はともかく、父母、特に母の鈍感さは…冷静ではいられないですね、腹が立って。

二人の気持ちがやっと通じ合ったところで、再び偶然にも扉が開いてしまい、ソードはあさぎを無理矢理元の世界へと返してしまいます。しかし、そこからのあさぎは、ソードの元へ戻るため、引っ込み思案な自分を捨てて強く行動します。
結果、あさぎは異世界のソードの元へ戻るのですが…愛する人と幸せになったあさぎをうれしいと思う反面、父母の反応には哀しくなってしまいました。捨てても惜しくないと思えるような両親なんて…悲しいですよね。でも、これがあさぎの自立なのかなと思えば、形が変わっているだけで、誰にでも訪れるものなのかもしれません。

12年前運命のように出会い、お互いを思いながら擦れ違う切なさが胸に迫ります。
いやいや、面白かったです。
鬼というのは、異常に性欲が強いらしくて(笑)、人間の匂いは鬼にとってたまらないそうです。そして鬼は男にしか発情しないというのがなんともBLらしい(笑)。異世界に落ちてきた男はすぐに鬼たちにヤられてしまうんですが、あさぎの匂いに惹き付けられてきた鬼たちはソードが撃退してくれます。しかし、ソードも鬼。
まして、ソードにとってあさぎは特別な存在で、あさぎの匂いはソードを狂わせようとします。非常に激しい欲情を感じつつ、必死で我慢するソードの姿がたいへん萌えでした(笑)。性欲に囚われ、自分を見失ってしまうと、ホントに「獣」のようになってしまうんですよ。セクシーですねぇ(笑)。

異世界で二人で共に闘い、それでも幸せそうな二人の姿は、「エピローグ」で、弟妹の視点で語られます。
欲を言えば第三者でなく、二人の視点で読みたかったかな。
吉田さん、またファンタジー書いて欲しいな~。
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