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イノセンス
砂原 糖子著 / 樹要イラスト
オークラ出版
アイスノベルズ(2005.2)


「好きな人は誰か」と友達に聞かれた睦は、「クルちゃん」と答えた。来栖貴文、睦の同い年の幼馴染だ。
「来栖は男。そういう好きじゃなくて」と言われても、睦には「そういう」がどういう「好き」なのかわからない。
睦が「好き」な沢山の人や物の中でクルちゃんが一番好きだから。
そんな時、来栖が女の子とキスしているところを見てしまった睦は、自分もキスをお願いするが…。
「イノセンス~幼馴染~」
「イノセンス~再会~」
「冬の向日葵」の三編収録されており、「イノセンス~幼馴染~」は
来栖貴文(くるすたかふみ・18歳)×乃々山睦(ののやまむつみ・18歳)、
「イノセンス~再会~」は26歳、「冬の向日葵」は27歳になっています。

家が隣同士で、同じ年で、幼稚園から高校までずっと仲の良かった二人。
幼い頃、なんの躊躇いもなく「好き」だと口に出来た思いは、成長するにつれて意味合いを変えていきます。

睦は、「頭が悪い」です。勉強はまったくできず「バカ」と言われてクラスメートからは嘲笑され遠巻きにされました。
しかし、そんなことよりも大きいのは睦が子供の心のまま成長してしまったことです。身体はごく順当に成長しましたが、彼の心は幼稚園の子供のころと変わりません。養護学校に通うほどではないけれど、ある時の知能テストでは限りなくそのラインに近づき、ある時は平均をクリアする。無邪気な子供そのままの睦は、母が隣家の主婦に、あまりに緩やか過ぎる息子の成長について不安を洩らすほど「普通の人」とは違っていました。
一言でいえば、「純真無垢」というんでしょうね。
可愛いとか子供っぽいとか、そういう「タイプ」の問題ではなくて、そのものなんです。
周りの人からは「そういう」目で見られてしまい、困惑されたり失笑されたり、ある意味とても特異なキャラでした。
高校生になった睦も、そのまま変わりません。勉強の全くできなかった睦はかろうじて工業科という「吹き溜まり」に引っかかりました。勉強ができないというレベルでは周りはみな同じようなものです。
睦の子供っぽさは「バカ」という言葉でも幾分愛情を含んだ意味合いに変わり、睦はそこで友人もできます。
そしてその同じ高校の普通科、こちらは工業科とは違ってレベルは高いんですが、そこに幼馴染の来栖がいます。

幼稚園のころから毎日一緒に通い、遊び、時には奇異な目で見られることのあった睦と変わらずに友人としてつきあってきたのが来栖です。
それは高校に行っても変わることはありませんでしたし、来栖は睦の純真さを可愛く思いこそすれ、おかしいなどと思ったことはないんですね。
やはり「バカ」と言いながらも一向に理解の進まない睦に親身になって勉強を教え、睦を嘲笑するものがいれば、誰であろうと抗議して守ってきました。
睦の成長を不安に思った母は、来栖の母に心配を語り、来栖の母は、「睦ちゃんと仲良くしてね。守ってあげてね」と言っていました。
来栖は二人が同じ世界にいた幼稚園のころからずっと、そうやって睦の傍にいたのです。
しかし、来栖は自分の心の中に、睦に対する邪な想いが芽生えはじめるのを意識します。友人として好きだったはずの気持ちに違うものが混じり始める。
いつまでも変わらない睦とは違って、来栖はごく普通に大人へと成長しており、恋愛や性についても例外ではありません。
しかし、そんな自分を許せない来栖は、睦と離れることを決意します。
「イノセンス~幼馴染~」は、東京の大学に合格した来栖が、睦を駅の改札に置き去りにして去っていくまでのお話です。

「イノセンス~再会~」は文字通りなんと8年後に再会してからのお話。
8年の間、来栖は睦に約束した連絡もとらず、睦への気持ちから逃げていたんですね。

けれど、来栖は決してずるい男ではないんですよね。睦への想いを誤魔化し忘れようとする来栖は、真面目で責任感の強い、同じくらいの年の男にくらべても、ずっとしっかりした男なんです。
だからこそ、穢れのない子供の心のままで、自分を慕い続ける睦を、そういう対象として見てしまう自分が許せなかったし、男同士であること、この関係を選んだあとの先の見えない未来に躊躇せざるを得なかった。
睦の心は「子供」なので、「好き」という気持ちの種類の違いが自分ではわかっていません。「クルちゃんが好き」という気持ちは幼いころからずっと変わっていないのですが、その意味合いは確かに睦の中でも変わっているんです。けれど彼は「恋」という言葉を知りません。
そばにいたい、キスしたい、それはもう友人の域を超えている感情なんですが、わからない睦はそのままを来栖にぶつけてしまう。

自分の気持ちの正体がわからないままに来栖を求める睦と、理性で離れようとするのに心の底で睦を求める来栖。
一途に、必死に来栖を求める睦、お互いを想うが故に離れようとする二人には泣けてしまいます。
「イノセンス~幼馴染~」そして「イノセンス~再会~」の両方に、駅の改札での別れのシーンがあるんですが、どちらも危うく泣きそうになりました。

睦が純真で天真爛漫で無垢であるのはもちろん、来栖もとても純粋なんですよね。大人になるにつれ、世間を知り、世の中の汚さを知って、仕事のために人を利用して、そんな自分が汚くて許せないと思う。そんなふうに思う人はあまりいませんからね。
二人ともなんと傷つきやすく、「イノセンス」であることでしょう。
しかし、来栖が大人になるにつれて、捨ててしまったり忘れてしまったものは、変わらない睦が全て持っていました。穢れを知らない子供の真っ白で真っ直ぐな心は、睦のそばにいればいつでも来栖の元にも同じようにあり続けるものなんですね。

実は、とても感想が書きにくかったんですよね。
睦という特異なキャラ、二人の想い、この繊細なニュアンスは、きっと読んでみないと伝わらないと思ったんです。
とてもいいお話ですよ。
どちらかというと、甘くて切ないお話が好きなかた向けかな。初心者のかたにもいいと思います。H軽いですからね(笑)

砂原さん企画、第五弾でした。
他にも既刊本はあるんですが、残念ながらまだ入手できていません。
なので、砂原さん企画はここでしばらくお休みです。今でも不定期ですけど。
引き続き集めるつもりでおりますので、また入手したあかつきには、いきなり再開します。
その時はまたどうぞよろしく。
来月新刊が出るようですので、そちらも楽しみですね。
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