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華の闇
榎田 尤利著 / 蓮川 愛イラスト
大洋図書
SHYノベルズ(2007.5)


仕事相手である西苑寺に連れられて吉原を訪ねた南条貴師は、そこで四年前、自分の前から突然消えた少年と再会する。
しかし、彼はいまや吉原の奇蹟、吉原唯一の男遊女、華嵐だった!!
過去を忘れ、遊女として振舞う華嵐。
遊女を憎み、嫌う南条だったが、華嵐が見知らぬ男に抱かれる姿を思うと、自分でも抑えることのできない激情に囚われる。
ならばいっそ自分の手で…華嵐の水揚げを決意する南条だったが――。
南条貴師(なんじょうたかし・26歳)×華嵐(からん・17歳)本名・暁芳(あきよし)


榎田さん初の遊郭もの。
よく勉強されたそうで、その成果は十二分に発揮されているように思います。雰囲気あります。

しかし、ストーリーはそれほど新しいものではありません。
遊郭物は、たいていは借金のカタに身売りされた受けを、攻めが身請けするのがゴールというのがほとんどですが、こちらもそういうお話です。
定番ですが、ラストがわかってるというのは、新鮮味はないけど安心感はあると思うのです。

出会いは貴師22歳、暁芳13歳のときで、花魁の子供に生まれた暁芳が母の死後実父に引き取られるも、腹違いの兄に虐待され犯されそうになっているところを貴師が助けたのが始まりです。
その後、本好きの暁芳は貴師に本を貸してもらい、二人の静かな交友が続くのですが、暁芳の父が亡くなり経営手腕も器も持たない兄があとを継いだあと、家は見る見る没落。借金を抱えたあげく、暁芳は兄によって、売られてしまうのです。
貴師はそんな事情は知らずにいたのですが、四年後、取引のある西苑寺(さいおんじ)とのつきあいで吉原に連れて行かれた貴師は、そこで『華嵐』と名乗る遊女となっていた暁芳と再会します。

貴師の父は花魁と心中し、それを気に病んだ母も亡くなるという事情から貴師は遊女を憎んでいました。自分の前から突然消えたこと、そして遊女になったという事実への怒りで華嵐に詰め寄る貴師。
華嵐はまだ水揚げ前で、客を取る身ではなかったのですが、その水揚げは西苑寺がすることになっていました。
華嵐が他の男に抱かれるということに自分でもわけのわからない焦燥に駆られた貴師は、西苑寺に頼み込んで、華嵐の水揚げの権利を譲ってもらうのですが、西苑寺からは、水揚げと同時に一週間を買い切る『お仕舞い』と言われるかたちを取るように言われます。『お仕舞い』は水揚げ後も一週間は、その相手以外の客は取らず、水揚げをした男が遊女をを一人前に育てるための七日間なんですね。

貴師が暁芳に閨の手解きをする7日間とはなかなかイロっぽい設定なわけですが、この『お仕舞い』という仕来りは初めて知りました。鈴木あみさんの遊郭シリーズを読んでいたので、独特の言葉の意味や読み方はすんなり入ってきて、役に立ちました(笑)。
この7日間を丁寧に追っていって、7日過ぎには身請けしてしまうのかな~と思ったらそうじゃなかったんですね(笑) 途中をすっ飛ばされてしまいました…。

全体的には、「普通に面白い」という感じでしょうか。榎田さんなので、初遊郭と言ってもそれはお上手に書いていらっしゃいますが、正直他の遊郭ものとそれほど変わらないと思いました。
雪の中での貴師の不器用な告白に、ちょっとジーンとしました。
ラストの締め方が榎田さんらしいような気がします。
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