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棘の住み処
棘の住み処魚谷 しおり著 / 笹生コーイチ画

心交社
ショコラノベルスハイパー 2006-06-10



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中津川子爵の後継者として育てられた養子の公也は、子爵に妾腹がいることを知らされ、その子・響を弟として屋敷に向迎え入れることになる。人形めいた美しさの公也と違い、響は父に似た男らしい容貌の若者だった。
父の前では素直な青年を演じてみせた響だが、公也と二人きりになると豹変し、嫡子の地位と引き換えに身体を差し出すよう命じてくる。
何不自由なく生きてきた公也を、それ故の美しさを響は憎んでいた。
跡継ぎとしての自分にしか価値を見出せない公也は、蔑みながらも、義弟である響に抱かれることを選ぶが―。
増口響(ますぐちひびく・20歳)×中津川公也(なかつがわきみなり・25歳)

大正設定、舞台は子爵のお屋敷です。
兄弟ではありますが、血は全く繋がってません。

子宝に恵まれなかった中津川子爵・仁之(さねゆき)は、妻の妹の子供・公也を5歳の時に跡継ぎとして養子に迎えます。それから20年、生家と関わりを絶ち、跡取りとしての教育を受けて生きてきた公也。
しかし実は仁之には妾がいて、病に倒れた彼は、その妾との間に生まれていた響を、突然家へと迎え入れてしまいます。

この時代、妾はそう珍しいものではなかったようですが、仁之の本妻はプライドが高く、その存在を許しませんでした。なので響の母は仁之と別れさせられ、気丈だった彼女は一切の援助も断り、また響を身ごもったことも告げることなく、接触を立って暮らしてきました。
しかし、響が7歳になったとき、仁之だけはその存在を知らされていました。その後妻は亡くなり、自分も病に倒れ、気の弱った仁之は、これまでの償いをしたいと考え響を呼んだわけです。

養子となっていた公也は中津川家に入ったものの、父となった仁之は公也には無関心でした。母も公也を中津川家に相応しい教育を施すことに熱心で、大変厳しく冷たい人でした。5歳だった公也は、二人から愛情を受けることは全くなく、実の両親とも疎遠になり誰からも愛情を与えられることもなく育ちます。
そして公也は、子爵家を繁栄させ保っていくこと、そのために自分は養子となり、自分の存在意義は、それだけにしかないと思うようになります。そうすることで自分の価値を見出し、また義父にも認められ、愛してもらえるかもしれないと思いつめていたんですね。

しかし血の繋がった響が現われ、仁之が公也には全く見せたことのない笑顔を浮かべ慈愛に満ちた目で響を眺めるのを目撃します。これほどまで中津川家のために頑張ってきた自分が得られなかったものを、血が繋がっているというだけで、一瞬で手にした響。
公也の心には、憎しみと嫉妬が生まれます。
しかし響の方も、実の父である仁之、裕福に育った公也、中津川家に関わるものを憎んでいました。自分の母が仁之の援助を拒んでいたということを知らない響は、仁之が自分と母をゴミのように捨てたと思っています。華族である中津川家と芸者で庶民だった母。この時代両者には大きな隔たりがあり、母子家庭で苦労して育った響は、中津川家も、そして裕福に何不自由なく育った美しい公也を、苦労知らずの象徴として憎んでいるんですね。

出会ったときから、お互いを憎む理由があって、しかも公也の場合は切ないんですよね。欲しかった愛は与えられず、それでも家のために必死になって仕事をし守ってきたというのに、響は父の愛を一瞬にして受け、しかも母からも、また芸者たちからも可愛がられて、お金はなく貧しかったものの、愛だけはたっぷりと持っていた。なのに、中津川家に現われたとたん、「跡継ぎ」として公也が築いてきたもの全てを取り上げようとしている。
自分の存在価値をかけたものを失わせることになる男を、好意的になど見られるはずもない。大切なものはもう中津川家でやってきた仕事だけで、それを守るために、自分の居場所のために、公也は身体を差し出さざるを得ない。

公也にとってはかなり辛い状況なのですが、実は響は中津川家になんの興味もありません。本当は実父に会って、恨みつらみをぶつけて帰ってくるつもりだった。
しかしそこで会った公也が…美しく、けれどその美しさが憎らしく、そしてまた公也の方も響に好意的になる理由がないわけなので、二人の心の中にある本音を分かり合うことができません。

響は、公也の美しさにひと目で心を奪われてしまったんですが、公也の態度は冷淡で(当たり前なのだけど)、響が出ていくことを望んでいるのがあからさまに見える。
また公也はこう言っちゃなんですが、嗜虐心をそそるタイプなんですよ(笑)
陶器のような肌に整った顔をした人形のような美貌を持ち、どことなく冷たくて硬質で気品がある。感情を表に出さない冷淡な公也を、屈服させ、啼かせて見たら、そのあまりの淫靡さに…20歳のぼっちゃんがどうなるか、決まってますよね(笑)
中津川家には何の未練もないけれど、自分が家を出ていけば華族である公也と庶民の自分は二度と会えない。公也のそばにいるためには中津川の家に留まるしかないけれど、公也にとって響の存在は「邪魔者」で態度も冷たい。
公也がどうしても欲しい響は、「邪魔者」としてでも中津川家に居座り、「身体だけでも」と公也を自由にしようとしてしまう。

なんとなく響の公也への気持ちはわかるんですが、二人の間にはどうしようもない溝があって、擦れ違い、誤解はどんどん深くなっていきます。
そして公也がとうとう全てを響に渡し、家を出て行くことを決めたとき、響もまた、公也の本当の辛さを知って家を出てしまう。わかりあえたとたん、この仕打ち(笑)。

切ないというのではないんですが、お互いへの気持ちだけではどうにもならない柵の中で擦れ違っていく関係というのが、なんか良かったです。二人の背景や、そこから生まれる思いとかがしっかり伝わってくるので、ただ意地張ってたりする擦れ違いとは違う、「運命のもつれ」みたいなのが感じられて萌えでした。
響は二十歳でもあるので、余裕のなさとか周りを見ようとしないところとか、やはりまだこれからの青年なんですが、若さならではの感情の突っ走る様とかは、この年齢、「年下攻」ならではという気がしますね。
公也は、響に組み伏せられると身体は堕ちてしまうわけですが、気持ちや普段の態度はホントに凛として硬質で、そうあろうとする意地も感じられるし、穢されても汚れないプライドや美しさが見え、ただ言いなりになる弱々しいタイプではないのがいいです。そしてただ硬いだけでなく、本当は辛さ、寂しさをいっぱい抱えてて、それでも一人で頑張ってきたというのがね。
私としては、いろいろ好みだったですね。

面白かったです。
ハイパーなので「またヤるのか」というくらいHもいっぱいでした。
そうそう、跡継ぎ同士でデキあがっちゃった中津川家の行方ですが、開きなおった公也がいろいろ画策してますので大丈夫みたい。有能な男は知恵も働く。
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