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シンプル・イメージ
砂原 糖子著 / 円陣闇丸イラスト
オークラ出版
アイスノベルズ (2003.8)


海沿いの町で一人暮らしを始めた浅名は、コンビニでバイトをしている男・永倉に声をかけられる。なれなれしく、陽気で明るい永倉は、浅名にとってひどく苦手な存在だった。
だが人懐こい笑顔と人のいい性格に、片思いに疲れ、独りの時間を求めていた浅名の頑なな心も次第に溶け、お互い惹かれあうようになるが…。
永倉航(ながくらこう)×浅名千晶(あさなちあき)

「砂原さんの過去本」第4弾は13歳年下攻めです。
砂原さんの初めてのノベルズは「純愛ナルシスト」ですが、「シンプル・イメージ」は『小説アイス新人大賞期待賞』に入選した投稿作品で、実質的に砂原さんのデビュー作ということになります。

ノベルズ化にあたって加筆修正されたとは書いてないんですが、とても丁寧で、ハッとする心理描写はこの頃からのものだったんですね。
「シンプル・イメージ」雑誌掲載
「シンプル・イメージ2」書き下ろしの二編です。


長い間片思いしていた同僚で友人の砥綿(とわた)の結婚を機に、勤めていた広告代理店を辞め、都心から2時間ほど離れた海辺の町に越してきた浅名。会社勤め時代にライターとして仕事をしてきた縁で、今はフリーのコピーライターとして細々と仕事を請けながら生活しています。
秘めた想いを無理矢理抑え込み都心を離れた浅名は、知人友人との接触も嫌って毎日を独りで過ごす日々。昼頃に起きて、食事はコンビニ弁当で済ませ、少ない仕事をする以外は、ただぼんやりと抜け殻のような一日を過ごしています。

そんな生活が四ヶ月ほど続いたある日、いつも行くコンビニで、背の高い、とても綺麗な顔をした若い男の店員になれなれしく話しかけられます。不躾な会話に、戸惑い憮然とする浅名。
しかし、その男・永倉と早朝の海で再び会い、永倉の明るく屈託のない様子や会話に、浅名は久しぶりに笑顔を誘われます。そしてそれ以来、朝の海で、偶然出会った帰り道で、浅名は永倉と話をするようになっていきます。

失恋の痛みのせいで、全てが煩わしく面倒に感じるようになり、世間から心を閉ざしていた浅名の中に、明るく無邪気で快活で、時に強引で無遠慮なのに実は優しく気づかいすることのできる永倉が、どんどん入り込んでいきます。
浅名の中で永倉の存在はどんどん大きくなり、生活はそれほど変わらないけれど、周りを見る自分の目がどんどん変わっていく。色や活気を失った世界に色がつき、笑顔を取り戻す。
浅名と永倉が肉体的に結ばれるまでには特別なことがあるわけではなく、ただ一緒に過ごす日々があるだけです。それでも永倉の存在が大きくなっていくのがわかるのは、やはり上手さかな~と思います。

そして、もちろんそのままスンナリといくわけではなく、浅名の片思いの相手・砥綿のことや、永倉が年齢を偽り、家の事情を黙っていたことが二人の間に擦れ違いを起こします。
嫉妬や、年齢差、将来への不安など、それ自体は幾多のBLで生じる問題ですが、とても丁寧に書かれているおかげで、二人の心の物語を十分堪能することができたと思いました。

長い片思いに終止符をうち、不安を乗り越えて、二人の想いがしっかりと結びつくまでのお話です。
ラブコメディ、シリアス、ときて、こちらは静かで丁寧に書かれた、「シンプル」で、王道のラブストーリー。
やはり時折「あ、この描写すごく好き」という箇所があるんですよね。
今回は、浅名が買って砥綿が気に入っていたというソファに関する浅名の想いと、見慣れぬスーツを着た永倉の背中を見て浅名が感じる気持ち。あー、これってわかるーと胸に染み入ると同時に、浅名の気持ちが凄く伝わってきて、とても好きなところでした。
生きていれば複雑な問題や出来事はたくさんあるけれど、心の中には一番シンプルな「幸せのかたち」「愛のかたち」を思い描き、何かあってもそれを大切に、乗り越えて、二人で一緒に生きていこう、タイトルはそんなメッセージかな?と思います。
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