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波瀾万丈で行こう!
池戸 裕子著 / 宮本 果林イラスト
コスミック出版
セシル文庫(2006.6)


長瀬修司が野村文央にひと目ぼれしたのは大学一年の春。六年間口説きに口説き、同じ会社にまで就職してやっと手に入れた。
だがベッドを共にしたのは一夜限りで、呆然とする長瀬を残し、野村はあっさりニューヨークへ転勤してしまう。
そして一年。やっと帰ってきたと思ったら、なんと金髪で青い目の逞しい男を引き連れていて!?
長瀬修司(はせしゅうじ)×野村文央(のむらふみお)
同い年で、多分26歳くらいから28歳くらいの間のお話。

「登場編」「東京編」「大阪編」と三編になっていますが、話は全部続いています。
池戸さんの初期の作品、新書で発行されたものを大幅修正したものだそうです。


6年間片思いの末、やっと手に入れたと思った野村がニューヨークに転勤してしまい、こちらがほおっておいたら手紙も電話も寄こさないつれない恋人を嘆く長瀬の前に、突然二週間の予定で野村が帰ってきます。
その後、野村がニューヨークから再び正式に東京に戻ってからが「東京編」。
野村は一人の金髪の男を伴っていて、そのアメリカ人・クリスは、なんと野村を狙っていると。
ようやく愛する恋人が近くに戻ってきてくれたと思ったのに、これが長瀬の波瀾の日々の始まりでした。

長瀬は、大学一年になったばかりのとき野村にひと目惚れしてからずっと、野村を口説き続けてきました。好きだ、愛してると言い続け、鬱陶しがられている気がしないでもありませんでしたが、そんなことにはめげず、それこそ野村を助けるためなら泳げないのに海に飛び込むくらい命懸けで求愛。
野村のあとを追い同じ自動車メーカーに就職し、長年の想いがやっと実って野村を抱くことができた。

明るく誠実で真っ直ぐな長瀬の一途な純愛が、ときに面白おかしく、ときに切なく語られていてなかなか面白かったです。
長瀬の野村への想いは一直線で、涙ぐましいほど一直線です。
しかし野村の方は…。野村はクールなトラウマ持ちのぶきっちょ美人(笑)。よくあることですが、自分の素直な想いを外に出すのが苦手な人です。
本当に一途に野村を想う長瀬への冷たい仕打ちと言ったら…攻びいきの私はカチンときてしまいますよ(笑)。
しかし本を投げる気にならないのは、長瀬の前向きさ、明るさが気持ちいいくらいで、また彼のそういういい面が周りを惹きつけ、誰もが彼を好きになり応援する、そういう気持ちにこちらも自然になれたからだと思います。

当て馬として登場したクリスも、野村狙いだったはずなのに、長瀬の真っ直ぐで一生懸命恋する姿をみるうちに、なんと長瀬のことが好きになってしまいます。「花嫁にして連れて帰る」とまで言い出す。攻が後ろを狙われるという自体も単純に可笑しかったです。
冷たい受や、恋路を邪魔する当て馬に泣かされる攻は多いんですが、この本では攻の方がやたらと好かれてしまいます。
クリスもそうですし、やはり大学時代からの知り合いで同期の女性もそうだし、途中で出てくる大企業の御曹司も長瀬に恋をします。やはり野村狙いだった上司も長瀬に食指を動かされていましたっけ。
周りをそんなふうに思わせてしまう長瀬の魅力は十分伝わってきたと思います。
それに正直言うと、モテる受にやきもきさせられる攻の図より、攻がモテてくれた方が、私には好ましいのです。そういう意味でもツボだった。

野村は感情を表に出さず、なかなか本心が見えてきません。長瀬を受け入れて置きながら、抱き合いながらも躊躇するようなところが見えて、いったいどういうつもりでいるのかちょっと首を傾げるとこともあります。
でも、周りが語る野村の様子から、野村が決して長瀬を拒否しているのではないことは感じられます。
長瀬じゃないとだめなのに、何故素直になれないのか。後半になると野村の気持ちがわかるんですが、理由は幾多のトラウマ持ち美人と同じですね(笑)。
だいたい想像はつくので、長瀬がどんなに虐げられても(笑)安心して読めるということかも。

長瀬の恋の苦労だけでなく、仕事で成長していく面も、うまく絡んでいます。
本当はデザイナーを目指したかった長瀬は、野村を追って自分の夢とは違う会社に就職しました。
「夢は捨てない限りいつでも追うことができるが、野村は負い続けない限り手に入らなかった」
後悔もしていないし、それは長瀬の意志だったんですが、ラストでは長瀬も自分の本当の夢を追っていくことを決心します。
恋だけでなく、男が仕事をするという意味に、周りとの様々な関わりや野村との恋で気づいていく、そういうところもちゃんと書かれていて良かったです。

自分の本気を示すためには三階から飛び降りてしまう(笑)熱血だけれど、爽やかで一途な長瀬は、たいへん好感度も高く、お話も笑いありしんみりありでとてもスピーディー。
面白かったです。
もともと同人誌で書かれたものだということでしたが、なんとなくそんな雰囲気があるかもしれない。
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