イラスト/秋森びびか
奥多摩でのデート以降も、庭中と上芝のシナリオデートは続いていた。無表情の庭中が自分をどう思っているか、上芝にはわからない。
一方、上芝に恋していることに気づいてしまった庭中は、芝居を続けることが辛くなっていた。しかし連載が終われば会えなくなる。
自分のラブストーリーをどう進めてよいかわからない庭中は、最後のシナリオを書くが…。
一方、上芝に恋していることに気づいてしまった庭中は、芝居を続けることが辛くなっていた。しかし連載が終われば会えなくなる。
自分のラブストーリーをどう進めてよいかわからない庭中は、最後のシナリオを書くが…。
上芝駿一(かみしばしゅんいち・25歳)×庭中真尋(にわなかまひろ・29歳)
「ラブストーリーで会いましょう 下」
「恋人で会いましょう」
「ラブストーリー依存症」の三編。
前回、上芝への恋心を自覚したものの、二人の誤解は解けぬまま。表面上は編集と作家として仕事はしているものの、庭中の連載も終わりが近づき、「終わったらもう会えない」とお互いジリジリしています。
しかし、好評な庭中の小説は、また続けて別の作品も雑誌に載せることになりますが、上芝は現在の連載を最後に入社時から希望していたネイチャー系雑誌の編集部に異動が決まってしまいます。
それを自分の口から庭中に伝えたい、庭中の反応に少しでも自分への特別な好意の欠片でも見えないものか…と庭中の家を訪ねる上芝ですが、庭中はすでに編集長から聞いていて「知っていた」と言う。
そして「君がいなくなったら、次の担当がつくだけだ」と言われてしまいます。
その通りなんですが、庭中は意地を張ってるわけでもなく素直じゃないわけでもないんですよね。ここまで読んでいれば、庭中がどういう人物なのかはよくわかっているので、ただ事実を述べただけだと言うことは理解できる。それは今までの庭中がいつもそうだったからおかしなことではないんです。
けれど庭中は上芝に初めての恋をしていて、その恋に対する対処方が全くわかっていないので、これでは言葉が足りないということには全然気づかない。しかも庭中も上芝が自分を仕事相手としか見ていないと思っているし、元々ネイチャー系に行きたがっていたことを知っているので、引き止めるようなことも言えない。
それを聞いた上芝は、やはり「仕事」だけだったんだと意気消沈…。ああ、じれったい(笑)
そして残り少ないシナリオデートで、庭中のために、せめてもと完璧に「青年実業家」を演じ甘い言葉を口にする上芝に、上芝自身に惹かれ「上芝」に会うことが楽しみになっていた庭中は虚しさを感じ、この茶番に耐えられなくなってしまいます。
そしてとうとう「もうやめる。もう会わなくていい」と言ってしまう。
しかも、「君にあってももう何も浮かばない」とまで。
自分の書いた小説のヒロインはラストのハッピーエンドに向けて幸せを感じていくのに、自分は叶わない恋に胸が苦しくなるばかりで…と本音はそれなんですが、言葉が足りな過ぎるー!
「上芝」に会いたくて、「上芝」の本当の気持ちを聞きたいのに、上芝がシナリオの青年実業家の顔をして、自分じゃない「ヒロイン」に甘い言葉を囁くことに耐えられなくなり、庭中はその場から逃げ去ってしまいます。ああ・・・。
上芝はとても誠実でいい男ですが、ちょっとお行儀が良すぎなんですよね(笑)。やはりお坊ちゃん気質なんだなぁー。
強引に力ずくでもこっちを向かせてやるという押しの強さはなく、庭中の言葉を額面どおりに受け取って唖然となり、「はぁ~」とためいきをついてしまい、それでも気になって会いにいくんだけど、やはりお行儀はいいまま(笑)。
もうちょっとわかってやれよと思わないでもないですが、そもそも庭中は誤解を呼ぶ男だしねぇ。
それでも、「もう君にシナリオは送らない。もう会わない」という庭中にまた会いにいき、不在だったものの、「もう一度デートしてください。ずっとシナリオ待っています」と諦めずにメモを残してくれたおかげで、また会うことができるわけです。
二人の気持ちがやっと通じ合うシーン、庭中のつたないけれど一生懸命な告白は、ホントに可愛い。
庭中はとても複雑な男なんですが、その微妙な性格をとてもうまく書いていて、ホントに面白可愛い魅力的な人物となっています。
ツンデレとはちょっと違っていて、ツンツンに加えて、天然、素直、不器用、毒舌、すっとぼけ、襲い受…など(笑)、いろんな要素が混じっていて、とても可愛らしい。
初めての恋や慣れない感情の揺れに不器用さを曝け出していますが、もともといいことも悪いこともストレートに物を言うタイプで、変に素直なので、恋が成就すると凄いです(笑)。
上芝もタジタジになるほど積極的。
“好きと告げて受け入れられたら触ってもいいのだと思っていた”
ちょっと待って、という上芝に、
「君は、添い遂げると決めるまでは貞操を守りたい男なのか?」
「性格は変化球なのに、言葉だけ直球」と上芝が言ってますが、この絶妙な可愛らしさは読むとすぐに伝わってきます。
このお話の面白さは、やはり庭中の魅力だと思います。
「恋人で会いましょう」は庭中のベタ惚れ加減とピントのズレっぷりが相変わらず不器用で可愛らしく、ベタ甘の恋人同士となっています。
何にでも予定をたてる病は、だいぶ良くなりましたが、完全には治ってないんですよね。
「デート」という言葉に心ときめき、デートするからには最後はベッドイン…と自分の中で予定を立てていますが、二人で動物園に行ったあと、そのあとの予定を尋ねる庭中に「食事してドライブして帰りましょう」と上芝は言う。
「そうか。ドライブして帰るのか」
言葉どおりに受け取った庭中は、急に機嫌が悪くなります。
なんだ、帰るのか…。
「そうか、ドライブして帰るのか」と話の途中でまた口に出す(笑)。
不満なんだよね、したかったんだよね(笑)。
だけど、「食事してドライブして、そのあとHしましょう」って普通言わないですよね(笑) 慣れていないというか、ニュアンスがわからないというか、やはり予定病が治ってないというか、上芝の今日の予定に「H」は入ってないと不機嫌になる、この庭中がまた凄く可愛いです。
急にムスッとして口数が減り、なのに不満紛れにテーブルの下で上芝の足に自分の足を絡ませ、まるで拗ねて誘ってるかのようなことまでしてしまいます。
“誘われてるのかと思ったら、顔はふて腐れた子供みたいに睨んできて、これは新種の嫌がらせか”と思ってしまう朴念仁な上芝も可笑しい。
「朝から風呂に入った。僕は期待していたのかもしれないな。久しぶりのデートだから、きっと君とセックスするものだと…君が予定に入れてないなんて思わなかったんだ。悪かったよ」
庭中の本音がわかったら上芝鼻の下伸びちゃってます。
そりゃ、こんなに可愛いこと仏頂面で不器用に言われたら、たまらんでしょうなぁ。
「ラブストーリー依存症」は別カップルのお話です。
庭中の家の隣のボロアパートに住む、庭中曰く「ホモ男」(笑)。名前は八川照巳(はちかわてるみ)。
本編では、庭中の恋のアドバイザー(?)となってくれていて、庭中の恋愛小説を「バイブル」と崇めるファンでもあります。
庭中の本で恋愛を学んだ八川が、庭中に恋を伝授する、不思議な関係。
上芝に対しても、いいことを言ってくれました。
「上げ膳喰わぬは男の恥っていうけど、喰い散らかして残す方がみっともないっての」
「・・・据え膳だろう?」
いいやつなんですけど、こういうとこ多々あるのね(笑) でも言ってることは正しいですよね。
しょっちゅう庭中の家の前の路上で男と修羅場を演じたていて、ふられっぱなしでも恋をせずにいられない、一見明るい能天気なタイプですが、実はかなり純粋な青年。
こちらもとても誠実な男・三角(みすみ)と恋人になることができて、良かったなーと思います。三角の職業「看護士」が、ちょっと萌えでいいですねぇ(笑)
甘い言葉は一切言わない、そっけない三角ですが、飾らない変わりに、一見キツい言葉でも本当のことしか言わないから、信じられる男のように思えます。
甘言や戯言で彩る表面だけのつきあいではなく、こういう人なら喧嘩しても上手くやっていけるんじゃないかな。
「《最近とっても気になる砂原さんの過去本も読んでみよう》企画第一弾(不定期)」でしたが、期待どおり大変面白く、楽しんで読みました。
実はこれ近所の小さな古本屋で上下巻並んでいたのを買いました。あそこに売ってくれたひと、ありがとう。
「ラブストーリーで会いましょう 下」
「恋人で会いましょう」
「ラブストーリー依存症」の三編。
前回、上芝への恋心を自覚したものの、二人の誤解は解けぬまま。表面上は編集と作家として仕事はしているものの、庭中の連載も終わりが近づき、「終わったらもう会えない」とお互いジリジリしています。
しかし、好評な庭中の小説は、また続けて別の作品も雑誌に載せることになりますが、上芝は現在の連載を最後に入社時から希望していたネイチャー系雑誌の編集部に異動が決まってしまいます。
それを自分の口から庭中に伝えたい、庭中の反応に少しでも自分への特別な好意の欠片でも見えないものか…と庭中の家を訪ねる上芝ですが、庭中はすでに編集長から聞いていて「知っていた」と言う。
そして「君がいなくなったら、次の担当がつくだけだ」と言われてしまいます。
その通りなんですが、庭中は意地を張ってるわけでもなく素直じゃないわけでもないんですよね。ここまで読んでいれば、庭中がどういう人物なのかはよくわかっているので、ただ事実を述べただけだと言うことは理解できる。それは今までの庭中がいつもそうだったからおかしなことではないんです。
けれど庭中は上芝に初めての恋をしていて、その恋に対する対処方が全くわかっていないので、これでは言葉が足りないということには全然気づかない。しかも庭中も上芝が自分を仕事相手としか見ていないと思っているし、元々ネイチャー系に行きたがっていたことを知っているので、引き止めるようなことも言えない。
それを聞いた上芝は、やはり「仕事」だけだったんだと意気消沈…。ああ、じれったい(笑)
そして残り少ないシナリオデートで、庭中のために、せめてもと完璧に「青年実業家」を演じ甘い言葉を口にする上芝に、上芝自身に惹かれ「上芝」に会うことが楽しみになっていた庭中は虚しさを感じ、この茶番に耐えられなくなってしまいます。
そしてとうとう「もうやめる。もう会わなくていい」と言ってしまう。
しかも、「君にあってももう何も浮かばない」とまで。
自分の書いた小説のヒロインはラストのハッピーエンドに向けて幸せを感じていくのに、自分は叶わない恋に胸が苦しくなるばかりで…と本音はそれなんですが、言葉が足りな過ぎるー!
「上芝」に会いたくて、「上芝」の本当の気持ちを聞きたいのに、上芝がシナリオの青年実業家の顔をして、自分じゃない「ヒロイン」に甘い言葉を囁くことに耐えられなくなり、庭中はその場から逃げ去ってしまいます。ああ・・・。
上芝はとても誠実でいい男ですが、ちょっとお行儀が良すぎなんですよね(笑)。やはりお坊ちゃん気質なんだなぁー。
強引に力ずくでもこっちを向かせてやるという押しの強さはなく、庭中の言葉を額面どおりに受け取って唖然となり、「はぁ~」とためいきをついてしまい、それでも気になって会いにいくんだけど、やはりお行儀はいいまま(笑)。
もうちょっとわかってやれよと思わないでもないですが、そもそも庭中は誤解を呼ぶ男だしねぇ。
それでも、「もう君にシナリオは送らない。もう会わない」という庭中にまた会いにいき、不在だったものの、「もう一度デートしてください。ずっとシナリオ待っています」と諦めずにメモを残してくれたおかげで、また会うことができるわけです。
二人の気持ちがやっと通じ合うシーン、庭中のつたないけれど一生懸命な告白は、ホントに可愛い。
庭中はとても複雑な男なんですが、その微妙な性格をとてもうまく書いていて、ホントに面白可愛い魅力的な人物となっています。
ツンデレとはちょっと違っていて、ツンツンに加えて、天然、素直、不器用、毒舌、すっとぼけ、襲い受…など(笑)、いろんな要素が混じっていて、とても可愛らしい。
初めての恋や慣れない感情の揺れに不器用さを曝け出していますが、もともといいことも悪いこともストレートに物を言うタイプで、変に素直なので、恋が成就すると凄いです(笑)。
上芝もタジタジになるほど積極的。
“好きと告げて受け入れられたら触ってもいいのだと思っていた”
ちょっと待って、という上芝に、
「君は、添い遂げると決めるまでは貞操を守りたい男なのか?」
「性格は変化球なのに、言葉だけ直球」と上芝が言ってますが、この絶妙な可愛らしさは読むとすぐに伝わってきます。
このお話の面白さは、やはり庭中の魅力だと思います。
「恋人で会いましょう」は庭中のベタ惚れ加減とピントのズレっぷりが相変わらず不器用で可愛らしく、ベタ甘の恋人同士となっています。
何にでも予定をたてる病は、だいぶ良くなりましたが、完全には治ってないんですよね。
「デート」という言葉に心ときめき、デートするからには最後はベッドイン…と自分の中で予定を立てていますが、二人で動物園に行ったあと、そのあとの予定を尋ねる庭中に「食事してドライブして帰りましょう」と上芝は言う。
「そうか。ドライブして帰るのか」
言葉どおりに受け取った庭中は、急に機嫌が悪くなります。
なんだ、帰るのか…。
「そうか、ドライブして帰るのか」と話の途中でまた口に出す(笑)。
不満なんだよね、したかったんだよね(笑)。
だけど、「食事してドライブして、そのあとHしましょう」って普通言わないですよね(笑) 慣れていないというか、ニュアンスがわからないというか、やはり予定病が治ってないというか、上芝の今日の予定に「H」は入ってないと不機嫌になる、この庭中がまた凄く可愛いです。
急にムスッとして口数が減り、なのに不満紛れにテーブルの下で上芝の足に自分の足を絡ませ、まるで拗ねて誘ってるかのようなことまでしてしまいます。
“誘われてるのかと思ったら、顔はふて腐れた子供みたいに睨んできて、これは新種の嫌がらせか”と思ってしまう朴念仁な上芝も可笑しい。
「朝から風呂に入った。僕は期待していたのかもしれないな。久しぶりのデートだから、きっと君とセックスするものだと…君が予定に入れてないなんて思わなかったんだ。悪かったよ」
庭中の本音がわかったら上芝鼻の下伸びちゃってます。
そりゃ、こんなに可愛いこと仏頂面で不器用に言われたら、たまらんでしょうなぁ。
「ラブストーリー依存症」は別カップルのお話です。
庭中の家の隣のボロアパートに住む、庭中曰く「ホモ男」(笑)。名前は八川照巳(はちかわてるみ)。
本編では、庭中の恋のアドバイザー(?)となってくれていて、庭中の恋愛小説を「バイブル」と崇めるファンでもあります。
庭中の本で恋愛を学んだ八川が、庭中に恋を伝授する、不思議な関係。
上芝に対しても、いいことを言ってくれました。
「上げ膳喰わぬは男の恥っていうけど、喰い散らかして残す方がみっともないっての」
「・・・据え膳だろう?」
いいやつなんですけど、こういうとこ多々あるのね(笑) でも言ってることは正しいですよね。
しょっちゅう庭中の家の前の路上で男と修羅場を演じたていて、ふられっぱなしでも恋をせずにいられない、一見明るい能天気なタイプですが、実はかなり純粋な青年。
こちらもとても誠実な男・三角(みすみ)と恋人になることができて、良かったなーと思います。三角の職業「看護士」が、ちょっと萌えでいいですねぇ(笑)
甘い言葉は一切言わない、そっけない三角ですが、飾らない変わりに、一見キツい言葉でも本当のことしか言わないから、信じられる男のように思えます。
甘言や戯言で彩る表面だけのつきあいではなく、こういう人なら喧嘩しても上手くやっていけるんじゃないかな。
「《最近とっても気になる砂原さんの過去本も読んでみよう》企画第一弾(不定期)」でしたが、期待どおり大変面白く、楽しんで読みました。
実はこれ近所の小さな古本屋で上下巻並んでいたのを買いました。あそこに売ってくれたひと、ありがとう。
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