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イラスト/紺野キタ

18歳の笹尾実影が学校にも行かず、ひきこもりになったのは中学のころのいじめが原因だった。
ある日、実影が心の拠り所にしているアーティストが好きということで、姉に同僚の藍川修一を紹介される。
藍川は端正な顔立ちに似合わず穏やかな男だった。藍川といるのが楽しい…そう思い始めた実影は、やがて藍川に恋をしているのだと気づき―。
藍川修一(あいかわしゅういち・26歳)×笹尾実影(ささおみかげ・18歳)

「さよならヘヴン」
「ONCE A DAY」の二編収録。

中学時代のひどいいじめによって登校できなくなり、以来人と関わることさえ怖くなって引きこもりとなってしまった実影。もう5年間もそんな生活が続いています。
ひきこもりと言っても姉と母とはなんとか会話できるので「対人恐怖症」のひどいもの…という感じもします。母と姉と自分と家の中、それ以外を実影は「外」と呼び、「外」は怖くて自分を嘲笑したり攻撃したりする敵だと思っています。
昼夜逆転の生活となり、部屋に籠ってTVを見たり本を読んだり、そして大好きなバンド・エデン(かなりマイナー)のCDをヘッドフォンで聴くだけの日々。

そんなある日、姉の同僚である藍川が実影の家にやってきます。
驚く実影ですが、なぜか藍川には初対面から恐怖を感じません。藍川がやはり「エデン」を好きだと聞き、話さえ弾んでしまう。
そしてこの藍川は、実影をすこしずつ天国のように安全な自分の殻から「外」へと連れ出していきます。

藍川はとても穏やかで優しく、実影の抱えている問題についても変に深刻になることもなく、かといって無視するでもなく自然にそれを受け入れてくれています。

実影も藍川の電話や誘いを楽しみにし、「外」は怖いけれど藍川に会いたい思いの方が強く一生懸命自分を叱咤して外へ出て行きます。そしてやがて藍川への恋心が芽生えていく。
しかし藍川には7年つきあい3年前に突然亡くなった忘れられない恋人がいました。実影はショックを受けますが、藍川は今の実影にとってたった一人の友人でもあり、恋は叶わなくても傍にいるだけでいい、近くにいたいと思います。
心配しなくても藍川もちゃんと実影を好きになってるんですけどね。

「ひきこもり」と言う設定上、受の性格は大変消極的で後ろ向きです。
そういう状態から行きつ戻りつしながら成長していくお話なので、それを暖かく見られるかどうかで受け取り方が変わるような気がします。
内に籠った思考が続くため、読み物として単純に、ついていけるかどうかという意味ですが。

そうかと言って暗いということではなく、優しい視線が感じられるお話です。
藍川の実影への接し方が、とてもいい感じでしたね。
無理強いせず、変に励ましたり説教したりするでもなく。

こういう状態の人が家にいるときは暖かく見守った方がいいんでしょうか、叱咤した方がいいんでしょうか。
実影は「外」が怖いというだけで(他人や他人の溢れる場所)、まだ母や姉と会話はできるしカウンセリングにもなんとか通えるので(役に立ってるようには思えないけど)、状態によって違うんでしょうけど。
実影の姉・よしのはかなり荒療治なタイプだと思いますが、こういう場合の対応の仕方の方が気になってしまった。
いずれにしてもこうなってしまった原因であるいじめには胸が痛みます。
お話の本筋とは違うところでいろいろ考えてしまいました。子持ちのせいでしょうか。

ラストで二人は結ばれてますけど、この状況で「いきなりか?!」と思わないでもなかったです。
それまでの穏やかな藍川にはそぐわないような速攻ですね(笑) 
Hなしってわけにもいかなかったんでしょうが…。

「ONCE A DAY」はその後のラブラブさがうかがえるお話。
実影はアルバイトもできるようになりました。
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