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イラスト/金ひかる

喧嘩したホストの金崎新二を介抱してくれた津久井康文は、穏やかな男だった。
ゲイだと聞き、なぜか強引に新二は津久井と寝た。「金のためだ」と金を貰いながらも、すっきりはしない。
時々痛いものを見るような眼差しで津久井は新二を見つめる。津久井への胸の苦しくなるこの感情は一体何なのか…?
苛立つ新二は!?
津久井康文(つくいやすふみ・32歳)×金崎新二(かねざきしんじ・26歳)
空間デザイナーとホスト。

「夜明けには好きと言って」の番外編です。
前作のカップルもチラッと出ていたり(本当にチラッと)経緯もちょっとだけ出てきましたが、問題なくこれだけで読めます。

酔って喧嘩をして雪の中倒れこんでいた新二を助けたのが津久井です。気を失った新二は津久井のマンションに運ばれますが、津久井がゲイだと知った新二はそれをネタに強請ってやろうと、後日津久井を呼び出します。

新二は顔や身体に多数のピアス、腕や指にはアクセサリーをジャラジャラとつけ髪は金髪。中学卒業後、家出同然に家を飛び出し18からホストとして働いています。
乱暴で捻くれていて、新二には良心の欠片も感じられない。家庭に恵まれず、父から暴力を受けていましたが、母には助けてもらえず、家には金もなく高校など仮に行きたかったとしても行かせてもらえるような環境ではありませんでした。そんな中でどんどんグレて荒んでいって、新二は、このまま行ったらどこかで警察のお世話になったでしょうね。
全身につけられたピアスは外へと向ける威嚇か武装のように思えますが、自損行為にも繋がっているような気がしてとても痛々しい感じがします。
絵に描いたような転落の人生がそこまで見えているような新二ですが、津久井と出会ったことで彼は救われたんですね。

津久井は新二が「キリン」と評したように背が高く、まさに草食動物を思わせる穏やかな人物です。新二がどんなに凄んでも口汚いことを言っても、脅してもまったく怯まない。飄々としているわけではなくて、津久井もまた心の深い部分に傷を抱えていて、だから新二の本当の痛みもわかったのかもしれません。
何を言っても今まで自分の周りにいた人間たちのように怯えたり蔑んだり無視したりせず、穏やかに微笑んでいる津久井に調子を狂わせられながらも、少しずつ新二は心を許していきます。
津久井がただの優しい男ではないことは、奥に秘めた火がチラッと垣間見える場面でわかりますね。はっきりと表に出るわけではなく穏やかなのは変わらないけれど、津久井をそうさせたこれまでの経験や思いに想像を馳せるとなんかちょっと深くていいですね。「大人の男」だから新二を受け止めて包容してるわけではないと思うんですよ。痛みがわかるから、そういう風になれるんだと思います。優しくしてあげたいと思えるんだろうなと。
新二と津久井が初めて会ったとき、気を失う寸前の新二がつぶやいた一言が、それまで生きてきた新二の思いの集約だったんだと思います。
伝えたくても伝えられなかった、心の叫びだった。
それを聞いた津久井は、外見からは想像もできない、そして新二自身も気づいていない本当の心の奥が見通せてしまったのかもしれませんね。だから受け止めてあげたかったのかもしれません。

前作では新二はあまりいい役回りではなかったんですよね。
新二の話にリクエストがあったわけでもないそうで、誰も望んでいないのにすみません~と仰っておられますが、前作を見る限りそりゃそうだろうと思います。ただのイジメっ子でしたし。
ですがこのお話はとてもよかったです。
書いてくれて良かったなと思います。
黒石と白坂(前作カップル)そして新二は、同じ故郷でそれぞれ辛い時期を過ごし、東京でそれぞれが一人もがいて足掻いてそして幸せになれたというのが…そう考えるとなんだか感無量でございます。


砂原糖子さんは個人的に最近特に注目してる作家さんで、過去本もいろいろ探してます。
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