イラスト/佐々成美
大学三年生の有村瞭司は、レポート提出に訪れた研究室で驚きの光景を目にする。
消極的で地味な同学年の堀井譲が、眠る教授の手に愛しげに頬を寄せていたのだ。
教授への想いを知られ動揺する譲は、なんでもするから黙っていてほしいと懇願する。
以来、譲は有村の「奴隷」となるが、いつしか二人は身体の関係を持つようになり…。
消極的で地味な同学年の堀井譲が、眠る教授の手に愛しげに頬を寄せていたのだ。
教授への想いを知られ動揺する譲は、なんでもするから黙っていてほしいと懇願する。
以来、譲は有村の「奴隷」となるが、いつしか二人は身体の関係を持つようになり…。
有村瞭司(ありむらりょうじ)×堀井譲(ほりいゆずる)
大学三年生同士。
「微熱の引力」
「キスの温度」の二編収録されています。
いきさつは↑を見て下さいね(笑)。
「奴隷」と言ったって他愛も無いもので講義の代弁をするとかノートを見せてやるとか、混雑する学食ですぐに売り切れてしまう人気NO.1の定食を買い、席を確保しておくとか…。有村のアルバイトするバーで人手が足りなくなり譲も借り出されたりして、学校外での接触も増えていきます。
所詮そんな程度であったものが、ある日譲が酒に酔って歩けなくなったのを仕方なく有村が家に連れ帰ったことがきっかけで、まあ寝てしまうわけです。そしてそれからは身体の関係も密になっていく。
高校時代から二人は同じ学校の同級生でしたが性質は正反対です。
有村は背は高く顔は精悍な男前でスポーツもできるし女にももてるしアルバイトでも仕事はソツなくこなし、いわゆる目立つタイプ。自信家で傲慢で人を見下し、女はとっかえひっかえ、そういうところを何とかしろと周りから言われても鼻で笑っている。こういう鼻が天まで高くなっちゃった傲慢な男をイメージする言葉を思い浮かべたらほとんど全て当てはまる、大変にいけすかない男です。
すでに読まれたかたの中にも、有村の後ろ頭を叩きたくなったり、背中に飛び蹴りを食らわせたくなった人は少なくないと思います。
反対に譲は身体も細く、性格も消極的で目立たず、服装も地味というよりやぼったい、いわゆる「ダサい」タイプ。おそらく高校時代も教室の隅っこで大人しくしていてクラスの輪に入ったり注目されたりすることなどまずない。一応髪を切って黒ブチ眼鏡をコンタクトにしたら意外にも整った綺麗な顔というお約束はありますが(笑)
こういう譲を有村のような人間がどう思うかは押して知るべし。トロくてダサくてオドオドしているのに苛つき、見下して馬鹿にし嘲笑するに決まっています。そして有村の譲に対する態度は正にその通りです。
以前、水無月さららさんの「オトコにつまずくお年頃」でも、いただけない攻がいましたが、有村はあんなもんじゃないですね。見た目はカッコ良くても性格は最悪です。
「微熱の引力」は有村側の視点で書かれていて、彼の傲慢さや自分勝手な思考など眉を顰めたくなるほどよく伝わってきます。
しかし譲に捕らわれていくと同時にわけのわからない苛立ちが生じ始める。弱った時には無意識に甘えてしまったりもします。馬鹿にしてるのに気になってしかたがない。譲が逆らわないのをいいことに、自分のアパートから帰ることも許さず好き勝手に抱きつぶし、眠る時は抱きしめて眠る。
もうとっくに惚れちゃってるじゃんと思うのに、有村はそれでもふんぞり返った何様気質から抜けられずにいます。「俺があいつに惚れるなんて、そんな馬鹿なことあるわけない」とでも言いましょうか。
しかし有村にもとうとう天罰が(笑)
譲の秘密を知ってから多くの時間を一緒に過ごし何度も抱いてきたのに、譲の心に住んでいるのは自分ではなく、ずっと教授だったことを知り、その胸の痛みに初めて自分の気持ちを認めます。
認めたとたんに失恋したのと同じ。
初めて、欲しいと思ったものが絶対に手に入らない苦しさを知った有村は最後には見下していた相手に膝を折るような形になります。
この辺りが個人的にはとってもいいんですよね。そうでなくっちゃというか(笑)。凄く萌えを感じるんです。
「微熱の引力」はそこまでなんですが、そこではまだ譲に受け入れてもらえない。
「キスの温度」がその後になり、視点は譲へと変わります。
しかし、ここまでは傲慢な男に振り回されて翻弄されてしまった儚いイメージの譲でしたが、実はそうでもないんです(笑)。
このひとはなんというか、ボーッとしてるというか流され体質というか、日和見主義というか。
一応自分の考えは持っているんですが、凡庸で目立つところのない譲は、出来のいい兄と比べられてがっかりされたり、父、兄の両方から言わば落ち零れ扱いされてきたせいで、いつもうつむきがちで、またゲイであるということを自覚しているため余計に目立ったり、はみ出すことを避けようとして、黙って状況に流されていこうとするところがあります。人と違う意見を言って反対したり逆らったりして波風を立てるよりは流されているほうが、穏やかで楽ですから。
だけど有村の奴隷になることも身体を好きにされることも、自分を犠牲にしてとか、まして脅されて言いなりになんていう感覚は全くなく、「全然厭じゃなかった」というその心理はちょっと理解しがたかったかなぁ。
きっかけは自分が言い出したものの、なんとな~くポヤ~ッと、いつものように人の言うとおりにしてるうちに有村という激しい嵐に巻き込まれ、時々凪いだように優しくなったり、また揺さぶられたりするうちに気持ちよくなってった…という感じなのかしら(笑)
こういう消極的な自分からは何もアクションを起こさないようなタイプの譲が、やはり有村への想いを自覚して変わるんですよね。
自分勝手で高慢な有村が相手を思いやって引いたり優しくしたり届かない想いに苦しんだりして変わるように、流されるばかりだった譲も自分の想いを素直に出すことが出来るように変わっていくお話なんですが、どちらかというと有村の方が、変わり様が明快でわかりやすい。
こういう自己中で高慢な男が、鼻で笑って見下していた相手にいつのまにやら本気になり、今までの悪行の報いを受けてしっぺ返しを喰らい、苦しんで落ち込んで反省して、今度は恥も外聞も捨てて必死に追いかける側に廻る。
私はこういう展開が大好き。
そして期待どおりだったので、個人的に満足の一冊でした。
残念なのは誤植なのかなんなのか、明らかな間違いや変な日本語がいっぱいあったこと。
大学三年生同士。
「微熱の引力」
「キスの温度」の二編収録されています。
いきさつは↑を見て下さいね(笑)。
「奴隷」と言ったって他愛も無いもので講義の代弁をするとかノートを見せてやるとか、混雑する学食ですぐに売り切れてしまう人気NO.1の定食を買い、席を確保しておくとか…。有村のアルバイトするバーで人手が足りなくなり譲も借り出されたりして、学校外での接触も増えていきます。
所詮そんな程度であったものが、ある日譲が酒に酔って歩けなくなったのを仕方なく有村が家に連れ帰ったことがきっかけで、まあ寝てしまうわけです。そしてそれからは身体の関係も密になっていく。
高校時代から二人は同じ学校の同級生でしたが性質は正反対です。
有村は背は高く顔は精悍な男前でスポーツもできるし女にももてるしアルバイトでも仕事はソツなくこなし、いわゆる目立つタイプ。自信家で傲慢で人を見下し、女はとっかえひっかえ、そういうところを何とかしろと周りから言われても鼻で笑っている。こういう鼻が天まで高くなっちゃった傲慢な男をイメージする言葉を思い浮かべたらほとんど全て当てはまる、大変にいけすかない男です。
すでに読まれたかたの中にも、有村の後ろ頭を叩きたくなったり、背中に飛び蹴りを食らわせたくなった人は少なくないと思います。
反対に譲は身体も細く、性格も消極的で目立たず、服装も地味というよりやぼったい、いわゆる「ダサい」タイプ。おそらく高校時代も教室の隅っこで大人しくしていてクラスの輪に入ったり注目されたりすることなどまずない。一応髪を切って黒ブチ眼鏡をコンタクトにしたら意外にも整った綺麗な顔というお約束はありますが(笑)
こういう譲を有村のような人間がどう思うかは押して知るべし。トロくてダサくてオドオドしているのに苛つき、見下して馬鹿にし嘲笑するに決まっています。そして有村の譲に対する態度は正にその通りです。
以前、水無月さららさんの「オトコにつまずくお年頃」でも、いただけない攻がいましたが、有村はあんなもんじゃないですね。見た目はカッコ良くても性格は最悪です。
「微熱の引力」は有村側の視点で書かれていて、彼の傲慢さや自分勝手な思考など眉を顰めたくなるほどよく伝わってきます。
しかし譲に捕らわれていくと同時にわけのわからない苛立ちが生じ始める。弱った時には無意識に甘えてしまったりもします。馬鹿にしてるのに気になってしかたがない。譲が逆らわないのをいいことに、自分のアパートから帰ることも許さず好き勝手に抱きつぶし、眠る時は抱きしめて眠る。
もうとっくに惚れちゃってるじゃんと思うのに、有村はそれでもふんぞり返った何様気質から抜けられずにいます。「俺があいつに惚れるなんて、そんな馬鹿なことあるわけない」とでも言いましょうか。
しかし有村にもとうとう天罰が(笑)
譲の秘密を知ってから多くの時間を一緒に過ごし何度も抱いてきたのに、譲の心に住んでいるのは自分ではなく、ずっと教授だったことを知り、その胸の痛みに初めて自分の気持ちを認めます。
認めたとたんに失恋したのと同じ。
初めて、欲しいと思ったものが絶対に手に入らない苦しさを知った有村は最後には見下していた相手に膝を折るような形になります。
この辺りが個人的にはとってもいいんですよね。そうでなくっちゃというか(笑)。凄く萌えを感じるんです。
「微熱の引力」はそこまでなんですが、そこではまだ譲に受け入れてもらえない。
「キスの温度」がその後になり、視点は譲へと変わります。
しかし、ここまでは傲慢な男に振り回されて翻弄されてしまった儚いイメージの譲でしたが、実はそうでもないんです(笑)。
このひとはなんというか、ボーッとしてるというか流され体質というか、日和見主義というか。
一応自分の考えは持っているんですが、凡庸で目立つところのない譲は、出来のいい兄と比べられてがっかりされたり、父、兄の両方から言わば落ち零れ扱いされてきたせいで、いつもうつむきがちで、またゲイであるということを自覚しているため余計に目立ったり、はみ出すことを避けようとして、黙って状況に流されていこうとするところがあります。人と違う意見を言って反対したり逆らったりして波風を立てるよりは流されているほうが、穏やかで楽ですから。
だけど有村の奴隷になることも身体を好きにされることも、自分を犠牲にしてとか、まして脅されて言いなりになんていう感覚は全くなく、「全然厭じゃなかった」というその心理はちょっと理解しがたかったかなぁ。
きっかけは自分が言い出したものの、なんとな~くポヤ~ッと、いつものように人の言うとおりにしてるうちに有村という激しい嵐に巻き込まれ、時々凪いだように優しくなったり、また揺さぶられたりするうちに気持ちよくなってった…という感じなのかしら(笑)
こういう消極的な自分からは何もアクションを起こさないようなタイプの譲が、やはり有村への想いを自覚して変わるんですよね。
自分勝手で高慢な有村が相手を思いやって引いたり優しくしたり届かない想いに苦しんだりして変わるように、流されるばかりだった譲も自分の想いを素直に出すことが出来るように変わっていくお話なんですが、どちらかというと有村の方が、変わり様が明快でわかりやすい。
こういう自己中で高慢な男が、鼻で笑って見下していた相手にいつのまにやら本気になり、今までの悪行の報いを受けてしっぺ返しを喰らい、苦しんで落ち込んで反省して、今度は恥も外聞も捨てて必死に追いかける側に廻る。
私はこういう展開が大好き。
そして期待どおりだったので、個人的に満足の一冊でした。
残念なのは誤植なのかなんなのか、明らかな間違いや変な日本語がいっぱいあったこと。
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