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蜜のように毒のように
杏野 朝水著
アルルノベルス(2006.4)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/佐々木久美子

わかば保育園の保育士・岬は6年ぶりに野性的で傲慢な世界的カメラマン・鬼頭と再会する。
かつて10代の自分を夢中にさせて淫らな快楽を教え込み、簡単に捨てた人。けれど鬼頭は昔のままの大らかさで岬に話しかけてくる。
心から愛していたからこそ、岬は踏みにじられた悔しさを隠せない。
そして今度は自分が彼を翻弄するために、期間限定の恋人契約を持ちかけて―!?
鬼頭雅之(きとうまさゆき・40前後だと思われる)×西島岬(にしじまみさき・23歳)

佐々木さんの描かれる鬼頭が若々しいので年齢にびっくりしましたが、読み終わってみると岬の成長物語でもあり、それを見つめる大人としてこの年齢は妥当と思えました。

「蜜のように毒のように」
「願うように、祈るように。」
「羽のように光のように」の三編収録されています。

岬が17歳のとき、父の友人として家に招かれていた鬼頭。あるきっかけで岬は鬼頭と寝てしまい、初めての恋と快楽を教えてくれた鬼頭に岬は夢中になります。
世界を飛び回るカメラマンの鬼頭が離れていってしまうのではないかと不安だった岬は、それこそ全身全霊で鬼頭にしがみつくような恋をしますが、1ヵ月後、鬼頭は仕事で海外へと行ってしまい、岬は捨てられてしまいます。
そして6年後、岬の勤める保育園で帰国していた鬼頭と再会。鬼頭は妹の出産入院の間、甥の送り迎えと世話を頼まれていたのです。
岬の心の中にはまだ鬼頭への想いは消えずに残っていましたが、同時に自分を簡単に捨てていった鬼頭に悔しさや恨みも感じていました。
今度は自分が翻弄して捨ててやる。そう思った岬は、鬼頭が甥の世話をする間、自分もそれを手伝う代わりに恋人になってくれ、と頼みます。

17歳の岬は、ホントに子供だったんですね。
年の離れた大人の男に初めての恋をして夢中になり、相手のそばにいることしか考えていませんでした。ちょうどその頃の鬼頭はカメラマンの仕事が軌道に乗り始めたところだったし、また世界のどんな場所にでも出かけていく仕事柄一定の場所に長くいることもなく、危険も伴うため特定の恋人は作らないことにしていました。
そんな風に自分から鬼頭を遠ざけてしまうカメラマンという仕事さえ、岬は嫌っていて知ろうともしていなかった。
捨てられた悔しさと行き場の無くなった想いを抱え続けて、再会した時も岬はそのまま成長していません。
仕返ししてやるとつぶやいても、どう見ても岬は鬼頭に溺れ過ぎていて太刀打ちできるとは思えない。鬼頭の方が余裕があり、遊び慣れているように思えるんですね。年齢も年齢ですから落ち着きの違いは当然で、子供が大人にいくらぶつかっていっても跳ね返されるのが目に見えるようだ(笑)

ところが、お話の中で岬はもの凄く成長します。
それまで知ろうとしなかった鬼頭の映し出す世界を目にして、その大きさに感嘆し、鬼頭という人間を本当に理解することができるようになる。世界を駆けずり回る彼のことを、一瞬を切り取るようにシャッターを押す鬼頭の思いを知って初めて、彼の全てや、彼が自分を捨てていった意味も理解する。それまでの自分がいかに相手に縋りつくことしか考えていなかったかに気づきます。素晴らしい世界を造り出す鬼頭を縛り付けることの愚かさに気づく。
そして岬は、鬼頭を忘れることはできないけれど、自分からはもう会いに行ったり連絡したりしないと鬼頭に告げます。鬼頭の仕事を妨げたくないし、自分は鬼頭に負けないように自分の仕事や生活を頑張っていく。恨んだりしないし待ったりもしない。もう会えなくても、あなたに会えてよかった、愛してると言うんですね。いっそ清清しいほどの成長ぶりは、あっぱれでございます。

そして鬼頭の方はどうだったかというと、年の離れたお子様に、6年前鬼頭も夢中になってしまっていたんですね。
しかし、先に書いたように危険な仕事で恋人を悲しませることがあるやもしれず、仕事が軌道に乗っていたこともあり、鬼頭は岬を自分から切り離そうとしました。鬼頭だけを見て、鬼頭だけを想い、鬼頭だけが全てでしがみついてきた岬の存在は仕事に全力で臨みたい鬼頭には重荷でもあった。そして自分も岬にどんどん本気になってしまい、恋に溺れて仕事に影響するのが怖かった。
岬を愛しはしたものの、岬は子供であり将来もあるし、自分のことに引き摺るには岬は未熟過ぎたし、その全てを受け止める自信もなかったんだと思います。
再会したときも岬の「仕返し」につきあいながら、自分は忘れられなくても岬には今度こそ忘れさせてやるつもりだったんです。ずるいと言えばずるいけれど、それまでの岬を見れば、ここまで年の離れた大人としては、そう考えても仕方がないというか、それが筋のように思える。

しかし岬の成長を見て、鬼頭はとうとう本心を打ち明けます。鬼頭の負けです(笑)。
鬼頭の全てを受け止め、たとえ二度と会えなくても愛していると言えるほど強くなった岬。そんな岬に、鬼頭もやっと正直になれたんでしょう。
離れていても、たとえ自分が死んでも、岬なら大丈夫。
だから気楽だというのではなくて、自分の愛をぶつけてもいいのだ、何があっても受け止めてくれるのだ、大丈夫なんだと信じられたんだと思います。
そんなふうに思える相手、自分を理解してくれた相手は鬼頭にとって初めてでもありました。そこまで鬼頭に思わせることが出来るようになるなんて…岬の最初の子供っぽさから考えると感激ですらあった。

そして「願うように、祈るように」では、自分が仕事で日本を離れている間も生活の中に嬉しさや楽しさを見出し幸せに生きている岬を見て戸惑う鬼頭が見られます。成長して大人になっていく岬が頼もしく、ちょっぴり寂しくもある。いつも自分のうしろを追いかけてきた岬がいつのまにか肩を並べて軽やかに歩き、うかうかしていると追い越されそうな気さえする。
離れた場所で、それぞれ相手を想いながら、自分の仕事や生活の中で成長していく二人。
「羽のように光のように」では二人はとうとう同居します。

岬なら、ただ帰りを待ちわびるだけでなく、いきいきと自分の生活を送っていけるでしょうし、鬼頭も愛を知り優しさや暖かさを知って、彼の写真にもそれまでにない良い変化を齎すでしょう。

帰る場所を持ったこと、帰る場所になれたこと。
岬の成長が、鬼頭にも変化をもたらし、お互い大切な存在になっていくことに直結してるのがいい。ただ甘い恋人なだけじゃなく、きっとこれからももっといい関係になっていけると思える。

岬はどんどん強くなり大人になって、ますます綺麗になるだろうし、鬼頭はどんどん甘いオヤジになっていきそうです。
なかなか面白かったです。
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