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花の檻
華藤 えれな著
幻冬舎コミックス (2006.3)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/佐々木久美子(リンクスロマンス)

男との醜聞で二年前に故郷の京都を追われ東京に移り住んでいた美貌の能楽師・左近。だがある日京都に呼び戻され、宗家の息子の橘平と舞うことになる。
こうして再び京都で舞台を踏むことになった左近だが、凛々しく成長していた橘平に「子供のことからあなたを手に入れることだけを考えてきた」と身体を求められる。
二年前の事件で恋人を失い、心がうつろな左近は、請われるままに身体を許すようになるが―。
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鳳城橘平(ほうじょうきっぺい・17歳)×室崎左近(むろさきさこん・27歳)

「花隠れ」とのリンク作品です。
前作に登場した左近は東京に移り住んでいた時の彼なんですね。
そこから呼び戻されたあとがこれになります。
タイトルに「花」とあるようにどちらも「花」とそして能の演目がお話に上手く絡んでいます。
前作は百日紅、今回の花は定家蔓。

「花の檻」雑誌掲載
「花の影」書き下ろし の二編収録されています。

二年前、男との醜聞で刃傷沙汰を起こし、鳳城流からしばらく京都から離れるように言い渡された左近は東京で暮らしていました。しかし、鳳城流宗家のひとり息子・橘平の襲名舞台で一緒に踊るよう言われ左近は再び京都に戻ってきます。幼い頃から知っていた橘平ですが、京都を離れる時に見た橘平の舞台「白鷺」の鷺のように清浄で美しかった少年は17歳となり、凛とした逞しい青年になっていました。
舞台に向けて演目を練習する二人ですが白く穢れを知らないような青年の瞳には、まるでそぐわない昏い光があることに左近は気づきます。そしてある日、橘平から「あなたを俺にください」と言われ、恋人を失ったあとまるで骸のような心を抱えていた左近は、橘平の鷺のような白い翼を自分が穢すことに暗い喜びを覚え、「好きになさい」と彼を受け入れてしまいます。

二人の恋には様々な障害があります。
年上で男同士であることは勿論、鳳城流の宗家の座を巡っての鳳城家と室崎家の争いや思惑にも巻き込まれ翻弄されている。
左近は現在の宗家の妹の子供で、橘平とは従兄弟にあたります。宗家に子供が生まれなかったため、ゆくゆくは左近が宗家の養子となり跡を継ぐはずでした。その未来に向かって宗家も左近を教育していたのですが、そこへ橘平が産まれます。宗家が自分の子供を持ったため左近は必要なくなり、それどころか左近の実力は鳳城家を揺るがす邪魔者のような存在になってしまうんですね。
跡目に関して左近はなんの執着もないのに、左近の宗家襲名により本家の座を手に入れようとしていた室崎家の長兄は、橘平の襲名を邪魔するため左近を引き込もうとします。また二年前左近が起こした事件も、実は宗家が左近を遠ざけるために画策したという噂もある。
左近の立場は橘平のためにならないもので、だからこそ好きになってはいけなかった、と左近は悩みます。しかし橘平の方も自分が生まれたことで左近を傷つけてしまったという思いがあります。「生まれなければ良かった」と、自分が生まれなければ左近は幸せになれたという思い、それが橘平という真っ直ぐな青年の中に闇を生んでいるような気がします。

年下の男の一途で真っ直ぐな想いで慕うところもあるんですけど、その底に流れる暗い情念がただの年下攻めとはちょっと違いますね。年上の男を真っ直ぐに恋慕いながら、それこそ定家蔓のように相手を絡め取って閉じ込めても自分のものにしたいという強く昏いドロドロしたものが橘平の底にある。
鳳城流宗家として生きることが決まっているという特殊な環境にいるせいなのか17歳という年齢よりずっと橘平の言動は大人びています。17歳とはとても思えないんですが、それでもまだ世俗に染まらない凛とした白さ、清潔さがある。そういうところからはやはり若さとか年下らしさを感じるんだけど、一途さを持ちながら、恋に身を焼く怨念のような情愛が橘平の中にあることが感じられて、そのギャップをがなんだかとても良かったんですよね。たいへん萌えでして(笑)。昨日も征司郎のギャップに萌えてた気がするので、きっと私はギャップ萌えなのね。
舞台が京都であり、能という古くからある日本的な世界でもあるし、そういう和風設定にはこういう粘着質(笑)な思いはとても合うと思う。
そして相手のために命を捨てても、という想いは左近も同じなので、情の交わしあいがとても濃いものになっている。
お話全体も前作よりこちらの方がおとなっぽく淫靡な感じです。

書き下ろしは、お互いの想いを打ち明けあって心が通じたあとの二人なんですが、通じたはずなのに左近はまだ迷ってるんですね。
通じたと言ってもやはり自分が橘平とつきあうということは宗家の血が絶たれるということで、その重さはリーマンとは違う(笑)。前作のようにすでに子供がいるなどという「救い」はこのお話にはありません。

橘平の将来を考えるのはよくわかるけれど、橘平にとっての自分を余りに小さく評価したり、そのせいで橘平を信じられなくて嘘をついたりするのは、この期に及んで…というか、書き下ろしで雑誌分と同じような想いを繰り返されたのにはちょっとノれなかったですかね…。いろんな問題があることを考慮しても。
どちらかと言えば儚いタイプの受なので、突然前向きに気丈になれと言っても無理は無理だけど(笑)。
ただ、橘平を諦めさせるために、いまだに自分のことを想ってくれている昔の恋人を利用してしまうのはあんまり筋の通った行動とは思えなかったです。その後、ラストでは開き直っていましたので、もうちょっと開き直りが早かったら良かったのにとか思ったりして。

雑誌掲載分では、実はちょっと左近の気持ちが切なくて後半泣いてしまいました。
切ないお話でもめったに泣かないんですが、これは久しぶりにキちゃいまして。
私としては雑誌分だけで十分満足でありました。
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