イラスト/山岸ほくと(リンクスロマンス)
朝、目が覚めて耳に届く雨音に、志水は深いため息をつく。
容姿、頭脳、人柄と揃い、30歳で課長と順風漫歩な人生を歩む彼だが、どうしても克服できない欠点があった。
それは「雨男」だということ…。
入社式の司会を務める日、雨の中鬱々と出社した志水は、高校時代の宿敵「晴れ男」の泉と再会する。中途採用で転職してきたという泉を、以前と変わらず疎ましく思う志水。
けれど「晴れ男」を利用することを思いつき、泉を自分の部下に据えるが―!?
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こりゃまた古い本ですみません。
志水雅也(しみずまさや・30歳)×泉秋紀(いずみあきのり・30歳)
「晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽」
「晴れ男の困惑 雨男の疑惑」の二編収録されています。
容姿・頭脳・人柄に恵まれ30にして「課長」と異例の出世をして何の悩みもないかのような志水。しかし志水は子供の頃から「雨男」であることに散々悩まされてきました。
その雨男ぶりは半端ではなく、とにかく幼少の頃友達と遊ぶことから始まって、家族との旅行、小中高大の学校行事、社会人になってからは大事な接待ゴルフから屋外での仕事、とにかくイベントに志水が参加すれば100%雨が降る…という筋金入り。
幼い頃は「まーくんと遊ぶとぜったい雨が降るからヤダ!」と言われるし、家族からも恨まれるし、学校では友人に文句を言われるし、また友人との旅行にも誘ってもらえない。
自分ではどうにもできないのに周りからこんな扱いを受けていたらひねくれてしまいそうですが、志水は「雨男」であることを跳ね返そうと、誰にも文句は言わせないと勉強スポーツ仕事に頑張り、何をやっても人より秀でたいい男となったわけです。
そんな真っ直ぐな志水ですから不幸な体質(?)はあるとしても、彼の気質に惹かれる友人は多く、信望も厚い。
そんな志水の前に、高校時代の同級生・泉が現れます。泉の会社が倒産し、転職して志水の社にやってきたんですね。
泉は志水と違い、これもまた特異な「晴れ男」。彼の晴れ男ぶりは、志水とは対極にあります。彼がいれば必ず晴れる。そんな泉なので周りからは志水と違って重宝され、友人の誘いも引っ張りだこ。志水にとっては面白くない存在で、目の上のたんこぶ、「宿敵」でした。
当然泉が入社してきたことが嬉しい再会なわけもないんですが、志水はふといいことを思いつきます。
自分の部下にして、大事な接待や仕事のときに「雨よけ代わり」につかえばいい。
そう考えた志水は人事にいるこれまた同級生の・藤近(ふじちか)に頼み、泉を自分の部下として向かえ入れます。
二人が再会するとそれまでの曇天降雨がお天気雨となり、握手をすると青空にいきなり雷が轟く…と強烈な「雨男」「晴れ男」ぶりが何だか可笑しかったです。
これほど相反する二人なので、さぞぶつかりあいも激しいかと思いましたが、それほどでもありませんでした。
泉の「晴れ男」の影で涙を噛み締めてきた志水ですが、実は泉は志水とは全く違う想いを志水に抱いていました。泉は高校時代、志水の真っ直ぐで男らしい気質に惹かれ、ずっと片思いしていたんですね。しかし志水からは自分が「晴れ男」であるが故に嫌われていた。それをわかっていながら、自分の会社が倒産したとき藤近に誘われ、志水の元へやってきたのです。
志水の部下となり一緒に仕事をするようになった泉ですが、先にも書いたように志水にとっての自分は「雨避け」。大事な仕事には泉を同伴し二人で組むことが多くなりますが、志水にとっての自分の存在価値を考えるとむなしいばかりです。
「雨男」であることに散々嫌な思いをしてきた志水ですが、泉も「晴れ男」であることでやはり辛い想いをしてきました。友人の誘いは多かったものの、それは彼自身に好意を抱いてくれたわけではなく、やはり便利な「雨避け」だったからです。志水の元で仕事をするようになっても、やはり彼の扱いは変わらない。自分自身を見てもらえない、そして仕事そのものを評価してもらえないというのはやはり辛い。志水には想像もつかないことですが「晴れ男」と言ってもいいことばかりではないんですね。
泉の苦悩など全然気づかない志水も、やがて泉に惹かれるようになっていきます。「晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽」の視点は志水側なんですが、泉の健気な想いが伝わってきます。
同級生で、上司と部下ではありますがライバルでもある。張り合いながら惹かれあい、切なさもちょっぴり、となかなかいいバランス。
「晴れ男の困惑 雨男の疑惑」は視点が泉側に変わります。
対等だけれど、やはり泉の健気さがより伝わってきます。
ゲイの自分とノンケの志水。10年以上の恋を実らせ幸せなはずの泉なのに、定番の悩みが不安を呼び覚ます。
出世頭の志水には、縁談の話もあると洩れ聞き…。
攻の気持ちは揺ぎ無いのに、攻の立場を思って引いてしまう受。
こちらはよくある展開です。
しかも志水が主導するはずだった新規の大仕事が突然泉主導となり、志水が降ろされてしまうなど仕事でも微妙な立場となってしまう。誤解によって志水に殴られるというまでにこじれてしまい、志水の将来にも仕事にも、邪魔にはなりたくないと思いつめる泉。
けれど志水というのはそんなに器の小さい男ではないんですね。
不遇の幼少時からその努力によって自分を高めてきたように、仕事を干されても腐ったり屈したりしません。そういう志水の前向きな姿勢が、彼のいい男ぶりを彷彿とさせて、こういう男なら何の心配もいらないんじゃないかと思わせますね。
ラストは指輪でプロポーズと乙女チックな仕上がり。
「一緒に家のローンを払ってくれ」って、男同士、対等って感じがしてよくありません?
志水は多分会社でもことさら隠そうとせず、それでバレても堂々として逆風にも立ち向かうと思います。
サラッと読めて楽しめました。
こりゃまた古い本ですみません。
志水雅也(しみずまさや・30歳)×泉秋紀(いずみあきのり・30歳)
「晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽」
「晴れ男の困惑 雨男の疑惑」の二編収録されています。
容姿・頭脳・人柄に恵まれ30にして「課長」と異例の出世をして何の悩みもないかのような志水。しかし志水は子供の頃から「雨男」であることに散々悩まされてきました。
その雨男ぶりは半端ではなく、とにかく幼少の頃友達と遊ぶことから始まって、家族との旅行、小中高大の学校行事、社会人になってからは大事な接待ゴルフから屋外での仕事、とにかくイベントに志水が参加すれば100%雨が降る…という筋金入り。
幼い頃は「まーくんと遊ぶとぜったい雨が降るからヤダ!」と言われるし、家族からも恨まれるし、学校では友人に文句を言われるし、また友人との旅行にも誘ってもらえない。
自分ではどうにもできないのに周りからこんな扱いを受けていたらひねくれてしまいそうですが、志水は「雨男」であることを跳ね返そうと、誰にも文句は言わせないと勉強スポーツ仕事に頑張り、何をやっても人より秀でたいい男となったわけです。
そんな真っ直ぐな志水ですから不幸な体質(?)はあるとしても、彼の気質に惹かれる友人は多く、信望も厚い。
そんな志水の前に、高校時代の同級生・泉が現れます。泉の会社が倒産し、転職して志水の社にやってきたんですね。
泉は志水と違い、これもまた特異な「晴れ男」。彼の晴れ男ぶりは、志水とは対極にあります。彼がいれば必ず晴れる。そんな泉なので周りからは志水と違って重宝され、友人の誘いも引っ張りだこ。志水にとっては面白くない存在で、目の上のたんこぶ、「宿敵」でした。
当然泉が入社してきたことが嬉しい再会なわけもないんですが、志水はふといいことを思いつきます。
自分の部下にして、大事な接待や仕事のときに「雨よけ代わり」につかえばいい。
そう考えた志水は人事にいるこれまた同級生の・藤近(ふじちか)に頼み、泉を自分の部下として向かえ入れます。
二人が再会するとそれまでの曇天降雨がお天気雨となり、握手をすると青空にいきなり雷が轟く…と強烈な「雨男」「晴れ男」ぶりが何だか可笑しかったです。
これほど相反する二人なので、さぞぶつかりあいも激しいかと思いましたが、それほどでもありませんでした。
泉の「晴れ男」の影で涙を噛み締めてきた志水ですが、実は泉は志水とは全く違う想いを志水に抱いていました。泉は高校時代、志水の真っ直ぐで男らしい気質に惹かれ、ずっと片思いしていたんですね。しかし志水からは自分が「晴れ男」であるが故に嫌われていた。それをわかっていながら、自分の会社が倒産したとき藤近に誘われ、志水の元へやってきたのです。
志水の部下となり一緒に仕事をするようになった泉ですが、先にも書いたように志水にとっての自分は「雨避け」。大事な仕事には泉を同伴し二人で組むことが多くなりますが、志水にとっての自分の存在価値を考えるとむなしいばかりです。
「雨男」であることに散々嫌な思いをしてきた志水ですが、泉も「晴れ男」であることでやはり辛い想いをしてきました。友人の誘いは多かったものの、それは彼自身に好意を抱いてくれたわけではなく、やはり便利な「雨避け」だったからです。志水の元で仕事をするようになっても、やはり彼の扱いは変わらない。自分自身を見てもらえない、そして仕事そのものを評価してもらえないというのはやはり辛い。志水には想像もつかないことですが「晴れ男」と言ってもいいことばかりではないんですね。
泉の苦悩など全然気づかない志水も、やがて泉に惹かれるようになっていきます。「晴れ男の憂鬱 雨男の悦楽」の視点は志水側なんですが、泉の健気な想いが伝わってきます。
同級生で、上司と部下ではありますがライバルでもある。張り合いながら惹かれあい、切なさもちょっぴり、となかなかいいバランス。
「晴れ男の困惑 雨男の疑惑」は視点が泉側に変わります。
対等だけれど、やはり泉の健気さがより伝わってきます。
ゲイの自分とノンケの志水。10年以上の恋を実らせ幸せなはずの泉なのに、定番の悩みが不安を呼び覚ます。
出世頭の志水には、縁談の話もあると洩れ聞き…。
攻の気持ちは揺ぎ無いのに、攻の立場を思って引いてしまう受。
こちらはよくある展開です。
しかも志水が主導するはずだった新規の大仕事が突然泉主導となり、志水が降ろされてしまうなど仕事でも微妙な立場となってしまう。誤解によって志水に殴られるというまでにこじれてしまい、志水の将来にも仕事にも、邪魔にはなりたくないと思いつめる泉。
けれど志水というのはそんなに器の小さい男ではないんですね。
不遇の幼少時からその努力によって自分を高めてきたように、仕事を干されても腐ったり屈したりしません。そういう志水の前向きな姿勢が、彼のいい男ぶりを彷彿とさせて、こういう男なら何の心配もいらないんじゃないかと思わせますね。
ラストは指輪でプロポーズと乙女チックな仕上がり。
「一緒に家のローンを払ってくれ」って、男同士、対等って感じがしてよくありません?
志水は多分会社でもことさら隠そうとせず、それでバレても堂々として逆風にも立ち向かうと思います。
サラッと読めて楽しめました。
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