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やれる時にやっておけ
樹生 かなめ著
大洋図書 (2006.3)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/北畠あけ乃(SHYノベルズ)

三浦病院の不肖の息子・智巳は病院に出入りする葬儀屋兄弟を嫌っていた。なぜなら社長の悠一を筆頭に美形ぞろいの兄弟は、その美貌で看護師をたぶらかしては仕事を取っていたからだ。
しかし悠一の祖父が経営する老人ホームへ智巳と仲の良い老人が移ったことをきっかけに、ふたりは急接近することに!?
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柘植悠一(つげゆういち・25歳)×三浦智巳(みうらともみ・17歳)
葬儀屋社長と大病院の息子・高校三年生。

父の経営する三浦病院に出入りする葬儀屋「柘植セレモニー」。
柘植家の長男・悠一が社長、悠二(ゆうじ)が専務、四男・悠四(ゆうし)が経理部長と兄弟で営むこの葬儀屋を智巳は毛嫌いしています。
何故なら、そろいもそろって美形のこの兄弟は、病院内で看護師や女医に色目を使い食事や酒に誘ったり、ときには夜のお相手までして遺体をまわしてもらっているから。髪を染めピアスをして無免許でバイクを乗り回し停学をくらうなど決して品行方正な高校生ではない智巳ですが、彼らの汚いやり方には我慢ができないのです。
そんな中で長男の悠一は、何かと智巳に声をかけてきます。院長の息子である自分にまでご機嫌取りをしている。そう思う智巳は、「バイクは危険だから乗るな」という悠一の心配にも耳を貸しません。

そんなある日、智巳が慕っていた隣家の老人・辰之助が辰之助の息子夫婦の画策によって家を追い出され老人ホームに入居させられてしまいます。その老人ホームは誰もが「絶対に入りたくない」と眉を顰めるような悪徳ホーム。心配になった智巳がそのホームに駆けつけてみると、門の前では悠一が待っていて「辰之助さんは、うちの老人ホームにいる」と告げます。悠一の祖父と知り合いだった辰之助は、柘植家の経営する老人ホームへと移されていたのでした。

嫌っていた葬儀屋が営む老人ホームに智巳は不安を感じますが、ホームにいる老人達は誰もみないきいきとしています。ホームをきりもりするのは三男の悠三(ゆうぞう)。祖父の重一(しげいち)も、まだ大学生の五男・悠五(ゆうご)も、亡くなった両親以外柘植家はみなそこで暮らしています。
老人達は家族を亡くしたり、または子供達に見捨てられたり、家を失ったりして身よりもお金もない老人ばかり。老人ホームの経営は柘植セレモニーの稼ぎによって賄われています。
ホームのために死に物狂いで仕事をとってこい、という祖父、重一。
悪徳だと思っていた柘植セレモニーの意外な面を智巳は知ります。

「なにかあったら連絡してくれ。すぐに行くから」と何かと智巳を気遣うような悠一。幼い頃の智巳を語る口調に、ずいぶん前から惚れてるんだな?というのがなんとなくわかる。智巳の方は悠一だけでなく柘植兄弟全部を嫌っていますので、気が立つと構わず殴り飛ばしてしまいます。短気で手の早いお子さんなんです(笑)。それでも優しく見守っているような悠一。
柘植セレモニーのホストまがいの営業はどうにも気にいらないものの、その影で老人達のために暖かい居場所を提供する彼らに、智巳の気持ちはすこしずつ解れていきます。24時間、誰かが亡くなればいつでも病院にかけつけ、様々な手配をし、ソファで仮眠をしただけで仕事をこなす悠一。その一生懸命な姿とホームのためという理由に、そして金のないところには良心的に、持ってるところからは搾り取る、という重一の方針にも、ただの悪徳業者ではない、柘植家の暖かい情を感じはじめます。

そうやって知らず知らずのうちに智巳は悠一に惹かれていくのですが、この二人を盛り上げくっつけるのは、老人ホームの爺さんたちです。主役を食う存在感です。
悠一は兄弟にからかわれている様子から、どうも色恋には奥手みたいなんですね。智巳のそばをうろうろして何かと話かけるものの、ずっとただそばにいて想っていただけみたい。ホスト紛いの営業と智巳が蔑んでいた夜のお相手も、もっぱら悠二の使う手のようで、悠一は「寝技は使わない」と。恋愛に関する精神年齢は18歳と言われてしまう悠一なので気のきいた手管のひとつも使いません。
智巳は今時の不良少年で、口も悪いし手も足も出る喧嘩早い男なので、素直に想いに気づくはずもなく。

二人だけならいつまで経っても恋は始まらないと思われますが、そこで活躍するのが爺さんたちです。
柘植家の祖父・重一は、辰之助とは旧制中学の同級生で、なんと「辰之助はわしの念弟(ねんてい・ホモの女役)じゃった」…!! 
といっても二人の間にナニかあったわけではないんですが、周りの爺さんも重一も辰之助も「棺おけに片足つっこんでからでは遅い」「役にたたなくなったら何もできん」と若いときに何もできなかったことを悔やむように口にする。
後悔しないように、今のうちに、いつ死ぬかわからないんだから…。
年を取った者たちがよく口にするそれらの言葉、そのへんがタイトル「やれる時にやっておけ」と結びついているわけです。
重一は、何も言えないでいる悠一の代わりに智巳に告白までしてしまいます。智巳が、はいというまで離さない。BLという意味では何とも盛り上がらないというか色気のない告白ですが、老人達に応援され祝福される若いカップルがなんとも微笑ましく思えるのでした。

コミカルであたたかい可愛らしいお話だと思います。
Hシーンも実は最後にサラッと…いえ、ないと言ってもいいか。。
読みやすく面白かったです。。考えてみればSHYの樹生さんは第一弾が「45歳のイン○オヤジ」二弾めが「ぶたごりら」ときましたが、それに比べたら問題なく万人向き。ただ爺さんたちのあらぬシーンを想像させられそうな雰囲気はあります。
いろいろ書ける作家さんですね。「45歳・イン○オヤジ」はそのうち読む予定。

ところで柘植家の五人兄弟ですが、ちゃんと登場していたのは悠一、悠二、悠三くらいでしたが揃いも揃って美しい男たちなのでシリーズにしても面白そうですね。顔はそっくりでもタイプがそれぞれ違うのでまたそれぞれに味がありそうです。でもそうすると5人分になるわけですね。ちょっと多いですね(笑)。
(表紙は左から悠一、智巳、悠二です。裏には三男四男五男が。顔は皆同じ。笑)
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