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恋をしてはいけない
吉田 ナツ著
ビブロス (2006.3)
通常1-3週間以内に発送します。
イラスト/高永ひなこ(ビーボーイノベルズ)

矢崎は、親友・三田村からから三週間彼の恋人の少年を預かることになる。
気の進まない矢崎だったが、清楚な美貌のその少年・啓との生活は不思議なほど違和感なくしっくりと馴染み、心地よい二人の生活を楽しむようになっている自分に気づく。
最初はただの好意だと思っていたのに、それはやがて恋心となって溢れ出そうとし、啓もまた同じ気持ちであること矢崎は知る。
親友の恋人。口に出してはいけない想いを二人は抑えようとするが…。
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矢崎(やざき・名前不明)×伊藤啓(いとうけい・本名:日高裕一/ひだかゆういち)
矢崎の年齢は多分20代後半くらい。啓はお話の中で17から19になります。

「恋をしてはいけない」雑誌掲載
「夜が明けていく」書き下ろしの二編。

「恋をしてはいけない」は吉田さんの投稿作品だったようですね。投稿作品が雑誌に掲載されたということでデビュー作ということになるのかな。
三年前雑誌に掲載されたものをラストを中心に修正したそうです。

親友の恋人を好きになってしまうお話です。
その親友・三田村(みたむら)がまた、矢崎にとって(読者からみても)とても信頼できるいいヤツなので、親友への裏切りと言う枷は更に重くなります。
三田村の出張の間頼まれて自分のマンションに預かることになった少年・啓のことを矢崎は会う前は誤解していました。三田村はゲイなのですが、お世辞にも好みがいいとは言えず、今までつきあってきたのは皆派手で軽薄そうな少年たちばかりだったので、啓も同類だろうと思っていたわけです。まして三田村が啓と知り合ったのはある種のバーで、啓は「お持ち帰り自由」の店員としてそういう仕事をしていた少年でした。それを三田村が引き取って一緒に暮らしているということを聴いていたため、矢崎には人のいい三田村がタカられているのでは?くらいに思っていたんですね。
しかし親友の頼みを断りきれず、待ち合わせの喫茶店で初めて啓を見た瞬間、矢崎は啓がそんな少年達とは全く違うということを感じます。
目を惹く清楚な美貌にもハッとさせられますが、啓はとても礼儀正しく、常識的で控えめで気配りもできる少年で、矢崎はいっぺんに好感を持ちます。一緒に生活してみても、家で仕事をする(矢崎はトレーダー)矢崎のペースが乱れることはなく、それどころか二人でいることはとても居心地のいいもので、少しずつ打ち解けて自然な態度になっていく啓のいきいきとした表情や仕草は矢崎を喜ばせ、また啓と矢崎は考えることも似ているのか、ちょっとした日常のひとこまにも、何も言わなくても自然に合ってしまう瞬間がたびたびあり、啓との生活は矢崎にとって思いのほか楽しいものとなっていくんですね。
そうしている間に、やがてふとした瞬間に啓に性的な感覚を呼び覚まされることがおきてくる。まさか、と打ち消してもそれは消えません。目を逸らそうとしても、その思いは次第に抑えられなくなっていく。
そしてある晩、啓が熱を出して寝込んでしまい、熱にうなされ心細そうにする啓に寄り添って眠った時、二人の身体に変化が起きてしまいます。矢崎だけでなく啓も同じ想いを抱いていたんですね。
自分達が、言葉には決して出してはいけない想いを抱きあっている。そう二人が認識した瞬間でした。

「啓」という名前は本名ではないんですね。実はかなり壮絶な事情で彼は家出をしていて、生活するためにどうしようもなく「ウリ」をしていた。精神状態も普通ではなかったと思います。
男たちの欲望の対象となり、その汚さに塗れていたところを、三田村に言わば救われたような形になって一緒に暮らし始めます。三田村の想いは真剣で、啓を養い、いずれは大学も出してやりたいと思っている。啓はそれまでのトラウマから実は性交ができなくなっているんですが、そういうこともちゃんと理解して守ってやろうとしているわけです。
しかし、自分を救ってくれた三田村に対して啓が抱いている感情は「恋」とは違うことがわかってきます。ですが、そうまでしてくれる優しい三田村を、矢崎に恋をしたからといって裏切ることは啓にもできません。恋とは別に、三田村も啓にとってやはり大切な人なんです。
矢崎と啓は、たった一度だけ身体を重ね、お互いの想いを伝えあいながらも、別れてしまいます。

ここまでが「恋をしてはいけない」のストーリー。
それから二年後、二人が再会してからが書き下ろしの「夜が明けていく」になります。

雑誌掲載時を拝見していないのでどう変わったのか残念ながらわかりませんが、ここで終わってたら哀しすぎます(笑)。ヌルいと言われようが、ハッピーエンドでないと私はやっぱり駄目(^^ゞ
書き下ろしでは「神様が許してくれたらまた会える」という言葉のとおり二年の後に再会し、親友の三田村も矢崎を咎めることは全くなかったし、現在は新しい恋人と幸せに暮らしていて、矢崎の啓への想いを応援までしてくれているわけですから、今度こそ幸せになれる…と思う矢崎と私(笑)なのですが、やっぱり簡単にはいかず切ない展開となっているのでした。

ここからは偽名の「啓」でなく本名「裕一」となります。
裕一が家出している間に母が亡くなり、自分を守ってくれた三田村を裏切り、そして生活するために身体を売っていたそれら全てが裕一に深い傷となって残ってしまっているんですね。
矢崎への想いは全く変わらず苦しいほどなのに、矢崎に身体に触れられることに耐えられない。自分は汚いと自分を責めながら、矢崎に恋したことを後悔することもできず内面がどんどん不安定になっていく。
そんな裕一を想い、矢崎は自分の欲望を抑え裕一の心の回復を待とうとするんですが、やがて裕一は再び「二度と会わない」と言い出す。その言葉にキレた(笑)矢崎は…?
この場合は「引いても駄目なら押してみな」というところでしょうか。

吉田さんらしい優しく切ないお話でした。
「親友の恋人」はありがちだけれど、「こんなに好きなのに…」という気持ちはやはりキます。
切ないけれど、あちこちに優しい想いが溢れていて、しんみりジンとしました。
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