イラスト/史堂櫂(キャラ文庫)
天才的な配球センスを持つ捕手の茅厨。コントロール抜群のエース・国府田。
“超高校級バッテリー”と謳われた二人だが、実は国府田は茅厨を無理矢理抱いていた。
その後、国府田はプロへ、茅厨は社会人野球へと道を分けるが、二人の複雑な関係はその後も続き…。
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国府田賢三(こうだけんぞう)×茅厨敦士(ちずあつし)
同い年。高校生から28歳になる頃まで。
五百香ノエルさんのお名前は存じておりましたが読むのは初めてです。
何となく難しそうかな?というイメージを勝手に抱いていました。
野球選手という職業と史堂さんのイラストから、これは読みやすそうな爽やかスポーツマン物か?とちょっと思いましたが全然違い、ドロドロと複雑な恋愛模様となっておりました(笑)。
二股で三角関係だし途中からは四角関係だし…。
読んだあとしばらく頭がボーッとしてました。
茅厨と国府田の出会いは中学の時。それぞれ別の中学で国府田はピッチャー、茅厨はキャッチャーとして名を馳せていました。そして二人は同じ高校に上がり、同じ野球部の一員として初めて会話を交わし、バッテリーを組みます。
国府田はどちらかというと野球しかとりえのない不器用で無骨な男でしたが、茅厨は頭脳派で、茅厨の構えたとおりに投げさえすれば、茅厨は必ず国府田に勝利を齎してくれました。しかし野球を離れた茅厨は国府田を卑下するように見て、馬鹿にするばかり。国府田は自分は茅厨の犬だ、と屈辱を感じています。
それでも、活躍して高校卒業と同時にプロになることを夢見ていた国府田は、自分を勝たせ有名にしてくれると茅厨を信じ、茅厨の言うとおりに投げるのですが、ある時、他校の天才スター選手・籠谷慧(かごたにけい)に打ち込まれ、敗戦してしまいます。
そして、茅厨に裏切られたと、それまで自分を卑下してきた茅厨への怒りで頭に血が昇った国府田は、「あいつには負けてもしかたない」と言った茅厨の言葉に激怒し、茅厨を強姦してしまいます。
それ以降、二人の身体の関係はずっと続いていきます。
バッテリーとして組み、茅厨の言うとおりに国府田は投げ、二人は勝利をもぎ取って“比翼の連理”と言われるまでになります。
と、ここまでは実は途中から判ります。
現在過去現在と話が前後するので、二人の本当の関係はなかなか掴みにくい。
冒頭は茅厨の登場で、国府田への異常なまでの執着を見せ付けられます。国府田にアイドル歌手の彼女ができたと聴いた茅厨の苛立ち。どうやら国府田に女ができるたびに今までも茅厨が全て邪魔して壊してきたことがわかる。国府田は俺のものだと言い、連絡をくれないと怒り、国府田の留守番電話に録音が出来なくなるまでメッセージを残す。
そんな茅厨の狂気のような執着から国府田は怯え逃げているようだ…という印象を、序盤では持たされてしまいました。
それほど国府田に執着していながら、同時に茅厨は、籠谷との関係も持っている。なんだこの男はいったい?というわけです。
しかし話が進むうちに印象は変わっていきました。
なぜ茅厨と国府田がこれほどまでに惹かれあうのか、それははっきりとは実は私にはわかりません。理由などなく、魂の結びつきというか、ひとつの魂を二つに割ったため、二人でなければ完璧になれないとでもいうようです。
それでいて全く正反対の二人は反発し、恐れ、憎みあっている。理解しあえず、相手を殺したいとさえ思う。そして相手が死んでしまったら、自分は生きていけずに自殺してしまうだろうと。
国府田が茅厨に振り回されているように見え、印象はお世辞にもいいとは言えない茅厨ですが、出会ったときから茅厨は国府田に全身全霊でつくしてきたことがやがてわかります。茅厨から逃げ出してしまう国府田が、臆病でボンクラでずるい男に思えてくる。
そうかと言って茅厨の国府田への尽くし方は、やはり尋常ではないものがあります。高校時代、国府田を籠谷に勝たせるために、野球では叶わないと考えた茅厨は、野球外で…と試合前に籠谷を身体で誘惑し、精神的にガタガタにさせて、国府田に勝利を贈るんですから。それが国府田にバレて、二人がこじれてしまったんだと思いますがね。
さて当て馬の籠谷ですが、彼は野球で言えば、松井とかイチローと同じ位置にいるくらいのスター選手です。プロになって精彩を欠いた国府田と違って、天才選手であり、性格的にも度量も包容力も広く、茅厨が国府田を死ぬほど求めていることを知っていて、その全てを包み茅厨を愛しています。そんな籠谷の愛を知っていて、それに甘え、国府田のために傷ついた心を癒す茅厨。
国府田を求め得られなくてボロボロになれば、暖め癒してくれる籠谷を、茅厨はまた別の意味で愛しているというわけで、あまりの複雑さに頭がボーッとしてしまったわけです。
国府田は、茅厨を振り切るため、つきあっていたアイドルと電撃結婚してしまいます。去っていく国府田を見栄も外聞もなく泣き叫んで追いかける茅厨の姿は胸に痛いが、同時に国府田と同じようにその狂気が怖い。
しかし国府田もやはり茅厨から離れることはできません。4年後、国府田は肩を壊し夫婦の仲も危機を向かえ、一人ワンルームマンションに引きこもってしまいます。そこへ再び茅厨が現れる。「何も変わってないよ」と。
そして国府田にとうとう本心を告げます。奥さんと別れて俺を選んでくれと。もうこんなのは嫌だと。
そしてそれを知った籠谷も我慢の限界でした。国府田か自分か、どちらかを選べ。国府田を選ぶなら自分とはもう終わりだと茅厨は告げられます。
籠谷を選んだほうが茅厨にとって幸せで安定できるのは誰が見ても判りすぎるほどです。茅厨のためならメジャー選手となった自分の地位さえ捨てるという籠谷は、男としての技量も国府田よりずっと上です。というか国府田のいったいどこがいいんだ?(笑)
それでも国府田を選ぶというのなら、それはもう魂の結びつきとしか思えないじゃありませんか。どうしてなの?と聞くのさえ無粋な気がする。そうなのだ、茅厨には国府田しかいないのだ、国府田には茅厨しかいないのだと、こっちも思わされてしまってます。
あまりに複雑で、同時に凄く引き込まれてしまい読み終わったあと何度もページを捲り直してしまいました。ちゃんと理解できてる自信もあまりない(笑)。
これを大好きだ!とは言えないし、たぶん嫌いだと仰る方も少なくないだろうと思う。
けれどなぜかとても心に残る作品となってしまいました。
ラストで二人がキャッチボールをしていますが、笑いながらボールを投げあうそのシーンは、それまでの月日から比べると嵐の後の凪のようです。
やっと二人は「完全」になれたんだな、と感じました。
国府田賢三(こうだけんぞう)×茅厨敦士(ちずあつし)
同い年。高校生から28歳になる頃まで。
五百香ノエルさんのお名前は存じておりましたが読むのは初めてです。
何となく難しそうかな?というイメージを勝手に抱いていました。
野球選手という職業と史堂さんのイラストから、これは読みやすそうな爽やかスポーツマン物か?とちょっと思いましたが全然違い、ドロドロと複雑な恋愛模様となっておりました(笑)。
二股で三角関係だし途中からは四角関係だし…。
読んだあとしばらく頭がボーッとしてました。
茅厨と国府田の出会いは中学の時。それぞれ別の中学で国府田はピッチャー、茅厨はキャッチャーとして名を馳せていました。そして二人は同じ高校に上がり、同じ野球部の一員として初めて会話を交わし、バッテリーを組みます。
国府田はどちらかというと野球しかとりえのない不器用で無骨な男でしたが、茅厨は頭脳派で、茅厨の構えたとおりに投げさえすれば、茅厨は必ず国府田に勝利を齎してくれました。しかし野球を離れた茅厨は国府田を卑下するように見て、馬鹿にするばかり。国府田は自分は茅厨の犬だ、と屈辱を感じています。
それでも、活躍して高校卒業と同時にプロになることを夢見ていた国府田は、自分を勝たせ有名にしてくれると茅厨を信じ、茅厨の言うとおりに投げるのですが、ある時、他校の天才スター選手・籠谷慧(かごたにけい)に打ち込まれ、敗戦してしまいます。
そして、茅厨に裏切られたと、それまで自分を卑下してきた茅厨への怒りで頭に血が昇った国府田は、「あいつには負けてもしかたない」と言った茅厨の言葉に激怒し、茅厨を強姦してしまいます。
それ以降、二人の身体の関係はずっと続いていきます。
バッテリーとして組み、茅厨の言うとおりに国府田は投げ、二人は勝利をもぎ取って“比翼の連理”と言われるまでになります。
と、ここまでは実は途中から判ります。
現在過去現在と話が前後するので、二人の本当の関係はなかなか掴みにくい。
冒頭は茅厨の登場で、国府田への異常なまでの執着を見せ付けられます。国府田にアイドル歌手の彼女ができたと聴いた茅厨の苛立ち。どうやら国府田に女ができるたびに今までも茅厨が全て邪魔して壊してきたことがわかる。国府田は俺のものだと言い、連絡をくれないと怒り、国府田の留守番電話に録音が出来なくなるまでメッセージを残す。
そんな茅厨の狂気のような執着から国府田は怯え逃げているようだ…という印象を、序盤では持たされてしまいました。
それほど国府田に執着していながら、同時に茅厨は、籠谷との関係も持っている。なんだこの男はいったい?というわけです。
しかし話が進むうちに印象は変わっていきました。
なぜ茅厨と国府田がこれほどまでに惹かれあうのか、それははっきりとは実は私にはわかりません。理由などなく、魂の結びつきというか、ひとつの魂を二つに割ったため、二人でなければ完璧になれないとでもいうようです。
それでいて全く正反対の二人は反発し、恐れ、憎みあっている。理解しあえず、相手を殺したいとさえ思う。そして相手が死んでしまったら、自分は生きていけずに自殺してしまうだろうと。
国府田が茅厨に振り回されているように見え、印象はお世辞にもいいとは言えない茅厨ですが、出会ったときから茅厨は国府田に全身全霊でつくしてきたことがやがてわかります。茅厨から逃げ出してしまう国府田が、臆病でボンクラでずるい男に思えてくる。
そうかと言って茅厨の国府田への尽くし方は、やはり尋常ではないものがあります。高校時代、国府田を籠谷に勝たせるために、野球では叶わないと考えた茅厨は、野球外で…と試合前に籠谷を身体で誘惑し、精神的にガタガタにさせて、国府田に勝利を贈るんですから。それが国府田にバレて、二人がこじれてしまったんだと思いますがね。
さて当て馬の籠谷ですが、彼は野球で言えば、松井とかイチローと同じ位置にいるくらいのスター選手です。プロになって精彩を欠いた国府田と違って、天才選手であり、性格的にも度量も包容力も広く、茅厨が国府田を死ぬほど求めていることを知っていて、その全てを包み茅厨を愛しています。そんな籠谷の愛を知っていて、それに甘え、国府田のために傷ついた心を癒す茅厨。
国府田を求め得られなくてボロボロになれば、暖め癒してくれる籠谷を、茅厨はまた別の意味で愛しているというわけで、あまりの複雑さに頭がボーッとしてしまったわけです。
国府田は、茅厨を振り切るため、つきあっていたアイドルと電撃結婚してしまいます。去っていく国府田を見栄も外聞もなく泣き叫んで追いかける茅厨の姿は胸に痛いが、同時に国府田と同じようにその狂気が怖い。
しかし国府田もやはり茅厨から離れることはできません。4年後、国府田は肩を壊し夫婦の仲も危機を向かえ、一人ワンルームマンションに引きこもってしまいます。そこへ再び茅厨が現れる。「何も変わってないよ」と。
そして国府田にとうとう本心を告げます。奥さんと別れて俺を選んでくれと。もうこんなのは嫌だと。
そしてそれを知った籠谷も我慢の限界でした。国府田か自分か、どちらかを選べ。国府田を選ぶなら自分とはもう終わりだと茅厨は告げられます。
籠谷を選んだほうが茅厨にとって幸せで安定できるのは誰が見ても判りすぎるほどです。茅厨のためならメジャー選手となった自分の地位さえ捨てるという籠谷は、男としての技量も国府田よりずっと上です。というか国府田のいったいどこがいいんだ?(笑)
それでも国府田を選ぶというのなら、それはもう魂の結びつきとしか思えないじゃありませんか。どうしてなの?と聞くのさえ無粋な気がする。そうなのだ、茅厨には国府田しかいないのだ、国府田には茅厨しかいないのだと、こっちも思わされてしまってます。
あまりに複雑で、同時に凄く引き込まれてしまい読み終わったあと何度もページを捲り直してしまいました。ちゃんと理解できてる自信もあまりない(笑)。
これを大好きだ!とは言えないし、たぶん嫌いだと仰る方も少なくないだろうと思う。
けれどなぜかとても心に残る作品となってしまいました。
ラストで二人がキャッチボールをしていますが、笑いながらボールを投げあうそのシーンは、それまでの月日から比べると嵐の後の凪のようです。
やっと二人は「完全」になれたんだな、と感じました。
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