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恋情抄
池戸 裕子著
学研 (2006.1)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/あじみね朔生(もえぎ文庫)

小説家・高村榛也は、隣家の幼馴染・鹿嶋柾に思いを寄せていた。しかし鹿嶋の母は妾腹の子である高村の素性を蔑み、鹿嶋とは会わないように告げる。
以来、鹿嶋を避けていた高村だが、ある日夢の中で鹿嶋と出会う。そこでは快活な高村の従兄となって、鹿嶋に接することができたのだ。
夢の世界は幸福すぎて次第に溺れていく高村だが…。
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鹿嶋柾(かしままさる・22歳)×高村榛也(たかむらはるや・22歳)

「恋情抄~昭和綺談~」小説アイス(今はありません)掲載
「物語の始まり」書き下ろし の二編収録されています。

時代は昭和初期頃の設定です。
「昭和浪漫」風(笑)
時々高村が自分を私と呼び語る一人称が挟まれるんですが、いかにもその頃に書かれた小説を読んでいるような感じがして雰囲気出てました。淡々と語られる口調に、若い頃読んだ、昔の日本の大作家さんたちの小説の語り口を思い出しましたね。

高村と鹿嶋の家は隣同志に建っています。ちょうど敷地の真ん中に、どちらの庭にも根を張った林檎の木があり、二人は尋常小学校のころ、その木の下で初めて出会います。
鹿嶋の家は外交官の父を持つ、言わばお金持ち。
しかし高村の母は妾という立場で、周りからは蔑みの目で見られていました
高村は生まれつき足が不自由で身体も弱く、性格も引っ込み思案で大人しく、更に家の事情で周りからは遠巻きにされていたので友人と呼べるのは鹿嶋が始めてでした。
しかし鹿嶋の母が二人の付き合いを快く思うわけもなく、ある日、息子とのつきあいを辞めるようにと厳しく言い渡されてしまいます。
高村の中に育っていた鹿嶋への想いは封じ込められ、それ以来10年の間、想いを胸に秘めたまま、高村は鹿嶋をずっと避け続けています。

と、こういう時代の身分違いの恋ではありますが、このお話はちょっと違う要素が入ってます。

ある日、高村の夢に鹿嶋が現れます。
不自由なはずの足は自由に動き、普段は出ない勇気さえ溢れるようで、高村は鹿嶋の名を呼び、高村と鹿嶋は親しげに会話を交わします。まるで生まれ変わって鹿嶋ともう一度やり直せるような気がして、高村は自分を従兄だと名乗ります。
それ以来、眠ると鹿嶋は夢に現れ、二人はあるときは並んで座り、ある時は歩きながら、親しくいろいろなことを話し合います。夢で鹿嶋といられることが嬉しく、眠ることが楽しみになっていく高村。
しかし、ある日高村はおかしなことに気づきます。
夢で鹿嶋と川面に手を浸し遊んだ後、目覚めた自分の手がふやけたように濡れている。そして突然訪ねてきた鹿嶋の口から驚くようなことが語られます。
君の従兄と何度か会っている、と。

というわけで「不思議」要素の含まれたお話なのですね。
相手のことを強く想い、恋慕う念は生霊となって相手の元にたどり着く…というか、「生霊」かなにかは知りませんが(笑)、相手を求める気持ちが夢で会わせているというのは間違いありません。
そしてネタバレですが、高村の夢に現われた鹿嶋も実は、鹿嶋の強い想いが高村の元にたどり着いた結果、二人は夢の中で出会っていたわけです。
現実では親しく言葉を交わすこともできないまま、夢の中だけで二人は幸せな逢瀬を重ねます。高村が夢の中で生きたいと願ったように、鹿嶋も同じように願い、そしてある日鹿嶋は目を覚まさなくなってしまいます。
鹿嶋の異母兄から、鹿嶋の自分への本当の想いを聞いた高村は、現実で一緒に幸せになるために、鹿嶋を夢から連れ戻そうとします。

現実的ではないのですが、不思議な出来事がそれほど突拍子もないもののようには感じられません。むしろこういう時代だからこそ、秘めなければならなかった想いの、その強さの方がより伝わってきました。
純粋に、「ああ、そこまでお互いに想っていたんだなぁ」と。
最近、自分が結構、こういう大正、昭和などの時代ものが好きだというのに気づいたんですが(笑)、そういう意味でも好きな雰囲気を持ったお話でしたし、不思議な出来事を淡々と静かに語っていて、変に奇異な出来事として大げさに扱っていないところも、自然に受け止められた要因かなと思います。
ここまで強い想いなのに変に熱くならず、そこはあくまでこの時代らしく、全体に控えめで抑えたところがあって、そういうところも好きですね。
二人が現実で結ばれても、ちょっとあっけなくて寂しいくらい淡々としていますが、それが雰囲気を壊していないので、やはりこのくらいがいいんだろう。
静かだけれど深~い愛情の感じられるお話でした。
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