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ケダモノたちの夜に
火崎 勇著
イースト・プレス (2006.1)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/笹生コーイチ(アズノベルズ)

母の急逝で天涯孤独の身となった大学生の氷魚。
ある日、伯父と名乗る男が現れ、乞われるままに亡き父の生まれた村を訪れることに…。
閉鎖的で謎めく山奥のその小さな村―着いたその日のうちに氷魚は世話役の青年・前川からいきなり犯される。謂れなき陵辱に慄きながらもその腕の中で乱れていく氷魚。
身体の奥底に潜む『何か』の翻弄される二人の秘密は…?
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前川祐希(まえかわゆうき)×北尾氷魚(きたおひお)
同い年、20歳くらい。


ちょっとミステリアスなお話です。
古い村に伝わる伝承、祠に祭られる神、儀式、生贄と、舞台は現代ですが、現実的とは言えないものが絡んでいるので好みは分かれるかも。
個人的にはお話として面白かったし、「神」と二人の惹かれあう想いをうまいこと関連づけてまとめてるなと思いましたが。

両親は幼い頃に離婚し母と二人きりで暮らしてきた氷魚ですが、母はある日突然の交通事故によって急逝してしまいます。そして葬儀などを終え、ようやくアルバイトに復帰した日、その帰り道で氷魚は見知らぬ男に強姦されてしまう。
自分を抱きながら妙なことを口にする男。襲われたことだけではなく、そんな状況なのに何故か快感を覚えてしまった自分にショックを受ける氷魚ですが、そんな時、突然「伯父」と名乗る人物が自分を訪ねてきます。
顔も覚えていない父の兄だというその男・加賀地は、氷魚の生まれた村だという「カミ村」に氷魚を誘います。強姦されてしまったショックから逃げるように氷魚はその村へ行くことに決めるのですが、村に着くと、伯父には自分の生家に一人で泊るように言い、一人の青年を身の回りの世話としてつけてくれます。
ところが前川祐希というその青年は、氷魚の生家に案内したとたん豹変し、氷魚は再びそこで無理矢理に犯されてしまいます。しかも前川の口からは、以前強姦されたときにも聞いたのと同じ妙な言葉が。 訳を尋ねる氷魚に前川は何も説明せず、村を出ていこうとしてもバスの運転手は氷魚を乗せてもくれません。「式が終わるまで帰れない」という前川の言葉どおり、氷魚は村に閉じ込められることとなってしまいます。

閉鎖的な村に閉じ込められて、村人はある人は畏怖の目で、ある人は蔑みの視線で氷魚を見、またある人は手を合わせて拝んだりします。前川のことを「前川様」と呼び、買い物をしても彼からはお金を受け取らない。何が起きているのかなかなか説明されないので、先が知りたくてどんどん読んでしまいました。
なんとなく想像できるのは、村に伝わる伝統、氷魚は何かの理由でここに呼ばれ、生贄にされる…?というくらいです。ほとんど謎だらけ。それと、この前川という男ですが、初めはどういう位置の人間なのか掴みかねます。が、前川が東京で、そしてまたこの村で氷魚を犯したこと、前川に触れられて氷魚が激しく感じてしまったこと、その理由に深くこの「謎」が絡んでおり、前川がその秘密を明かしたとき、なるほどねぇ~と妙に感心(?)してしまったのでした。

その「謎」の部分に「神様」が絡んでいるので、こういうのがダメな人は楽しめないかな~と思うんですが、確かに普通の恋愛もののようにはいきませんが、これはこれでまた趣が違って結構面白いと思いました。去年似た感じの本が出ていたと思いますが、多分そちらよりずっと甘く、雰囲気も暗くないし、読みやすいと思います。二人の身体に入った引き裂かれた神…というのが、何だかロマンティックに思えました。おどろおどろしくないのね。こういうのを火崎さんが書くとこうなるのね~と変に納得したりして。
実際この二人の間に流れる感情ってとても甘いと思うし。

ちょっと毛色が変わっていて、他にこういうのをお書きになっているのかどうか知りませんが、私が今まで読んだ火崎さんとしては、こういうのは初めてでした。現実的でないものを扱っていてもちゃんと恋愛ものになっていて、受け入れやすい形になっていると思う。
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