fc2ブログ
BL読書感想日記※※※ 詳しくはカテゴリーの「このブログについて」をご覧下さい。

2023/101234567891011121314151617181920212223242526272829302023/12

イラスト/佐々成美(ビーボーイノベルズ)

高校時代、三浦が片思いしていた同級生の堂島。
卒業から五年、三浦の勤めるフラワーショップで二人は偶然再会する。堂島の恋人がその店の娘だったのだ。彼らの恋を壊してはいけない。だから見ているだけでいい。けれどやっぱり好きで好きで。
そんなある日、身体だけ重ねてしまった二人は…?!
------------------------------------

堂島慎一(どうじましんいち)×三浦郁彦(みうらいくひこ)
同い年。23歳

「好きで好きで好きで」
「ラブソングみたいに」の二編収録されています。

「好きで好きで好きで」は、三浦の一人称。
高校時代の三浦と堂島、あるきっかけで親しくなりだんだんと堂島に惹かれていく気持ち、そして卒業間近、とうとう抑えきれなくなった想いが溢れ出して堂島に告白するものの、「好きになることは絶対にない」と言われ失恋。そして五年後、三浦の勤めるフラワーショップで再会して、身体を重ねてしまうまで…が書かれています。
好きになって告白して失恋して、再会してもまだ5年前と少しも変わらず「好き」の想いは胸にあって、それでも堂島には恋人がいて、自分の想いは叶うわけがないとわかっていて、目の前で似合いの二人を見ながら、自分の気持ちは抑えなくてはならなくて…と、どれをとっても堂島への想いはとにかく苦しくて切ないです。三浦の一人称であるため堂島については表面しか見えてこないため、読み手も堂島の気持ちを掴みかねて、一緒に切なくなってしまいます。泣けましたね。本当には泣いていないので「泣きたくなる」が正しいですけど。
苦しんで苦しんで、とうとう耐えられなくなって三浦は店を辞めてしまうんですが、そうすると堂島が訪ねてきて、「一度だけしてみようか?」。
欲しくて欲しくてたまらなかった、好きな男の腕や胸や背中。耳元に聞こえる吐息や感じている顔、体の上を滑る指や唇に抗えないまま寝てしまうんですが、心の中ではそれが心を伴わないむなしいものだと気づいている。それでも一度だけ…と身体を重ねますが、終わったあとに待っていたのは大きな哀しみと後悔でした。そして数日後、三浦は堂島と恋人の仲良さそうな姿を見かけます。
その時のみじめな思い。ただ一度だけでいいと願って身体を重ね、なにもかもなくし、自分の恋さえも汚してしまった。
「こんな悲しい恋はもう二度としない」
なんとそこで終わってしまうんですねぇ~。

あとがきには「ここで本を投げないでくれ」と書いてあります(笑)

「ラブソングみたいに」は、同じ出来事を堂島の一人称で語っています。
そうすると、堂島の迷いや想いがようやくわかる。
堂島はなんというか、感情の起伏がどちらかというととぼしいようです。というか人への執着があまりないのか。家庭環境がどのように影響があったかはわかりませんが、もともとそういうタイプのような印象を受けます。
いつか誰かと結婚して、その人を守り幸せにしたいと考えていますが、それは「形」を求めているような感じなんですね。現に堂島は、心から人を好きになるという気持ち、その苦しみや切なさがどういうものなのかわかっていない。三浦が自分のことを好きだと言って涙をこぼしたり、恋人の昔の男が激情にまかせて行動したり、そんなふうに溢れるように誰かを好きだと言ったり欲しいとする気持ちがわからない。
わからないと言いながら、堂島の中で三浦の存在はどんどん大きくなっていきます。
わからないけれど、三浦が気になる。
まだ自分のことが好きなんだろうか。もう忘れただろうか。
どうして泣きながら微笑むんだろう。それは俺のせいなのか。
この体の中には何があるんだろう…。
衝動にも似た欲望で三浦を抱いてしまいますが、それでもまだわからない。
俺のために泣かせて俺のために傷つけたい。優しくしたい、冷たくしたい、触れたい、傷つけたい、大事にしたい。
ぐちゃぐちゃの堂島ですが、その迷いや悩みを見ると「ああ良かった」と思うんですよ(笑)
だって三浦があまりに可哀相だったんだもん。

「好きで好きで好きで」というのは当に三浦の気持ちで、諦めようとしても、離れていても、どうしても止められない思いの凝縮のようなタイトルなんですけど、実は堂島の方にも当てはまるんですね。
苦しくなるほど人を好きになる、そんな感情を知らなかった男が、三浦を「好きで好きで好きで」どうしようもなくなる。

切なくて苦しいですがハッピーエンドで良かった。
切ないのがお好きなかたにお薦めです~。
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://0hz.blog112.fc2.com/tb.php/421-259edfd1
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック