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いつか、あふれる
麻生 玲子著
笠倉出版社 (2005.12)
通常2-3日以内に発送します。
イラスト/宮本佳野(クロスノベルス)

男を見る目がない遊佐は、名前しか知らない篠崎という上司に突然押し倒され、つきあっていたはずの相手から彼に譲られてしまったことを知る。
衝撃の事実に抵抗する遊佐だったが、出世と退職というアメとムチをちらつかせる篠崎に、ついに抱かれてしまう。
100%打算で始めたつもりの関係は、いつしか篠崎に傾き始めた遊佐の心を追いつめてしまうのだったが…。
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篠崎(しのざき・31歳)×遊佐叶(ゆさかなえ・26歳)

中学生でゲイだと自覚し大学で初めて恋愛をしたものの、相手の卒業時に「これからは女とつきあいたい」と簡単にフラれ、それからは本気の交際は避けてきた遊佐。ところが就職した先で自分をフッた男と再会し、再び、今度は身体だけのつきあいを続けていました。
ところがいつものようにホテルで待ち合わせシャワーを浴びて出てくると、部屋にはもうひとりの男が。そして同じ社内で名前は聞いたことがあるものの話したことさえないその男・篠崎に、自分が「譲られた」ということに遊佐は唖然とします。

遊佐を篠崎に譲った男・栗原(くりはら)は、社内から機密情報を盗み出したことを篠崎に見咎められ、それを黙っている代わりに篠崎は「遊佐」を要求してきたのです。抵抗する遊佐に、言うことを聞かないと栗原の共犯として社内にバラすと脅され、遊佐は篠崎に抱かれます。篠崎は約束どおり、遊佐の入社時の希望だった技術部に営業から遊佐を移動させ、自分のグループに入れて部下とします。そしてそれからは毎週末ごとに篠崎から呼び出しを受け、篠崎のマンションで身体だけの関係が続きます。

遊佐を貶めるようなことを言い、遊佐の都合も身体の調子もお構いなしに傲慢に抱く篠崎に、遊佐はまるで奴隷のような気持ちにさせられます。でも遊佐という人物は、気が強く、それまでの男遍歴で「貞操」というものも多少磨り減っていることもあり、身体だけの関係を「それほど騒ぐほどのことじゃない」と諦めて受け入れているようなところも見えます。だから一方的に篠崎に脅されていいようにされている辛さ…はあまり見えませんでしたね。快感を得て、それはそれで楽しんでいる部分もあるというか。もちろん理不尽さや憤りは余るほど感じているわけですけど。

篠崎はいかにも傲慢で強引だし、遊佐を嬲る言葉も意地悪だしで、あんまりいい印象は受けないんですが、そんな中でも、遊佐が眠っている時や熱を出して寝込んでいるときにポロッと洩れるひとことや優しさから、相応の「想い」があるなと感じられるんですよ。ラストで遊佐言った「俺が大学のときから…?」という言葉を「うるさい」の一言で誤魔化していますが、これが本当のように思えますね。してみるとホントに長い片思い(笑)。脅してまで、身体だけでも自分のものにしてしまおうなんて、ずいぶん無茶ですが、なりふり構わないほど欲しかったのかな?と思うと可愛い…かもしれないですね(笑)。
でも一言言わせてもらえばもっと正攻法で向かってみたら良かったんじゃないでしょうかね(^^ゞ

身体だけの関係を諦めたように受け入れ心を麻痺させていた遊佐が、篠崎に惹かれていることに気づく辺りの心理はお上手だなと思いました。それに、右も左もわからない部署に配属され、やる気を感じながらも、また一から仕事を覚えなおさなければならないキツさとか、それまでの課なら中堅と呼ばれる年齢なのに、使いっぱしりの新入社員のような役立たずな自分を思い知らされる辛さとか、そういうところは何だかリアルでしたね。自分の経験を重ねて頷いてしまいました。

麻生さんのコバルトのシリーズばかり読んでいたので初々しくて繊細な恋に慣れていましたが、こちらはアダルトです。
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