イラスト/樋口ゆうり(リンクスロマンス)
カウンセラーである兄の仕事を手伝いながら暮らす鈴木佳人は、過去の事件が元で心に深い傷を抱えていた。
ある夏の日の午後、佳人は唯一の安らぎの場である庭で、藤堂大司という男と出会う。男性的な力強さを持つ藤堂に怯えを抱きつつも、魅力的で真摯な態度に惹かれていく佳人。彼と過ごした僅かな間にも、佳人は不思議と別れがたさを感じていた。
別れ際、自分に向けられた藤堂の、何かを訴えるような瞳に佳人の心が揺れ動き…。
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藤堂大司(とうどうたいし・26歳)×鈴木佳人(よしと・26歳)
「至福の庭」雑誌掲載
「ツイン・ハート」書き下ろし の二編収録されています。
佳人は対人恐怖症(特に男性的な男)と外出恐怖症を患っていて、自宅で兄の仕事を手伝いながら暮らしています。
そんなある日、兄のカウンセリングを受けにきた藤堂大司が佳人の世話する庭に紛れ込み、佳人はその男性的な要望に恐れを抱きながらもひと目で惹き付けられます。
このお話は再会もので、実は藤堂と佳人は過去に繋がりがあります。
佳人が「恐怖症」を患うキッカケに藤堂は深く関係しています。
佳人と藤堂は中学で始めて出会い、スポーツも勉強もでき人望も責任感もありリーダー的な存在だった藤堂と、控えめで優しく目立たなかった佳人は、あるきっかけからまるで親友のように一緒に過ごしてきました。佳人の藤堂への憧れはいつしか恋心へと変わり、思い切って告白した想いは藤堂に受け入れられます。
そして二人は恋人同士となりますが、大学生になり都会へと出た藤堂は、外見や言動は派手に変わり、佳人を疎ましく見るようになります。都会にいながら相変わらず地味な佳人を藤堂は軽んじ、冷たく突き放したり、時には手のひらを返したように優しくしたりして、まるでオモチャのように扱います。
そんなある日、あるグループから藤堂が恨まれる出来事が起きるのですが、その仕返しが佳人に向けられてしまいます。佳人は数人の男たちに囲まれ、藤堂に出した助けを求めるメールも無視されて、とうとうレイプされそれをビデオに撮られてしまうのです。ボロボロになり、必死の思いで藤堂のマンションにたどり着いた佳人ですが、藤堂は不在。しかしキズだらけの身体を蹲らせて帰りを待っていた佳人を見た藤堂の顔にはあからさまに迷惑な色が浮かび、そして藤堂は佳人に言い放ちます。
「お前には飽きた。だから別れる」
その後、その場を逃げ出し彷徨った佳人は、迷い込んだ渓谷から滑落し大怪我を追います。そして病院で目覚めたとき、あまりに辛い出来事をから自分をを守るように、事件と「藤堂大司」の存在を心の奥に封印してしまったのでした。
「対人恐怖症」の佳人が、一番苦手とする男っぽい男である藤堂にひと目で惹かれてしまうのには、やはり心の奥にある藤堂を求める気持ちを感じます。でもそれはとりあえずどうでもよくて(笑)、藤堂に惹かれながらもどうしても心から消えない恐れ、その苦しさが伝わってきます。佳人は「藤堂」と封印してしまった「藤堂大司」を結び付けられずに再び「藤堂」に恋をしています。しかし、同時に怖さをも感じている。封印された過去の出来事が自覚のないままに今も心に影を落し、藤堂に惹かれる一方で、頑なに拒む気持ちも抑えられないんですね。
再び佳人の目の前に現われた大司は、過去の振る舞いは嘘のように紳士的で優しく穏やかで忍耐強く佳人を見守っています。佳人が自分を怖がるたび、真摯に接しようと自分を抑えている。過去を思い出せず、藤堂をあるがままに受け入れられない佳人もとても切ないんですが、実は藤堂の方もかなり読んでて辛いです。
藤堂は事件の起きた7年前、冷たい言葉で佳人をつきはなした数日後、佳人の兄から連絡を受け佳人の入院する病院に向かい、起こった出来事を聞いて驚愕します。自分のせいで佳人がレイプされたこと、そして何より酷い言葉で自分が佳人を傷つけてしまったことを知り、今更ながらやっと自分にとって佳人がどんなに大切な存在だったかに気づくんですね。
しかし佳人をレイプした犯人をつきとめる傍ら、病院を何度も見舞う大司を目覚めた佳人が初めて見た日、佳人は錯乱し怯え、自分のことを「知らない人」と呼びます。それからも病院に通う大司でしたが、何があったのか、大司が佳人にどういう態度をとったのかを知った佳人の兄から、大司は「二度と来るな」と言われてしまいます。
それ以来、大司にあったのは贖罪の日々でした。
佳人を遠くで見守り続け、病状の回復しない佳人を見かねた兄からやっと会うことを許される7年後まで、そして再び出会ってからも、佳人が本当に許してくれるまで、大司もずっと耐える日々を送ってきたのです。
「至福の庭」では、佳人が過去の出来事を思い出し一応二人の心は再び寄り添うことになるんですが、書き下ろしの「ツイン・ハート」では、再び恋人となりながらも、どうしても癒えない佳人の傷が、苦しみと試練になって二人に降りかかります。
過去には藤堂のことを「大司」と呼び捨てにしていた佳人は、今は「藤堂さん」としか彼を呼びません。二人が同じ人物だとわかっていても、「大司」から受けた心の傷が消えていないんですね。無意識のうちに過去と呼び分け、「大司」を封印していながら、「大司」から冷たく捨てられた記憶は残り、「藤堂」に捨てられたくないと、レイプの記憶を呼び覚ます恐ろしくて仕方がないsexを受け入れる。そして自分を昔のように呼ばない佳人の気持ちは藤堂にも伝わってしまいます。「自分はまだ許されていない」。藤堂の苦しみも終わらないんです。
佳人が本当に求めていたのは「大司」の助けだったんですね。過去、自分をつきはなした大司の仕打ちはあまりにも辛いものだった。7年を越えて「大司」が助けにきてくれたとき、やっと心の傷を癒すことができます。手を差し伸べてくれる「大司」と、今の優しい「藤堂さん」がやっと繋がったんですね。
佳人の苦しみ、大司の苦しみ、二人の想いを考えると7年は辛くて長い。
どっちに感情移入しても切なくて辛くて苦しいお話でした。何度も目の奥がジワッとしてしまいました。
でも心に残るお話だったですね~。複雑な心理をきちんと書かれていて、違和感なく受け入れられました。
すごく良かった。
六青さんは他に「騎士と誓いの花」を購入したものの積まれたままになっているんですが、これもいいみたいですよね。結構厚みがある上に二段組なので読むのを後回しにしておりますが、そのうち挑戦したいと思います。
藤堂大司(とうどうたいし・26歳)×鈴木佳人(よしと・26歳)
「至福の庭」雑誌掲載
「ツイン・ハート」書き下ろし の二編収録されています。
佳人は対人恐怖症(特に男性的な男)と外出恐怖症を患っていて、自宅で兄の仕事を手伝いながら暮らしています。
そんなある日、兄のカウンセリングを受けにきた藤堂大司が佳人の世話する庭に紛れ込み、佳人はその男性的な要望に恐れを抱きながらもひと目で惹き付けられます。
このお話は再会もので、実は藤堂と佳人は過去に繋がりがあります。
佳人が「恐怖症」を患うキッカケに藤堂は深く関係しています。
佳人と藤堂は中学で始めて出会い、スポーツも勉強もでき人望も責任感もありリーダー的な存在だった藤堂と、控えめで優しく目立たなかった佳人は、あるきっかけからまるで親友のように一緒に過ごしてきました。佳人の藤堂への憧れはいつしか恋心へと変わり、思い切って告白した想いは藤堂に受け入れられます。
そして二人は恋人同士となりますが、大学生になり都会へと出た藤堂は、外見や言動は派手に変わり、佳人を疎ましく見るようになります。都会にいながら相変わらず地味な佳人を藤堂は軽んじ、冷たく突き放したり、時には手のひらを返したように優しくしたりして、まるでオモチャのように扱います。
そんなある日、あるグループから藤堂が恨まれる出来事が起きるのですが、その仕返しが佳人に向けられてしまいます。佳人は数人の男たちに囲まれ、藤堂に出した助けを求めるメールも無視されて、とうとうレイプされそれをビデオに撮られてしまうのです。ボロボロになり、必死の思いで藤堂のマンションにたどり着いた佳人ですが、藤堂は不在。しかしキズだらけの身体を蹲らせて帰りを待っていた佳人を見た藤堂の顔にはあからさまに迷惑な色が浮かび、そして藤堂は佳人に言い放ちます。
「お前には飽きた。だから別れる」
その後、その場を逃げ出し彷徨った佳人は、迷い込んだ渓谷から滑落し大怪我を追います。そして病院で目覚めたとき、あまりに辛い出来事をから自分をを守るように、事件と「藤堂大司」の存在を心の奥に封印してしまったのでした。
「対人恐怖症」の佳人が、一番苦手とする男っぽい男である藤堂にひと目で惹かれてしまうのには、やはり心の奥にある藤堂を求める気持ちを感じます。でもそれはとりあえずどうでもよくて(笑)、藤堂に惹かれながらもどうしても心から消えない恐れ、その苦しさが伝わってきます。佳人は「藤堂」と封印してしまった「藤堂大司」を結び付けられずに再び「藤堂」に恋をしています。しかし、同時に怖さをも感じている。封印された過去の出来事が自覚のないままに今も心に影を落し、藤堂に惹かれる一方で、頑なに拒む気持ちも抑えられないんですね。
再び佳人の目の前に現われた大司は、過去の振る舞いは嘘のように紳士的で優しく穏やかで忍耐強く佳人を見守っています。佳人が自分を怖がるたび、真摯に接しようと自分を抑えている。過去を思い出せず、藤堂をあるがままに受け入れられない佳人もとても切ないんですが、実は藤堂の方もかなり読んでて辛いです。
藤堂は事件の起きた7年前、冷たい言葉で佳人をつきはなした数日後、佳人の兄から連絡を受け佳人の入院する病院に向かい、起こった出来事を聞いて驚愕します。自分のせいで佳人がレイプされたこと、そして何より酷い言葉で自分が佳人を傷つけてしまったことを知り、今更ながらやっと自分にとって佳人がどんなに大切な存在だったかに気づくんですね。
しかし佳人をレイプした犯人をつきとめる傍ら、病院を何度も見舞う大司を目覚めた佳人が初めて見た日、佳人は錯乱し怯え、自分のことを「知らない人」と呼びます。それからも病院に通う大司でしたが、何があったのか、大司が佳人にどういう態度をとったのかを知った佳人の兄から、大司は「二度と来るな」と言われてしまいます。
それ以来、大司にあったのは贖罪の日々でした。
佳人を遠くで見守り続け、病状の回復しない佳人を見かねた兄からやっと会うことを許される7年後まで、そして再び出会ってからも、佳人が本当に許してくれるまで、大司もずっと耐える日々を送ってきたのです。
「至福の庭」では、佳人が過去の出来事を思い出し一応二人の心は再び寄り添うことになるんですが、書き下ろしの「ツイン・ハート」では、再び恋人となりながらも、どうしても癒えない佳人の傷が、苦しみと試練になって二人に降りかかります。
過去には藤堂のことを「大司」と呼び捨てにしていた佳人は、今は「藤堂さん」としか彼を呼びません。二人が同じ人物だとわかっていても、「大司」から受けた心の傷が消えていないんですね。無意識のうちに過去と呼び分け、「大司」を封印していながら、「大司」から冷たく捨てられた記憶は残り、「藤堂」に捨てられたくないと、レイプの記憶を呼び覚ます恐ろしくて仕方がないsexを受け入れる。そして自分を昔のように呼ばない佳人の気持ちは藤堂にも伝わってしまいます。「自分はまだ許されていない」。藤堂の苦しみも終わらないんです。
佳人が本当に求めていたのは「大司」の助けだったんですね。過去、自分をつきはなした大司の仕打ちはあまりにも辛いものだった。7年を越えて「大司」が助けにきてくれたとき、やっと心の傷を癒すことができます。手を差し伸べてくれる「大司」と、今の優しい「藤堂さん」がやっと繋がったんですね。
佳人の苦しみ、大司の苦しみ、二人の想いを考えると7年は辛くて長い。
どっちに感情移入しても切なくて辛くて苦しいお話でした。何度も目の奥がジワッとしてしまいました。
でも心に残るお話だったですね~。複雑な心理をきちんと書かれていて、違和感なく受け入れられました。
すごく良かった。
六青さんは他に「騎士と誓いの花」を購入したものの積まれたままになっているんですが、これもいいみたいですよね。結構厚みがある上に二段組なので読むのを後回しにしておりますが、そのうち挑戦したいと思います。
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