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吐息まで罪の色
柊平 ハルモ著
プランタン出版 (2005.12)
通常24時間以内に発送します。
イラスト/笹生コーイチ(プラチナ文庫)


男娼の海は突然経済ヤクザの章博の愛人になるよう命じられる。海が彼が探し続けている行方不明の恋人・陽海にそっくりなのだという。
つらい行為しか知らなかった海に与えられる、甘い愛撫。一途に恋人を求める章博の熱に揺さぶられながら海は思う。身代わりでもいい。この温もりに包まれるのなら。いっそ、自分が陽海だったら良かったのに、と…。
全てを失っても、この想いだけ残ればいい―狂おしいまでに求めるただひとつの愛。
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結城章博(ゆうきあきひろ)×松崎陽海(まつざきはるみ)

章博の年齢は20代後半くらい。陽海は16歳から18歳になるまで。

記憶喪失モノです。
記憶喪失といってもただ記憶が欠けているのではなく、それまでの自分を忘れ別人となってしまっています。

2年前恋人同士だった章博と陽海ですが、それを知った陽海の家の大反対に合い、陽海は家出をして章博のマンションに身を寄せていました。ところが陽海の両親によって章博が未成年者略取及び誘拐の罪を被せられ警察に連行されてしまいます。
陽海は家に連れ戻されてしまいますが、両親の目を盗み部屋の窓から脱出。しかし、その後章博の容疑は取り下げられたものの、陽海は行方不明になってしまいました。
そして2年後、「花園海(はなぞのうみ)」という男娼の青年が陽海を探し続けていた章博の前に現れます。顔はもちろん黒子の位置さえも陽海と全く同じのその青年は章博の問いに、自分は22歳で、松崎陽海などという人間は全く知らないと答えます。

海が陽海であるのは、初めからわかるように書かれています。章博と離れ離れにされたあと、何かがあって晴海は記憶を失くし、自分を「花園海」と名乗っているんだろうと。
章博は陽海の行方がわからなくなったあと陽海を探すために仕事も止め、あてもなく訪ね歩いて疲れ切っているところをヤクザの小城(こしろ)の目に止まり、小城の持つ組織力を使い晴海を探し出すために、小城のために働くという条件をのみます。ヤクザと関わることで家族に迷惑がかからないようにと章博は家も捨ててしまう。
そして何もかも失くした章博は小城のために金を生み出しながら陽海を探し続けていたのですが、捜索をしていた小城の網にかかったのが「花園海」でした。

どこからどう見ても「恋人」としか思えない海は、姿かたちはそっくりでも、育ちのいいはにかみやの少年だった陽海とは違い、言葉も粗雑で、性に関する態度も正反対に違っています。DNA鑑定を頼むもののそうすぐには結果は出ないため、待つしかありません。一緒に暮らし自分の傍においてどこかに陽海だという決め手がないものかと縋るように海を見つめる章博ですが、それを言葉で否定されるたび、そして陽海では在りえない反応を目にするたびに気落ちます。
それでも望みを捨てられない、別人だとわかるまでは、信じたいという章博の陽海への想いが、半ば狂気まで伴った執着として切なく語られています。普通のサラリーマンだった男が仕事も家も失くし闇の世界に落ちてまで恋人を追い求める。その姿だけで愛の深さ重さが伝わってきますし、海なのか陽海なのか、揺れる章博の想いや苦しみが伝わってきました。
「海」は自分が「陽海」ではないかと疑われていても、自分は違うと頑なに思っています。しかし、自分を「陽海」と呼び優しく慈しみ、それでも哀しみや苦しさを抑えきれず、狂おしいまでに陽海を求めている章博を見、傍にいるうちに、章博を慰めたいと思うようになります。「陽海」の真似をして章博を喜ばせようとしますが、「陽海」ではない自分は、完全には章博を幸せにすることができない。章博のためなら一生陽海のふりをしてもいい、自分が晴海だったらいいのに…とさえ思うようになります。

どうして陽海が記憶を失くし別人となってしまったのかは、ビリーミリガンを読んだことがある方は、どんなもんだかちょっと想像ができます。陽海は多重人格ではありませんが、どうしても受け入れられない現実や耐えられないほど辛い出来事に遭遇したとき、心がその辛さから自分を守ろうとするというのは、在りえないことではないんですよね。この場合の辛い出来事とは当然章博と引き離されてしまったことであり、心が逃避してしまうほどの苦しみだったことを思えば、陽海の章博への想いの深さが伝わってきます。

陽海を探し出し、そして記憶が戻ってくれさえしたらまた過去の幸せな時間を取り戻せると思っていた章博ですが、陽海の記憶が戻ったあともそう簡単にはいきません。
章博は、陽海の記憶喪失の原因は自分から逃げたかったからではないかと考えてしまいます。陽海は別人でいた2年の間自分が「ウリ」をしてお金を稼いでいたことを知り、汚れてしまった自分へのショックと、そんな自分は章博に愛されないのではないかと不安を感じる。章博が陽海を気づかって身体に触れないでいるのを、陽海は「もう自分には触れたくないのだ」と考えてしまうんですね。
記憶が戻り傍にいるのに微妙な空気が流れ、お互いの心が見えなくなってしまう二人。

「海」の章博への想い、「陽海」の章博への想い、そして章博の「陽海」への想い、「海」への想い、と心理は複雑ですが、どれも丁寧に書かれていて理解しやすく、想いがきちんと伝わってきました。
なぜ「22歳」と言ったのかにも理由があり、なるほどな~と思いました。陽海の章博への想いがそんなところからもわかるんですよね。記憶を失くしていてもその時の強い想いや章博との思い出の片鱗が残っている。
ラストの二人はホントに甘くて、幸せなのが良かったなと思います。
何もかも失くしたけれど、一番大切なものだけが残った・・・という二人の言葉に、月日や想いが滲み出ていました。
なかなか好きなお話でございました。
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